Pzkfw38(t) Ausf.B
38(t)軽戦車 B型

2005.06.14  制作開始
手を付け始めたのは4月初旬であったが、先行作の制作と諸用により遅々として進まず、この時期になってようやくアップ用のページを作成した。
素の38(t)戦車制作は初であるが、フジミ製プラガは38(t)偵察戦車制作時に使用した為、大凡の勝手は分かっている。ランナー1枚で全パーツが収まるフジミ製II号戦車と比較すれば点数が多く、装備品が若干付属するあたりは初期のフジミ製キットとしては気が利いていると言えなくもない。
車体は箱組み構造でパーツの合いはさほど悪くない為、比較的簡単に組み上がる。
キットでは車体上部の無線手ハッチは完全に省略されており、箱組のためか車体右部の面取りが行われていない。また、防護板も大雑把な作りである為、切り飛ばしてプラ材にて作り直している。
最も組み難い砲塔部分。
素組み状態ではパーツの合いが悪く、リベットを切り飛ばさないように補正する必要がある。
主砲の砲身はAttack製1/72 38(t)用のアフターパーツであるアルミ挽き砲身を使用。
砲身のスケール無視は毎度のことではあるが、これをやるとやらないでは出来映えが大きく左右される。
主砲上部の突起部はWAVE製の丸リベットを使用し、オーバースケールの余剰分を誤魔化す為に主砲基部をプラ材にて整形し直した。
足回りに手を入れるほどの気合いが無い為、この段階で下地塗装まで終っていたりする。
サスペンションを車体に固定する前にサスペンションと転輪を組立てた方が組立て順序的には楽であるため、フジミ製38(t)系車体はいつもこの様な手順で制作している。
ハッチとキューポラは面取りが甘いためヤスリを当ててエッジを立て、キューポラは開口した。
使用する予定の装備品類。
予備転輪はキット付属の物であるが、装備品類はMarsの1/72 キャスト製とAttack社製用のアクセサリパックから、燃料タンクはSHQミニチュア製のパーツを使用。

2005.06.20  排気管制作
金属素材を使用した排気管とマフラーの作成。
使用する材料は真鍮パイプと真鍮板で、これらをハンダで固定していく。写真はキットパーツの寸法に合わせて材料を切り出した状態。
基本構造は太めの真鍮パイプをマフラー部として両端は真鍮板にて塞ぐ。次に細めい真鍮パイプに曲げ加工を行ない、排気管とする。マフラー部に開口して排気管を通し、車体に取付て完成となる。
マフラー部の両端を真鍮板にて塞ぐ加工。
ハンダ付けをする際の部品の保持には写真の様な木製のハサミを常用している。木製なのでハンダ付けの熱で焦げてしまうが、保持力が変ることは無いため重宝している。
片面を塞いだ状態。
真鍮パイプを保持した木製のハサミをミニ万力で押さえ、作業の行ないやすい位置で固定する。
ハンダ付けを行なう部位にフラックスを塗布して酸化被膜を除去した後、ピンセットで保持した真鍮板を固定部に合わせ、ハンダを流し込むことで固定する。
真鍮パイプの両端を真鍮板にて塞いだ状態。
ハンダ付けの際はパーツ保持のための余剰部分を多めに取ると作業性が良くなる。金属機具で保持した場合に保持部が小さいとパーツ諸共固定されてしまうため、要注意である。また、酸化被膜除去に使用するフラックスが真鍮メッキなどの表面処理がされていない機具に付着すると錆付いてしまう。このためパーツの保持にはメッキされたピンセット等を使用する必要がある。
余剰部をニッパで切除し、ヤスリかけをした状態。
金属切断用ニッパであれば0.5〜0.15mm程度の真鍮板は簡単に切断できるため、余剰部の切除には最適である。
余剰部の切除後はダイヤモンドヤスリである程度形に沿うまで削り、大凡の形になったあとは紙ヤスリ等で表面を整える。
排気管は径の小さい真鍮パイプに曲げ加工を行なって作成する。
真鍮パイプは普通に曲げてしまうと中空が潰れてしまうため、写真の様な切り込みを入れ、中空が潰れないように曲げてゆく。
切れ込みを入れるにはナイフ類寄りもヤスリが適しており、制作時には目立てヤスリを常用している。切れ込みの入れ方でパイプを曲げられる角度が決まる為、細いパイプの場合は1ヶ所の切れこみでは十分な角度が取れない場合がある。その様な時には数ヶ所に小さな切れ込みを入れ、個々の切れ込みで付けられる角度の総和として大きな角度を曲げることとなる。
必要な角度を取れるだけ切り込みを入れた後、プライヤーやピンセットを使い切り込みに沿ってパイプを曲げる。
細いパイプを曲げる場合は切れ込みを入れただけで半切断状態となっているため、金属疲労等で簡単に折れてしまう。このため、曲げた箇所にフラックスを塗布してハンダを流し込む。ハンダを使うことで切り込みの隙間埋めも可能であるため、切れ込みが深過ぎた場合の補正も可能である。
ハンダを流したあとはヤスリで表面を整えると、写真の状態となる。
切り出したパーツを組立てた状態。
マフラーは排気管を取付るためにピンバイスで開口し、排気管をハンダで止めている。また、車体との接合時の支点としてマフラー側面に真鍮線を通した。
排気管の根本カバーは前述のパイプ曲げの手順にて制作している。
車体に取付た状態。
排気管用とマフラーに取付た真鍮線の3点支持で固定している。
当初、後部ハッチとの干渉を考慮せずに取付てしまったため、固定位置を一度直している。

2005.06.21  機銃制作
ペリスコープの作り直しを行なう。
このキット付属のペリスコープはD型以降で採用された形状をしているため、B型車体の形状に作り直す。
比較的複雑な構造をしている左ペリスコープは真鍮板を使用し、構造が単純な右ペリスコープはプラ材を使用した。
車体前面の右寄りに付く無線手用機銃照準機を真鍮パイプより作成。
倒して収納する形状をしていることから、車体との接合部を可動式とした。
キット付属の機銃は出来がいまいちであるため、金属材にて作り直すこととした。
写真は機銃の銃身部分。0.3mmの真鍮パイプに薄くスライスした0.4mmの真鍮パイプを取り付け、0.1mmの銅線を巻いてハンダで固定した。
銃口は罫書き針を押し当てて広げる加工を行なっている。
機銃の基部は0.3mmの真鍮板を曲げ加工して作成。
切り出した真鍮板を曲げ加工し、ハンダを流し込んで強度を上げたのちにダイヤモンドヤスリで整形している。
曲げ加工時に力を入れ過ぎてしまい、購入したばかりの高価なプライヤーが傷んでしまった・・・
銃身に照準サイトを取り付け、銃架と組合せた状態。
瞬間接着剤で仮止めをした上で、ハンダで固定している。
車体の機銃口を開口して搭載するとこの様になる。
38(t)戦車は砲塔と車体前面の2ヶ所に機銃が搭載されている。砲塔の機銃は他のドイツ軍戦車と異なり、主砲と同軸搭載ではなく独立している。車体前面の機銃は操縦手と無線手のどちらからでも操作可能で、無線手が射撃を行なう場合は専用の照準サイトを立てて使用する構造となっている。

2005.06.24  砲塔制作
車長用キューポラのデティールアップ。
四囲に設置されたペリスコープ部の開口とリベットの再現を中心に作業を行った。
車体前面側に向くぺリスコープは開口に失敗した為、プラ材による補正を行い、この部位のリベットのみ真鍮線を用いてみた。他の箇所のリベットは伸ばしランナーを使用している。
砲塔上部に設置された独特な形状のぺリスコープを作成。
ペリスコープ本体は径が異なる真鍮線を組合せて大まかな形状を作り、ピンバイスと目立てヤスリでモールドを追加した。
車体前面のハッチと機銃照準機を真鍮材で作成。
ハッチはキットパーツの寸法を参考に切り出し、蝶番部をハンダで取り付け、ヤスリで調整を行った。
照準機は前段階で作製したものを取り付けられるように基部を作成し、真鍮線を通して可動式とした。
フェンダー支持架も真鍮材にて作成。
プラ材での制作も検討したが、プラ材の厚さではスケール的に不適当であるため0.1mmの真鍮板から切り出すこととした。細く切り出した真鍮板をL字に加工し、ヤスリで寸法が合うまで削り込むといった作業を経て、写真の状態となる。
実車ではフェンダー支持架はボルト止めされている為、この部位の再現方法を検討中の状態である。
タミヤ エナメル塗料瓶とのツーショット:-)
足回りを取り付けていない為車高が低いが、1/76 軽戦車は概ねこの様な寸法のキットである。

2005.07.02  細部工作
車体側面のロッド・アンテナを作成。
基部は真鍮線と真鍮板を組み合わせて作成し、アンテナには銅線を用いている。金属同士の接着はハンダを使用し、車体との接合は瞬間接着剤にて行った。
フェンダー支持架の追加を行う。
当初はキットに付いていたモールドを参考に支持架を取りつけたが、図面と見比べたときに一対足りないことに気が付き、不足分の追加を行った。
精密さを競っている1/35とは異なり、古いミニスケールキットは不正確な箇所が多くあるのが常ではある。その様な箇所を探し、修正しながら制作することはミニスケールキット制作の醍醐味と言えるかもしれない。
エンジンルーム上部の排気グリルの形状も実車とは大きく異なるため、キットパーツを元に制作途上であった部位を切除して作り直すこととした。
切除と面の調整の過程で、リベットのモールドが落ちてしまったため、真鍮線にてリベット跡を作成することにした。写真は真鍮線の植え込み(?)が完了した段階。
排気グリルはフジミ製 1/76 ヘッツァーのパーツを複製して使用する。
写真は片思いとポリパテにて複製したパーツである。一部気泡が入ってしまったが、この程度の欠落であればどうとでも修復できるレベルである。
車体後部のエンジンルーム上に取りつける車外装備品用のトレイを作成。
真鍮板の簡単な箱組み構造であるが、プラ材を用いるよりも容易であり強度も高いため扱いやすい。
トレイを乗せてみた状態。
戦場写真ではこのタイプのトレイを増設し、燃料タンクや雑具箱を乗せている例が多々見られる。
雑具箱はレジンキャスト製のアフターパーツを準備しているが、全て真鍮材の箱組みで作ることも検討している。

2005.07.06  車外装備品
エンジンルームのリベットモールドの再現。
植え込んだ真鍮線の余剰部分を切り飛ばし、ヤスリで表面を整えると写真の状態になる。基本的に面単位での作業となる為、リベットモールドを作り直す際にはそれなりの勢いがないと辛い作業ではある。
車外装備品の雑具箱は真鍮板にて作成。
簡単な箱組構造で設計してパーツを切り出し、ハンダで組立てている。
車体外縁部に装備されるものであることから、プライヤーを使用してダメージ表現を行なってみた。
工具類はMarsのレジンキャスト製アフターパーツを加工して使用する。
工具固定機具の再現は新しい手法を試してみた。
これまでは工具を車体に接着した後、上から被せるように固定具を取付けていたが、今回は固定具を先に作製し、そこに工具を取付る方法とした
従来の方法では固定具によって工具が車体から浮いて固定されている場合は再現できなかったが、こちらの方法ではそれを表現できると思われる。
固定具は0.1mmの真鍮板を細く切り出し、曲げ加工したものを瞬間接着剤で車体に取付ている。
固定具に工具を取付た状態。
38(t)戦車は狭いフェンダー上に折り重なるように工具が固定される為、工具は三次元的な配置が必要となる。固定具により工具を浮かしたことで、隙間に別の工具を固定するといったことが可能となった。
エンジンルーム上部の装備品。
雑具箱は真鍮板の箱組にて作製し、細く切り出した真鍮板を固定用ベルトに見立ててハンダにて固定した。
燃料タンクはフジミ製 1/76 I号対戦車砲のキットに付属するものを使用した。フジミの1/76 I号系車体に付属する燃料タンクは形状が良好であるため、ほとんど手直しをせずに使用することができる。
装備品を取付た状態。
おおよその工作はこれで完了である。後は細部の調整を行い塗装作業に進むこととなる。

2005.07.19  塗装
塗装に最も向いていない季節ではあるが、まとまった休みが来たので作業を進めた。エアブラシを使用する為、窓をあけて換気をしつつ、除湿でクーラーを動かすと環境的には良い感じである。夕方の以降は窓をあけて作業をすると虫が飛び込んで来る為、換気をしながら作業ができるのは日中のみとなる。

今回は下地剤としてマルチプライマーを使用した。
かなり強力な下地剤で金属・レジン問わずに塗装の食いつきを良くしてくれるそうだが、臭いが酷い。自動車工場の塗装臭に近いものがあり、換気をしてマスクを着けてもかなりキツい臭いに悩まされる。
結果的に塗料の食いつきは大変に良いのだが、今後の使用を躊躇わせる下地剤である。。
サーフェイサーは定番のMr.サーフェイサー 1000を使用した。
基本色はMr.カラーのジャーマングレーを使用した。
ジャーマングレーの単色迷彩は今回が初である為、塗料の選定に関して能書きを書いてみる。
ラッカー(グンゼ)、水性(グンゼ)、アクリル(タミヤ)、エナメル(タミヤ)と各溶剤向けにシャーマングレーとされる色は発売されているが、同じ色とは思えないくらいに色調が違う。色調的にはラッカーが突出して濃いグレーで残りが薄めのグレーといった感じではあるが、どれも明度が異なっている。
そもそも、ドイツ軍が大戦初期(1930年代〜1943年2月)まで基本色として採用していたRAL7021とはどの様な色であったのかは諸説あるわけだが、一般的な説明では「黒に近い青味がかったグレー」とされている。現存するカラー写真
一応、エナメルのブラウンでウォッシングをしてみた。
多色迷彩がある場合はウォッシングで色合いの調整ができるのだが、単色迷彩時にはほとんど意味がないように思える。デカールを張ったのちに行なう方が正解であったかも知れない。
デカールはBISON DECALS製1:72/1:76 対戦車自走砲用に含まれる38(t)戦車 第8戦車師団(ソ連戦)用を使用した。
チェコ併合後、38(t)戦車を大量に配備した機甲師団は第7・第8戦車師団であり、フランス侵攻戦後には残存車両を配備したままソ連戦に投入されている。38(t)戦車 B型の生産時期から推察するとそのほとんどはフランス侵攻戦に投入されていると考えられることから、必然的に第7もしくは第8戦車師団所属車両となると思われる。
使用したデカールは第8戦車師団の師団マーク・砲塔番号・国籍マークで、砲塔番号はデカールセットに含まれる黒抜きの白文字を選択した。戦場写真から推察するに第8師団は砲塔番号を黒抜きの白文字にしているが、第8戦車師団は赤文字を白で縁取りした文字となっている。 なお、砲塔番号の「323」は第8戦車師団 第3中隊 第2小隊 3号車という意味になる。もっとも、あり合わせのデカールを張っただけなので、この砲塔番号の車両が本当にあったかは不明である・・・・
細部の塗りわけを行う。
スコップの絵は隠蔽力の強い水性塗料のホワイトを下地に塗った後、エナメル性のクリアオレンジで塗装した。古典的な手法ではあるが、ニスを塗った木材の表現には最適な方法である。
排気管はパステルの粉末をアクリル溶剤で溶き、塗布している。少々赤味が強いので、後々の修正が必要である。

2005.07.22  履帯取付とウェザリング
履帯の取付を行なう。
キット付属の履帯はゴム製で分厚いものであることから、38(t)偵察戦車を制作した際に使用したAttack社製キットに付属するプラスチック履帯を使用した。以前、Attack社製の38(t)弾薬運搬車のキットが\800で叩き売られていた際に履帯取り用に購入したものを使用した。(叩き売りでもフジミ製38(t)戦車の2倍の価格であったりするが・・・)
Attack社製のプラ履帯はキットごとに固さが違う為、容易に曲げられる物と少し力を加えただけで割れてしまう物とがある。今回は使用した履帯は前者であったため、特に加工を施すことなく機動輪・転輪に合わせて履帯を曲げることができた。
スケールが違うということもあるが、機動輪の突起と履帯の凹部は合わない為、機動輪に加工を施して対応した。
Attack製の履帯は長い履帯が2枚と細かい履帯数枚に別れているが、取付る際には長い履帯の中央に機動輪・誘導輪が来るように調整し、接地面に細かい履帯を使用すると良いようである。
それなりの強度で接着できるため、固定後に履帯のたるみ表現に挑戦してみた。
一通り組み上がった段階でエナメルのダークアースを薄く溶いて塗布した。
塗装時にエナメルのブラウンを流した際、凹部に塗料が残ることが分かった為、薄めのブラウンを流すことで土埃の汚れを表現でき、さらに全体の色調を明るくできるのではないかと期待して行った。
結果として、ほぼ期待通りの効果を得ることができた。
コピックマーカーを使用したウェザリングを行なう。
E18 Copperを適当に乗せてブレンダーでぼかしつつ、全体に色を伸ばした。

2005.07.23  仕上げ
仕上げとしてピグメントを使用したウェザリングを行なう。
アクリル溶剤で溶いたピグメントを車体に乗せ、生乾きの段階で筆でぼかしを加える。ぼかしは完全に乾燥した状態で行なうよりも、生乾きの状態で行なう方が容易である。特に狭い範囲での局所的なぼかしは、完全に乾燥してしまうと筆圧を高めて作業をするため、下地の塗装を剥がしてしまう可能性がある。
このため、狭い範囲にピグメントを塗布し、頃合いをみてぼかしを行なうといった作業を繰り返すこととなる。
装備品として燃料タンクとヘルメットを取付る。
装備品類は車体とは異なる下地色とするため、アクリル塗料のジャーマングレーにフラットブラックを少量混ぜた色を吹き、エナメル塗料のブラウンを薄く溶いて流した。
車体への取付後は車体の汚れ表現と馴染むようにピグメントを少量のせてぼかしている。
一通り汚し塗装作業が完了した状態。
イメージとしては、第8装甲師団としてフランス侵攻戦に参加した古参の38(t)B型がソ連戦に投入され、行軍中といった感じである。