Sd.kfz.10 Demag 1t HalfTrack(50mmPaK38)
50mm対戦車砲搭載 1t半装軌式軽装甲車

2006.06.11  制作開始
レジンキャストキットの下処理として剥離剤の洗浄を終えた状態。
洗浄にはガイアノーツのレジンウォッシュを使用しており、ガラス瓶に入れたレジンウォッシュに三日三晩程漬込んだ後、中性洗剤と水で洗浄を行った。
キットは適度にパーツ割がされており組立てはさほど難しくないと思われるが、成形しきれていない細部のパーツがあるため、これらは自作で対応することになりそうだ。また、大きなパーツには気泡も多数見受けられることから、これらの修正に手間取りそうだ。
キットの砲身は酷く反り返っており、修復は不可能な状態である。
砲架とマズルブレーキはキットを使用し、砲身はアルミ挽きの1/72 75mmPakを改造して使用することとした。
砲身の改造ポイントは、砲身を切り詰めた長さの修正とデティールの追加である。
アルミ挽き砲身には通常のハンダが乗らない為、固定には瞬間接着剤を使用した。
アルミ挽き砲身とキットパーツと組合せた状態。
マズルブレーキ・砲架はキットのパーツを手直しして使用した。防危板のキットパーツは破損が酷かった為、真鍮材から作成した。
防盾はキットパーツを元に気泡埋め・破損箇所の修復を行なった後、防盾の固定ボルト部を開口した。
ドイツ軍が使用した50mm以上の対戦車砲の防盾は2枚の薄い装甲を重ねたスペースドアーマーの様な構造をしている。防盾の突起は2枚の装甲板を固定する為のボルトで、キットのモールドは甘い為、付け直すこととした。
開口した防盾に先端を丸めた真鍮線を埋め込む。
本来は裏面も同様の突起となるのだが、加工が難しいことから露出する表面部のみ突起状に加工している。

加工前の防盾と加工後の防盾の比較。
オーバースケール気味ではあるが、平面の防盾への丁度良いアクセントになったようである。
前輪周りの細部工作。
前輪はイタバネ式の衝撃吸収機構が設けられている。キット付属のパーツがあるが繊細な作りが災いして強度が不足している為、イタバネは細く切り出した真鍮板を重ねて作り直すこととした。
切り出した真鍮板を重ねた状態。
0.1mmの真鍮板を使用したが少々薄過ぎた為、同じ長さに切り出した真鍮板を2枚ずつ重ねて固定した。
微妙な曲面はプライヤーで曲げることで簡単に再現できた。
前輪を構成する部品。
車輪はキットパーツを手直しして使用し、固定部のみ金属材にて作成した。
後部フェンダーと砲弾ラックの固定ベルトは真鍮材に置き換えた。
また車体後方下部の部品は破損していたため、こちらはプラ材にて作り直しを行った。
車体前側面の排気管周辺はモールドが潰れていた為、全面的に修正を加えた。
この部位は前部フェンダー・車体フェンダー・排気管部の三ヶ所に別れており、3点の接合部を彫刻刀で掘り直した上で排気管部のモールドを付け直した。

各パーツを組立てた状態。
おおよその形となったが、細部にはまだ手を入れる必要がある。

2006.10.29  弾薬トレーラー
牽引式弾薬トレーラーの作成。
キットにはレジン製のSd.Ah 32が付属しているが、成形精度が低いことから弾薬ケース部と車輪のみ使用し、他の部位はスクラッチすることとした。
トレーラーのシャーシ部はプラ材の積層で作成。
寸法はキット付属のパーツを元にEverGreenのプラ材を使用して作成した。
弾薬ケースはキット付属パーツを使用。
鋳造が欠損していた部位とシャーシへの取り付け基部はプラ材で作り直し、弾薬収納部はピンバイスで開口した。
弾薬は1/35 真鍮製20mm砲弾の空薬莢を使用してみた。
1/76 50mm砲弾と比較するとオーバースケールなのだが雰囲気は悪くないと思う。
弾薬ケースの蓋はプラ材で作成。
こちらもEverGreenのプラ材を積層した上で取り付け基部を真鍮板で作成した。フタは開閉可能な構造にすることを前提に作成している。
車輪はキット付属パーツを使用。
多少形状に手直をした程度でそのまま使用した。
フェンダー(?)部位の作成。
細く切り出した真鍮板をL字に加工し、切り目を入れて曲げる方法で作成する。
切り目を入れて曲げた後、凹凸を修正するためにハンダを流し込んで固定する。
ヤスリで表面を整え、シャーシに固定する。
テールライト等のパーツを取り付けを行なう。
完成した状態。
弾薬のフタは可動式、弾薬は着脱可能となっている。

2007.01.09  細部工作
車載ライト・工具等の細部工作を行なう。
1トンハーフトラックは前面にはノテックライトとボッシュライトが装備されている。本車もそれに準じた装備をしていると思われることからキットパーツとスクラッチで再現を行なう。
ノテックライトはキットパーツをベースに金属材で足場を作成。
ボッシュライトはWAVEのプラ製アフターパーツより丸リベットとマイナスモールドの丸リベットで丸ノズルを挟む形で基本型を作り、ヤスリで形を整えた。余談ではあるが、ボッシュライトには破損防止用のカバーが付けられていたとされているが、実際にはカバーが付けられていない場合も多々あり、その場合には布製のカバーや中央部分のみ残して塗装を施した場合もあったそうである。
車体両端に突き出る車間表示器は1mm程度の真鍮線をスライスし、0.2mm程度の真鍮線とハンダ付けして作成している。これは最も手軽に作れる方法であるので定番となりつつある。
工具類はARMOのレジンキャスト製アフターパーツを使用した。
工具の固定具は薄く切った真鍮板を適当な寸法に折り曲げ加工して瞬間接着剤で固定している。
車体前面に突き出している牽引用フックは0.3mm程度の真鍮線を曲げ加工した後、プライヤーで潰して扁平に加工して作成した。
主砲の防盾と揺架の固定を行なう。
105mm榴弾砲を作成した際のノウハウを応用し、0.2mm程度の真鍮線で固定用シャフトを作成した。今回は防盾はキットパーツをしようしているため固定は全て瞬間接着剤にて行い、揺架側ははめ込み固定をすることで塗装の際には取り外しが可能な構造となっている。
一通り工作が完了した状態。
主砲はもう少し俯角で固定した方が良かったかとも思うが、今さら修正ができる箇所ではないので今回はこのままで完成とした。
次は塗装であるが迷彩パターンをどうするかもう少し考えてから行なう予定である。

弾薬トレーラーを牽引した状態。
スタイル的には悪くないが、弾薬トレーラーが傾斜気味なのが少し気にはなる。こちらも手直しをするとなるとシャーシから手を入れる必要がありそうなので、コレで完成とする。

2007.04.05  塗装
ようやく塗装作業にこぎつけることができた。
エアブラシを使用した塗装作業は半年以上していなかった為、まずはエアブラシの手入れから始めることとなった。(この時点で一日仕事になることが確定・・・)
塗装の前段階として取り外しが可能なパーツは全て外した状態とした。この段階で如何に塗装作業を考慮して組立てて来たかが問われることとなる。
塗料を定着させる下地剤にはマルチプライマーを使用する。
当サイトにて制作するキットはベースはプラ・レジン・メタルとなるが、追加工作には金属材を中心に多数の材料を使用する為、多目的の定着用下地剤は必須となる。
マルチプライマーはこの用途に十分答えられる下地剤であり、これをしっかりと塗布することで塗装の仕上げ段階での塗料の剥がれを防止することが可能となる。
マルチプライマーの塗装は希薄せずにエアブラシから吹く形となる。
全体に十分吹きつけ、特にウェザリングを行なう箇所にはしっかりと吹いておくことで、後々の作業段階で塗料の剥げを防ぐことができる。
塗料の剥げを気にせずにウェザリングが可能であるということはかなり重要な要素であり、塗料の剥げによる作業の手戻り等の発生も抑えられる。
サーフェイサーはMr.カラーの1200番を希薄して使用する。
数種類の材料にて制作することでパーツの原色が複数色となることから、基本塗装の明暗に影響を与える可能性がある。これを防ぐ為にサーフェイサーを吹いて色調を整えると同時に、細かいキズの隠蔽等も行なう。
サーフェイサーも各パーツごとに入念に塗装を行なう。
厚く吹き過ぎると細かいモールドが埋もれてしまう為、均一な厚さで確実にパーツの地色を隠蔽する様に吹いていく。
影となる部分には意図的に濃い下地色を吹いておく。
基本色への陰影効果と同時に、奥まった部位の下地色としての意味合いもあるため、奥まった箇所には十分吹いておくと効果的である。
基本色はMr.カラーのジャーマングレーをそのまま吹く。
ジャーマングレーの単色迷彩への考察は38(t)やクルップ・プロッツェの制作段階で行なっている為、今回も全く同じアプローチを行なう予定である。
基本色の塗装後、細部の塗り分けを行なう。
車体後部の幌は本体色との違いを出したかった為、アクリル塗料のジャーマングレーを筆塗りしてみた。
車体両側面の車間表示の塗り分けを行なう。
下地色が濃い色である為、下地隠蔽力の強いシタデルカラーを使用した筆塗りを行なうこととなる。
車体フェンダーの両脇に白くラインを引くこととなるが、これらを均質に行なう為のマスキングをおこなった。
車体の色調調整の為に油彩にてウォッシングを行った。
バートンアンバー薄めに溶いて全体に塗布している。
塗装段階ではエアブラシを使用する段階とウォッシングの段階が最も埃の影響を受けやすい。
このため、塗装後は速やかに写真のようなアクリルケースに車体をしまうようにしている。

2007.06.17 仕上げ
基本色を塗装した状態から迷彩とウェザリングを行い仕上げ処理を行った。
今回の塗装のコンセプトはドイツ軍が1943年2月に塗装規定を改定する以前に東部戦線にて存在が確認されているブラウン系の迷彩が施された車両である。
これは基本色であるダークグレーの上に正式化されていないブラウン系の塗装を施した現地塗装車両となる。車体自体も正式化されていない現地改修の対戦車車両であるため、この様な塗装であっても考察上荒唐無稽というわけではないであろう。
車体ナンバー陸軍所属の車両とした。
基本的な塗り分けが完了した段階で油彩により迷彩を施す。
多少濃く溶いたローアンバーを数回に分けて重ね塗りを行い、下地色を残しつつ迷彩色を乗せる。
迷彩は車体正面に面した部分にのみ行った。
この迷彩方法は攻撃面が限られている自走砲などは敵と対する面が決まっていることから実車写真などでも見られる迷彩方法である。
迷彩塗装後に塗料の剥げや錆の塗装を行なう。
塗料の剥げはエナメル塗料と細筆を使用し、凸部を中心に塗料を乗せている。
剥げ表現の上に錆の表現を重ねる。
こちらはラッカー塗料とコピックマーカーを使用しており、剥げ塗装との整合性にはラッカー塗料の上塗りを行い、他の箇所はコピックマーカーにてアルコール塗料を乗せてぼかしをかけている。
後部フェンダー上は塗装の剥げが酷いと想定し、迷彩を覆う程度の塗料を乗せた。
これは後程行なうパステルでのウェザリングの下地を想定した塗装となる。
牽引式弾薬トレーラーの迷彩は車体より薄目に仕上げた。
油彩の希薄度合の調整と塗り重ね回数次第で同じ塗料を同じ下地上に乗せてもこの程度の違いを出すことが可能である。
主砲の煤汚れはコピックマーカーを使用した。
コピックは素塗り状態ではツヤのある色となるが、ブレンダーを使用してぼかすことでマットに仕上げることができる。
弾薬トレーラーも車体と同様のウェザリングを施す。
当然の事ではあるが弾薬収納部には迷彩は施さない。
砲弾は市販アフターパーツの1/35 20mm砲の弾薬となるが、こちらは特に手を加えずにそのまま使用している。
足回りにはパステルを使用した泥汚れの表現を行なう。
使用したパステルはMIG製 RussianEarth、MIG製 EuropeDust、CMK製 LightRust、CMK製 DarkRustの混合で、ロシアの大地に合わせた濃いめの土色とした。
パステルは汚れ方の違いに合わせて刷毛で払う部位とアクリル溶剤で軽く洗浄する部位を設けた。