Sd.kfz 121 Panzerbeobachtungwagen
II号装甲観測車

2004.07.14  キット内容確認
II号戦車のパーツは写真で全てである。
このキットはハッチ類・装備品は別パーツとなり、内装のパーツも含まれている。また転輪の成形状態は良好で、足回りに手を入れる必要性はなさそうである。

2004.07.15  考察
制作に入る前に、本車の写真を元にベースとなる車体を推察する。
写真から足回りと車体前面のハッチの形状でC型(改修型)かF型のどちらかということが分かる。問題はC型かF型かという事になるのだが、この写真では逆光で影になっている為、細部の確認が不可能である。
写真から読み取れる事は以下となる。

1. F型特有の車体前面にある円形点検用ハッチがない
2. F型特有の車体前面にある牽引用ワイヤー取付器具がない
3. F型から標準装備されたノテックライトがある
4. C型と同様に正面装甲右面に傾斜があると思われる

上記1.2.及び4.の特徴からこの車両はC型をベースに製作され、ノテックライトを増設したものではないかと考えられる。

2004.07.18  C型への改修作業
実車写真からの考察から、C型を改修した装甲観測車という前提になったため、F型の車体をC型に改造する。
キットの押し出しピン痕と不用な取付穴類の処理は瞬間接着パテ アルテコSSP-HGにて塞いでいる。
砲塔のアップ。
C型とF型での砲塔の違いは防楯の視察クラッペの形状・正面装甲・主砲の3点である。
防楯の視察クラッペは突起部を削り落として成形しなおし、正面装甲はキットパーツをある程度削った上で増加装甲部を真鍮板で作成した。
主砲はC型は20mm 30式戦車砲(KwK.30)であるのに対しF型は20mm 38式戦車砲(KwK.38)である。実のところ大した差はないのだが、キットのパーツは使わず金属パーツに置き換えることとした。使用したのは20mm 38式対空砲を真鍮パイプを用いて改造した物である。
副砲はMG34であるが、こちらも真鍮パイプを用いて作成している。
車体の改造。
C型に合わせて車体全部を切り落とし、プラ材にて作り直している。
プラ材の組合せで形を出したあと、背面からアルテコSSP-HGにて裏打ちをした。
新造した前面装甲のデティールアップ。
クラッペ類はプラ材にて作成し、増加装甲を固定するリベットは開口して真鍮線を通す定番の方法で作成している。
車体後部に位置するエンジンルームへの吸気グリルを作成。
開口した後にプラ材にて仕切りを作り、側面のガードは0.2mmの燐銅線を瞬間接着剤で固定している。

2004.07.20  マフラー
真鍮パイプを組合せたマフラー。
径の異なる3種類の真鍮パイプを曲げ加工して作成している。
なお、初期の寸法が誤っていた為、補正として2ヶ所につぎ足しを行なっている。
マフラーを覆うパンチングプレートはファインモールドのメッシュを使用した。
0.3mm径の円形パターンの金属メッシュで、多少固めではあるが曲げ加工も可能である。
切り出して曲げ加工を行った状態。
接着はハンダを用いており、接合部はヤスリがけを行った。
マフラーと組合せた状態。
パンチングプレートにマフラーをくぐらせた上で、背面から真鍮線を貫通させて固定する方式を用いた。
マフラーのみを取付た状態。
排気管基部とマフラー背面に取付た真鍮線の2点で車体と固定している。
パンチングプレートも含めた状態。
金属素材ならではの質感と精度はプラ材にはない魅力であり、加工の苦労はあるがこの様な部位の作成は欠かせない材料である。

2004.07.22  細部工作
フェンダー上部の工作。
全てプラ材を用いた工作を中心に、工具箱設置基部の作成とリベット跡の再現等を行なっている。
後部フェンダーを作成。
キットの状態では形状に不満があった為、真鍮板で新造した。また、車体後部もC型に合わせて手を入れている。
転輪をC型に合わせて改造。
写真の左がキットのパーツ、右が改造後のパーツである。車輪関連は形状や車体との接合部と接合強度が重要である為、新造するよりもキットのパーツをベースに改造する方が容易である。

2004.07.25  フレームアンテナ
II号装甲観測車の特徴的な部位であるフレームアンテナを作成。
材料には真鍮線と真鍮パイプを使い、接合にハンダを用いている。作成はアンテナ部・アンテナ支柱・アンテナ基部の三点に分けて行っている。
フレームアンテナ部の作業途上図。
曲げ加工を施した真鍮線をミニ万力に張りつけてハンダで接合している。真鍮線同士を接合する場合は接合面積を増やす為に接合面を傾斜させると接合が容易であるのみでなく、接合後の強度の点からも有利である。接合後は余分なハンダを落とすためヤスリがけを行うため、接合強度は重要な点である。
完成したフレームアンテナ部。
アンテナ基部と接合をするための支柱部は真鍮パイプと真鍮線を組みあわせたものである。支柱部はアンテナ部とは接合せず、位置調整を可能にしてある。
車体側のアンテナ基部。
0.8mmで開口した箇所に真鍮パイプを止め、隙間にはアルテコSSP-HGを流している。
フレームアンテナを取付た状態。
アンテナ部に若干のゆがみがあり、これは今後補正する必要がある。
取付後の側面図。
アンテナの高さ調整と支柱部の位置調整が必要であるが、形状的にはおおむね満足である。

2004.08.02  細部工作
各種装備品の取付を行なう。
キット付属のものを使用した箇所と、Marsの1/72 キャスト製工具類を使用している。
車体数ヶ所にある吊上げ用フックはキットのモールドを切除してプラ材にて作り起こした。
本車の特徴である車体後部の雑具箱とおぼしきケースを乗せた状態。ケースはプラ材の箱組みにて制作した。

2004.08.07  塗装
塗装と迷彩を行なう。II号装甲観測車は資料が乏しいが洋書の塗装サンプルが入手できた為、これに従った塗装を行った。
1943年2月よりドイツ軍の車両は塗装色が改められ、基本色がダークイエロー、迷彩にオリーブグリーンとレッドブラウンが用いられる様になった。しかしながら、これは新規に制作された車両に適用された話であり、それ以前に前線配備された車両は配布された新基本色に塗り替えられるか、ダークグレーの上に新色を用いた迷彩が行われていたそうである。
本車の中心資料である写真は1943年秋に撮影されたものであり、写真の濃淡から何らかの迷彩が施されていたと思われる。モノクロ写真からではどの色が使用されたかは定かではないが、装甲観測車に改装されたII号戦車C型が生産された時期は1938〜40年であるため基本色はダークグレーであり、その上にそれよりも薄い色調で迷彩が施されたと考えられる。
ダークイエローの縞状迷彩。
ダークグレーの上にダークイエローを吹く迷彩は作例でも見たことがない為、本当にこれで良いのかは疑問ではあるが、参考にした洋書の塗装サンプルに沿ったパターンを吹いている。
基本色となるダークグレーを吹いた状態。
写真は妙に暗くなってしまってわかり辛いが、使用した色はSGIクレオスのMr.カラーよりジャーマングレー・ブラックグレー・ニュートラルグレーの混合色である。
Mr.カラーのジャーマングレーは黒に近過ぎるため、迷彩に使用するダークイエローとの兼ね合いを考えて、混合色を使用した。
サーフェイサーを吹いた状態。
この段階では砲塔・車体・機動輪を取り外して個別に塗装している。
塗装前の工作が完了した状態。
前回の更新からの間に消火器と車体前部のフックを追加している。

2004.08.09  ウェザリング
最終工程になるウォッシングとウェザリング。
履帯の取付とマーキングを行った上で油彩によるウォッシングを行なった。
デカールはBISON DECALS製1:72/1:76 Tiger用に含まれる軽戦車用のものを使用。オーバーコートとしてつや消しのスーパークリアを吹いた後、ぺトロールで溶いたローアンバーにてウォッシングを行った。
コピックマーカーを使用したウェザリング。
ブラウン系はE18 Copper、ブラック系はW10 Warm Grayを使用している。
墨入れの要領で角部にマーカーを流した後、ブレンダーにて色を伸ばして下地に滲ませている。
装備品類の塗り分けは水性のシタデルカラーを用いた。
木部は Desert Yellowを下地として塗布し、コピックマーカーのE19 RedwoodとE33 Sandを乗せている。
ウェザリングの一環としてチッピングも行なう。
使用した塗料はウェザリングカラーセットのラスト(錆)とタミヤアクリルカラーのX-10 ガンメタルを使用。チッピングは今回が初なので、まだまだ研究の余地がある技法である。
後部からの写真。
完成まではもう少し手を加える必要があるが、そろそろ終りが見えてきたようである。
今回使用したコピックマーカー。
上から順に色名は以下となる。

W10 Warm Gray(No.10)
W3 Warm Gray(No.3)
E33 Sand
E19 Redwood
E18 Copper
0 ColorlessBlender

2004.08.10  仕上げ

仕上げとしてパステルを用いたウェザリングとオーバーコートを行った。
足回りを中心にアクリル溶剤にて溶いたパステルを用い、マッドを吹いて色調を整えた後に仕上げとしてつや消しのスーパークリアを吹いた。最後にコピックマーカーにて目立つ場所を押さえた色調に落して完成とした。
今回制作したII号戦車C型は1938〜40年の間に製造された車体を改装して1943年に使用しているという前提で行なったため、戦火を潜り抜けてきた車体としてこれまで以上にウェザリングを行なった。結果からするとやり過ぎてしまった気がするが、これまであまり目を向けて来なかったウェザリングに関して考えさせられる点が多々あったので今後の制作への足がかりともなりそうである。

ベースに用いたキットの出来が想像以上に良かったため、制作期間1ヶ月足らずで完成となった。古いキットではあるが全体バランス・細部の再現・組立てやすさなど数々の美点を持っているように思われる。入手性も良い為、II号戦車のバリエーションや派生車両制作の際の素体としては申し分ない出来のキットである。