Sd.kfz.140/1 Aufklarungspanzer 38(t) 20mm KwK38
38(t)偵察戦車 20mm KwK38装備型

2004.08.11  キット内容確認
フジミの38t戦車のパーツ構成。
無難な箱組型の構成であり、装備品類と戦車兵が付属している。写真には無いが履帯はかなり肉厚なゴム製で、正直なところ見栄えが悪いため、今回は使用しない予定である。
車体のリベット跡が丁寧に再現されており、この点はあえて手を入れなくても十分な精度があると思われる。古いキットにも関らず、細部のモールドが奇麗に抜けているところは感心すべきであろう。
Attackの38t偵察戦車のパーツ構成。
緑色のパーツは他の38t系キットとの流用部分、黒色のパーツが偵察戦車用のパーツである。またオープントップ砲塔上部に付く金網製の対手榴弾避けはエッチングパーツが付属している。
履帯はプラスチック製で厚みも含めて申し分のない出来である。

2004.08.14  車体上部増加部
キットの素組み状態。
パーツの合いはやや悪いが、適度な面割りがされているため組立てはさほど難しくはない。
増加部の下半分を組立てた状態。
Attack製キットの同部位を参考にプラ材を切り出して組みつけている。
プラ材の箱組みの中にアルテコ SSP-HGを流し込み、増加部の上半分も組立てた状態。
リベットの再現には開口して真鍮線を通す方式を用いる為、プラ材の箱組だけでは強度が足りず、内側にパテを流し込むこととした。アルテコ SSP-HGはプラ材を侵食しない上に硬化が早い為、この様な用途には最適な材料と思われる。
車体上部に追加された増加部位の作成。
当初は金属材料による制作も考えたが、複雑な傾斜と面割りからプラ材を用いることとした。
この部位もリベット跡の再現が必要である為、真鍮線を用いたリベット作成を考慮して内部はアルテコ SSP-HGにて埋めている。

2004.08.22  砲塔作成
砲塔の作成。
Attack製キットの寸法を5%程度縮小してパーツを切り出し、ハンダで組み立てる方法を用いた。
砲塔前面は側背面と比較して装甲が厚い為、0.3mmの真鍮板を使用し、側背面は0.1mmの真鍮板の一回の切り出しで作成している。接合部の隙間は低温ハンダにて塞ぎ、ヤスリがけで整えた。
機銃を所定位置に置いた寸法確認。
機銃基部はフジミ製Sd.kfz.222のパーツを流用し、20mm機関砲はII号装甲観測車制作時に余ったJadar-Model製20mm機関砲砲身を使用した。砲身基部は退行部も含めた3段構造と成る為、孔の寸法が異なる真鍮パイプを使用した。

2004.10.18  砲塔
前回の更新から随分間が空いてしまった。この間は砲塔の制作を悩んでいたのだが、簡単な解決方法が見つかったのでようやく制作を再開。
前回更新時に写真を載せた様に真鍮板の箱組みで砲塔を制作していたのだが、採寸元のスケールが1/72であることやエッチングパーツとの合いの悪さがネックとなっており、作り直しかこのまま強行かを悩んでいた。
作り直しの方向で考え、採寸元になりそうなキットを探しに行き付けの模型屋に寄った際に偶然ミリキャスト製 KwK38搭載の6角砲塔パーツを発見。値段を見ずに購入してこちらを使うこととした。元々、ミリキャストは38t偵察戦車のキットも出しており、これはそのキットに含まれているパーツと同等のものであると思われる。
キットは内装とエッチングパーツ込みの写真のような構成である。
エッチングパーツにはスター型アンテナのパーツも含まれており、こちらも流用可能である。


制作していた真鍮板製の砲塔と比較。
奥行きはほぼ同じ寸法であるが、幅は1/76のパーツが一回りほど小さくなっている。真鍮板製は幅が合わずに問題となっていたことから、諸問題はこれで一挙に解決した。今後、このパーツをそのまま使うか採寸して真鍮板にて作り直すかは決めていないが、制作のネックが解消されたことは間違い無い。
幅が詰まった分車体側も手を入れる必要があるが、車体への取付寸法は良好である。

2004.10.20  砲塔加工と車体モールド作成
ミリキャストのキットをベースに砲塔を作り込む。
キャスト製の主砲はやはり出来が良くない為、真鍮パイプとアルミ挽きの1/72用 20mm機関砲砲身を使用して作り直した。この主砲は8/22の写真に写っているものをそのまま使用している。
副砲のMG42機関銃はMMS Modelsの歩兵用アクセサリを使用し、細かい部位はフジミ製 Sd.kfz 222 四輪装甲車の主砲部などから流用している。
本車は車体の装甲にびっしりとリベット跡があるため、それらをどの様に再現するかがポイントではある。
今回は表面に真鍮板を張り、罫書針の押し出しで凸モールドを形成する方法を選んだ。
まずは表面に張りつける真鍮板を切り出す為の型紙作りとして、マスキングテープを用いて各面の寸法を取る。
マスキングテープの型紙が出来たら、0.1mm厚の真鍮板に型紙を張りつけて各面毎に切り出し作業を行なう。
切り出した後に、リベットゲージを使用して均等に凸モールドを形成して写真の様なパーツを制作する。
一度では全ての面を作らず、規準とする面のパーツを作り、本体に張りつけた後に再度採寸して型紙を作り、それを元に次の面を作成・・・という順で制作すると、張りつけた真鍮板同士が奇麗に合うように作ることができる。
各面のパーツを張りつけた状態。
正面装甲はクラッペ等もあることから以降の作業性を優先してプラ材のままとした。

2004.11.01  砲塔作成
更新が滞っていたが、日々少しずつ手を入れている。
排気管とマフラーの形状は通常の38t系車両とは大きく異なる為、真鍮材を使用して自作した。管部は真鍮線と真鍮パイプで作製し、マフラーは真鍮管をベースにしている。固定と隙間埋めはハンダを使用した。
砲塔部に手榴弾避けの基部を作成。
固定式ではなく可動式を目指して真鍮パイプ間に真鍮線を通して取付る方法を試してみたが・・・
手榴弾避けメッシュワイヤー装備の天蓋部。
裏のバーと基部となる真鍮パイプをハンダで固定した。
天蓋の上面。
こちらもバーは固定してしまった。
砲塔に取付た状態。
前面下部が砲塔と合わなかった為、0.2mm厚の真鍮板で1mm程度延長している。
車体と組合せた状態。
車体もフェンダーの固定と正面装甲部のペリスコープ取付を行なっている。こちらはキットパーツの出来が良かった為、そのまま使用している。

2004.12.03  スター型アンテナ
前回の更新より早1ヶ月。制作は遅々として進んでいないが、偶には更新しないと本当に死蔵してしまいそうなので新たに工作した部位のみアップしてみる。
38t偵察戦車は砲塔と車体側面の2ヶ所にアンテナを装備しており、車体側のアンテナは指揮車両や偵察車両によく見られるスター型アンテナである。
砲塔パーツに付属していたスター型アンテナのエッチングパーツと真鍮材を使用して一応それらしく組立ててみた。
アンテナ基部のカバーパーツ。
真鍮板の折り曲げ加工で制作している。車体に取付る為の基部は別パーツで作り、ハンダにて固定。
車体側の取付基部。
アンテナの各パーツには真鍮線で取付る為の穴を設けているため、車体側は取付用真鍮線を埋め込むだけの作業である。

2004.12.10  装備品
車体はフェンダー支持架を中心に手を入れ、装備品を取付た。
フェンダー支持架はキットのモールドを残して加工した部位と新造した部位があるが、共にEverGreen社製の0.25mm厚のプラ材を使用した。
38t系戦車の特徴の一つに備えつけの雑具箱が多い点があるが、偵察戦車仕様もこの特徴を備えている。写真やイラスト資料からするとフル装備時には工具箱x1、雑具箱x3、車外工具数点を確認することができる。
雑具箱は独特の形状をしているため、Attack社のキットパーツを元に削り込みとデティールアップして使用することとした。
工具箱はこれも38t系車両に見られる孔の空いたタイプであるため、悩んだ末にファインモールドのメッシュを張り着ける方式で妥協した。工具箱上のジャッキはMMS Models製のアクセサリパーツを使用した。最後の手持ち在庫であるため複製品を作ることも考えたが、非常に目立つ位置にあることから原形を使うこととした。
車体側のスター型アンテナを取付る。
真鍮線を貫通させる取付法式を前提にアンテナを作製した為、瞬間接着剤で所定位置に固定するのみとなる。
アンテナカバー部もアンテナ同様に取付る。
瞬間接着剤で固定した後、取付基部の余分な真鍮線を切り飛ばすことで強度・外見ともに良好に仕上がった。
砲塔後部に真鍮材を中心に作製したアンテナを取り付た。
金属材をキャストに固定する為、瞬間接着剤だけでは強度が足りず、アルテコ SSP-HGにて基部を固めて補強している。
一通り組み上がった状態。
工作はこれにて終了で、次は塗装となる。

2004.12.12  迷彩
塗装前のパーツ割状況。
基本的には可動部に沿って分割塗装を行なう。写真以外に足回りパーツがあり、こちらは既に組立てと塗装が完了している。
サーフェイサーを吹いた状態。
金属部にメタルプライマーを塗布した後、定番のMr.サーフェイサー 1000を希薄して吹く。制作中にリテイクを繰り返したためか目立つ傷が多数あったのだが、やり直すだけの気力は残っておらず、塗装とウェザリングで誤魔化す方向で妥協した。
影となる部分にレッドブラウン吹く。このあたりの塗装手順は毎回同じである。
38t系車両は入り組んだ箇所があるため、奥まった箇所は念入りに吹いておく。
基本色となるダークイエローの塗装。
使用した塗料は定番のMr.カラー ダークイエローである。色味の調整などは行なわず、希薄した塗料をそのまま使用している。
足回りを取付た状態。
このスケールのキットは足回りで複雑な組立てが必要となることは少ない為、手を入れる予定が無い場合はランナーから切り離す前に基本色を吹いておくと組み立てが容易である。今回は成形色が濃いため下地を塗装せずに基本色を吹き、ゴム部はコピックマーカーにて塗り分けを行なっている。
フジミの38t系車両の足回りはサスペンションと転輪2枚の組合せが2対と起動輪・誘導輪の組合せである。車体への取付はサスペンションと転輪を先に組立てておき、車体への取付時に転輪も含めたサスペンション取付角度を調整すると奇麗に仕上がる。
今回はプラ製の履帯を使用する為この段階で全ての車輪を取付たが、キット付属のゴム製履帯を使用する場合は起動輪を履帯取付時まで接着せずにおく方が良い。
オリーブグリーンによる迷彩。
参考資料やキットの塗装例を元に大戦後期の東部戦線 春〜夏期に使用された迷彩パターンを参考としている。
レッドブラウンによる迷彩。
今回は各色の塗装配分が均等な典型的三色迷彩であるため、オリーブグリーン塗装時に非基本色分全てに色を乗せてしまい、レッドブラウン塗装時にブラウン/グリーンの比率を調整している。
デカールはBISON DECALS製1:72/1:76 Tiger用に含まれる軽戦車用のものを使用。
国籍マーク3箇所と戦術マーク2箇所を張り、つや消しのスーパークリアを吹いている。
コピックマーカーを使用して主砲の塗り分けを行った後、全てのパーツを組みつけた状態。
手榴弾避けの天蓋には迷彩を施していないことから際立って浮いて見えるが、後のウォッシングとウェザリングで馴染ませることとなる。

2004.12.25  仕上げ
更新が滞っていたが、2週間程度かけて仕上げ処理を行った。
仕上げ行程は、エナメル塗料によるウォッシング、コピックマーカー・筆塗り・パステルによるウェザリングとエアブラシによる仕上げである。

途中で作業が滞ったために制作開始から4ヵ月以上かかっての完成とかなりのスローペースでの作業であったが、一応完成にこぎつけられた。
そもそも本車制作での読み違いは、砲塔部がSd.Kfz.222の砲塔とは異なると気付かずに作業に入った点にある。当初の予定ではフジミ製Sd.kfz.222の砲塔を流用してお手軽に組み上げるはずであったのだが、目論見が外れたことでキャスト製パーツが入手できるまで作業が止まることとなった。
図面も採寸用キットも入手出来なかったことが遅延の原因であるが、洋書資料の入手は時の運的なものであることからマイナー車両の制作には今後ともついて回る問題である。
履帯の取付。
今回はAttack社キット付属のプラ履帯を使用した。キットには写真のパーツが2枚入っており、数量的には不足することはなさそうである。このパーツは今回が初の使用となるが、このパーツの為だけに投げ売りされていたAttck社製38t弾薬運搬車のキットを数個確保してあるため、今回の制作では取付方法を模索しながらの作業となる。
履帯を取付た状態。
接着は流し込みタイプのプラ用接着剤を使用している。
履帯パーツは固めで折り曲げが不可能である為、ヤスリで等間隔に折り目を入れてから車輪に合わせて曲げ加工を行なっている。
エナメル塗料を使用したウォッシング。
今回はタミヤエナメル塗料のレッドブラウンを希薄して使用した。ほぼ期待通りの色調に整い、手榴弾避けの天蓋も全体とのバランスが取れつつある。
全体のウォッシングが完了した後、レッドブラウンにブラックを混ぜて影部と凹部に流し込み、軽く墨入れを行った。
また、細部の色調調整にはコピックマーカーを使用している。
筆塗りとコピックマーカーによるウェザリング。
汚れの種類によって使用する塗料を使い分けており、ぼかしが必要な雨垂れや流れ出した錆はコピックマーカーを使用し、塗料の剥げと錆は筆塗りを使用している。
塗料の剥げと錆の表現はまだ研究途上である。
基本は数色の重ね塗りとなり、今回はジャーマングレー(エナメル)・ラスト(ラッカー)・ワームグレー(コピック)を重ね塗りし、仕上げにラストを少量乗せている。
剥げや錆はエッジ部に集中させることで汚れだけでなく輪郭線を浮かび上がらせる効果もあり、目立たない凸部に対して行なうことも効果的である。
塗料の剥げはひっ掻き傷以外にも頻繁に摩擦を受ける部位でも発生する為、今回は車両への搭乗時に触れると思われる場所を中心に塗料を乗せてみた。
排気管は錆の質感を表現する為、下地にブラウンを吹いた上でパステルを使用した。
錆部の再現にパステルを使用する場合は、砕く際の粒子サイズをある程度ばらつかせた方が良いと思われる。
使用したパステルはホルベイン ソフトパステル 844である。
アクリル溶剤で写真程度の濃度に溶いた後、筆にて塗布した。
足回りの泥汚れはピグメントを使用した。
今回は溶剤で溶く方法ではなく、車輪部にアクリル溶剤を塗布してその上にピグメントを乗せる方法を用いた。この使い方はAM誌 Vol.62の付録DVDにて紹介されていた物で、泥汚れ表現には適した方法である。
仕上げとして足回りにマッドを吹いた後、全体につや消しを吹いた。