Sd.kfz.161/2 Panzerkampfwagen lV Ausf.H
IV号中戦車 H型 (1943年4月〜5月生産車)

2008.03.15  細部工作
キットは写真のようなパーツ構成である。
車体は装備品まで含めて一体成形されており、輸入キットにありがちな破損もない。
また、砲塔周辺のシェルツェンの成形状態は良好であるが強度面での不安があり、これらをどの様に取り付けるのかが課題となりそうである。
砲塔上部の破損箇所を修正する。

主砲を砲塔への差し込み方式とするために真鍮線を通した。
主砲同軸の機銃は基部のみ成形されているため、砲身を真鍮パイプで再現。
主砲の取り付け位置を調整。
車体側の機銃は軽の異なる真鍮パイプを組み合わせて作成。
ハッチを真鍮材で作り直す。
きっとのパーツ形状に不満は無いのだが、可動式とすることを考えた場合にはレジンでは強度が不足することから作り直しに踏み切った。
寸法はキットのパーツを参考にしている。
ハッチのヒンジは細く切り出した真鍮板を折り曲げ加工して作成。
ヒンジの取り付け位置を並行にする ため、金属線を使用してい位置決めを行いハ ンダで固定する。
この様な作業の際にはより大きいパーツ(今回であればハッチ側)に真鍮メッキを施し、取り付けるパーツを熱してメッキ状のハンダと接合させる。
可動用の軸を取り付けた状態。
車体側には軸を受け入れる穴を開け、軸を差し込む形でハッチを固定する。
開くとこの様な状態となる。
ハッチパーツの裏面にはロック用の機構が備わっている為、その工作を行なう必要がある。

2008.04.15  シェルツェンステー
前回の更新から1ヶ月が過ぎてし まったが、その間にコツコツと作り溜めた工作 結果を上げてみる。
最大の課題であり見せ場でもあるシェルツェンステーを作成する。
砲塔周辺のシェルツェンステーは片側3辺・計6辺のパーツで構成されている。基本は均一の幅で切り出した真鍮板を曲げ加工する事となるが、シェルツェンと の接合部は強度を確保する為に多少幅広の真鍮板を重ねた二重構造にしている。
シェルツェンとの接合は真鍮線を通す方式を取る。
シェルツェンとの位置合わせの上でステーに開口し、コの字型に加工した真鍮線を通してハンダで固定している。
シェルツェンに固定した状態。
実車ではシェルツェンとシェルツェンステーはボルトで3点止めする方式となるが、このスケールでは制作難易度と強度の面で3点の軸で固定することは難し い。
このため、実際に接合させる部位は2点に止め、残り1点はモールドだけのダミーとすることとした。
全てのステーを取り付けた状態。
あとは砲塔との位置合わせを行ないつつ、ステーの角度調整を行なう。
方途側も真鍮線を使用した接合方法を採用。
キットに元からあるモールドに沿って開口し、瞬間接着剤を塗布した0.2mmの真鍮線を差し込んで固定している。
砲塔との調整を行った状態。
ステー側には砲塔の真鍮線を差し込む為の穴をあけ、一度強引に取り付けた上でステーの角度を調整した。
この段階ではまだステーとシェル ツェンは接着しておらず、写真の様に分解でき る。
砲塔に固定した状態
シェルツェンとステーの接着には高強度瞬間接着剤を使用した。
ステー側に瞬間接着剤を塗布してシェルツェンに固定する。

硬化後には余剰となる真鍮線を切り飛ばし、ヤスリで高さを調整した。
ダミーのモールドも真鍮線にて作成して同様の方法で調整している。
アンテナの基部を作成。
開口後、内径0.1mmの真鍮パイプを差し込み、更にその中に金属線を通す方式で固定する。
車体前面の機銃も真鍮材で作成。
これは径が異なる真鍮パイプを組み合わせて作成している。
戦車長ハッチの作成。
IV号戦車G型までは半円形の両開きのハッチとなるが、H型からは円形の一枚板のハッチに切り替わった。

こちらのハッチのキットパーツは素晴らしい出来なのだが、今回は可動式とする為にあえてスクラッチを行なう。
キット付属パーツの寸法を元に真鍮板に当たりをつけ、これを切り出して使用する。
ニッパで大まかに切り出した状態。
ニッパで更に周辺を切り取り、大まかな円形にする。
あとはひたすらヤスリで形を整え、写真の様な状態にする。
ハッチのヒンジは中空に折り曲げた真鍮板から作成する。
ハッチの厚みを再現する為、若干径が異なる2枚の真鍮板を組み合わせる。
ヒンジの取り付け位置はヤスリで削り取っている。
組立てた状態。
ハンダを多少多めに乗せて接合部の隙間埋めを行い、ヤスリで形を整えている。
キットに取り付けた状態。
取り付け方法は操縦手ハッチと同様にコの字型に加工した金属線を軸として砲塔側にあけた穴に差し込んでいる。
バランスがイマイチなのだが、一応ハッチの可動は可能になった。
キットの一体成形された車外装備品 は素晴らしいできなのだが、唯一成形されて いない牽引ワイヤーを作成する。
真鍮製ワイヤーと真鍮パイプの組み合わせでそれらしく加工してみた。
多めにハンダを乗せることで十分な強度的が得られる為、多少無理な取り回しをしても崩れることはない。
車体平面への取り付け。
ワイヤーを固定するフックは真鍮線で作成し、ワイヤーを巻きつけた。

2008.10.21  車体シェルツェンステー
散々悩んだ結果、車体側のシェル ツェンステーを制作することにした。
幸いにして1/76の図面が掲載されている資料を発見したため、この図面を元に寸法を取りつつ現物合わせで作成するこ ととな る。

ステーの基部は0.1mm厚の真鍮板をL字に曲げ加工を行ない作成する。

作成する部品は非常に細いため真鍮板を切り出してから曲げ加工を行なうことは難しいことから、曲げ加工を行なってから欲しい細さに調整する順番で作業を行 なう。
ある程度以上の精度で真鍮板の曲げ加工を行なう際には写真の様に真鍮の角材と万力で真鍮板を押さえ、真鍮パイプを押し当てて一気に折り曲げる方法を使う。
曲げ加工を行った状態。
同じ精度の部品を複数作る場合は折り曲げなどの作業精度にバラツキが出る工程はまとめて行い、そこから必要数を切り出す方式が望ましい。今回は非常に細長 いパーツであったため残念ながら一度に加工することができず、やむなく左右それぞれを個別に制作した。
折り曲げ加工部分を切り出して欲し い細さまで加工した状態。
両端が下方を向く加工を行った。
シェルツェンとの接合部は左右対称 に付ける必要があるため、二つのパーツは同 時に当りを付けた。
車体側との接合用パーツを付けた状 態。
この段階では当たり程度の精度でしか無く、最終的には車体側に合わせて再加工を行なう必要がある。
シェルツェンを固定する歯となる パーツを作成。

細く切り出した真鍮板をL字に曲げ加工し、片側の両端を落して歯に加工する。
歯を取り付けた状態。

取り付け後、歯の精度を合わせるためヤスリがけを行った。
車体側の工作。

車体側にはシェルツェンと履帯の接触を防ぐための支えとなる部位がフェンダーから突き出す形で設置されている。
こちらは図面を参考にL字加工した真鍮板を瞬間接着剤で固定。
車体上部の工作。

幸いにもキット側にシェルツェンステーを取り付ける部位のモールドがあり、このモールドの上に真鍮線の軸を立てた。
車体にシェルツェンステーを取り付 けた状態。

そもそもはステー支持部が左右で設置位置が異なることに気がついていなかった事が原因でもあるのだが、車体側の軸とステー支持部の取り付けは位置調整にか なり手間取った。
最終的には最前部のステー支持部のみ残して一度取り外し、先頭から順に位置決めをして付けなおしている。

ハンダ付けの真鍮パーツはこの手の組み直しが比較的容易にできるため、失敗覚悟でまずは固定して様子を見ながら調整するのも一つの方法である。
車体全体を組み上げた状態。

工作はここまでで終了とし、塗装に移ることとする。

2009.01.17  基本塗装
下地塗装を行なう。
今回も素材としてレジン・真鍮・プラスチックを使用しているため、下地には定番のマルチプライマーを使用。
下地色の調整にはこれまた定番のMrカラーのサーフェイサーを吹いた。

基本色の塗装段階では車体・砲塔・砲身・砲塔シェルツェン・左右のシェルツェエンステーを分離させたまま、個々に塗装を行なう。
影となる部分へ明度を落したブラウ ンを吹く。
足回りは全てブラウンで塗りつぶすことで、基本色塗装後の車体上部との色調の違いを分けることができる。
履帯にグレーとブラックの混合色を 吹く。
先の影となる部分とは異なる下地色にすることで、最終的な塗り分けの段階で差異を出すことができる。
基本色であるダークイエローを吹い た状態。
今回はMrカラーのダークイエローをそのまま吹いている。
基本色が乾いた後に砲塔のシェル ツェンと車体側面のシェルツェンステーを取り付ける。

車体側の取り付け軸とステーを噛み合わせたあと、瞬間接着剤で固定している。接着剤の硬化後に軸の余剰部分を切除し、切断面にはヤスリを当てている。
完全に固定された後に再び基本色を吹きつけ、軸の切断面や接着剤により剥がれた塗装を補修した。

2009.05.17  迷彩
基本塗装を施してから随分と時間が 過ぎてしまったが、迷彩塗装へと作業を進めた。
大戦後期に施されていた筋状の3色迷彩を施す。

塗料はガイアノーツの「ドイツ戦車3色迷彩セット」に含まれるオリーブグリーンとロートブラウンを使用する。
オリーブグリーンを筋状に吹く。
全体の1/3程度を覆う感覚で吹いたが、やや面積の占有率が大きくなってしまった。
オリーブグリーンの筋を規準にロー トブラウンを吹く。
オリーブグリーンの隙間へ筋をいれてバランスを取ると同時に太すぎるオリーブグリーンの筋の調整を行なう。

転輪は適度に分散させて迷彩色で塗りつぶした。
ハッチ内、予備履帯と工具、排気管 などの塗り分けを行なう。
塗り分け後、全体にぺトロールで溶いたローアンバーを流し全体の色調を馴染ませた。

2009.10.26  仕上げ
長らく放置していたが、年内に完成 させるべく作業を進める。

細部の塗り分けを行なう。
暗色が下地となる箇所は隠蔽力の強い塗料で白色を下地として塗布し、その上に基本色と同系統の色を乗せている。
全体的に色調を調整するため油彩を 数回重ねる。

砲身には煤色を軽く吹き、コピックマーカーにて濃淡の調整とつや消し処理を行なっている。
塗料の剥げ、錆などを筆で書きこ む。
全体に埃が被った表現をするため、 エナメル塗料で薄く溶いたフラットアースを全体に塗布する。

揮発後、凹部に溜まった塗料が残り写真の様な状態となる。
フラットアースのみでは色調が足り なかったため、フラットアースにダークイエローを混ぜて明度を上げた塗料を再度流しなおす。

凹部に残った塗料が多かったため、エナメル溶剤で余剰分を除去する。
全体の色調の調整が終り、残りは足 回りの汚れを表現して完成となる。

2009.11.23  完成
足回りの汚しを行なう。
色調の調整ついでに汚しもある程度できていたため、その雰囲気を生かしつつパステルを使用した泥に汚れを再現する。
ウェザリングを行なう面にアクリル溶剤を塗布し、揮発する前にピグメントを乗せる。
ある程度アクリル溶剤が揮発した段階でピグメントを筆で押さえ、本体に定着させる。
車輪・履帯にも同様の手順でピグメントを乗せる。
完全に換装した状態。
もう少し本体側の色を生かすウェザリングを行ないたかったのだが、加減が難しくいつもと同じような感じになってしまった。

足回りの汚れを施す段階で、筆に残ったピグメントを使って車体下部やマッドガードにもウェザリングを施した。全体のバランスを考えながら汚れを乗せ、仕上げとした。
先に作成したヴァルベルヴィントと色調を比べてみる。

同じ塗料を使用した迷彩にもかかわらず、ウェザリング手法の違いでかなり雰囲気が変る事がわかる。
IV号戦車に施した手順は大量のエナメル溶剤を使用するためプラキットには適さない方式なのだが、色調の雰囲気としてはこちらの方がイメージに近い。

今後は、この方式をプラキットに施す方法を模索して行きたい。