Sd.kfz.250/9 Ausf.A le.S.P.W. (20mm KwK)
20mm KwK38装備型 半装軌装甲偵察車 A型

2005.07.19  下地処理
メタル製フルキットであるため、メタルプライマーを使用した下地処理を行なう。
細かいバリを落した後に真鍮ブラシで磨いて剥離剤を落し、筆でメタルプライマーを塗布した。
主砲となる20mm KwK38はアルミ挽き砲身と差し替える予定である。
このままでは形状が大幅に事なることから真鍮パイプ等で手を入れる必要があるが、同様の作業は38(t)偵察戦車やFLAK38の制作で行なっている為、手法としては既に確立された作業といえる。
内装を先行して組み立てる。
車体は上下分割されているがパーツの合いはさほど良くないことから、内装を早めに完了させて車体パーツの擦り合わせを行なう予定である。
内装を車体と組合せせるとこの様な雰囲気となる。
本車はオープントップ車両とはいえ内装はほとんど見えないことから、特に手は入れない予定である。
操縦席部の内装。
パネルとハンドルが別パーツとなっているが、共に形状は良好である。
マルチプライマーを吹いた上にサーフェイサーを吹く。
本車の内装色を示す資料は無いのだが、ほぼ密閉された形状から戦車等と同じ様に明るい色で塗装されていたのではないかと推察する。手抜きではあるが、サーフェイサーの色を内装色として使用することとした。
内装の基本塗装はこれにて完了とし、細部の塗り分けと簡単なウェザリングを行なう予定である。

2005.07.25  車体・砲塔工作
車体内装の仕上げ作業。
サーフェイサーの上に水性塗料にて塗り分けを行い、タミヤ ウェザリングマスターにて汚しを行った。オープントップ車両では無い為、内装は適当に塗り分けて完了とした。
最近発売されたタミヤのウェザリングセット(B)を試してみる。
中身は多少定着力のある顔料を固めた物という感じで、付属の刷毛+綿棒(?)の様な道具で塗りつけて使用する。顔料は粘度が高いことから、使用感は半分固まったラッカー塗料の様な感じである。
使い方にもよるとは思うが、塗布後のぼかし処理ではパステルの様な拡散をしない為、なかなか色が薄くならずにくどい感じになってしまう。
また、付属の道具では狭い隙間や入り組んだ箇所には顔料が入らず苦労する点もパステルと比較して使い難さを感じる点である。
ただし、パステルと違い、粉末が飛び散るといったことは無い為、周囲を汚さずに手軽にウェザリングを施す場合には便利なツールであると思われる。

車体の仮組。
上下のパーツの合いは悪く、ある程度曲げ加工を行なってどうにか写真の状態まで矯正した。この状態でも車体の左右や正面には大きな隙間が空き、車体後部はパーツが合わない状態である。
曲げによる矯正では限界である為、固定後にパテで埋めることとした。

隙間にエポキシパテを盛った状態。
幸いにも非オープントップ車両であったため、今回は外装のみ穴埋めと表面処理をすれば済む。


主砲である20mm KwK38の制作。
20mm KwK38はII号装甲観測車と38(t)偵察戦車の制作の際にも作っており、今回で三回目の作業となる。
1/72 アルミ挽き砲身をベースとして使用し、真鍮パイプと組合せて2重構造になっている駐退機とマズルブレーキを作り込む。

基本となるパーツと採寸が可能なキット付属パーツがあることから作業難易度はさほど高くなく、径の違う真鍮パイプを組合せてハンダを流し込み、ヤスリをかけて調整する方法で制作した。

作り込みは砲身部のみとなるため、他の部位はキットパーツをそのまま使用した。

砲塔の内装組立て。
小型の砲塔の中に20mm KwK38、MG42、測量機が搭載される。本来は砲塔リング内に座席があるのだが、そこまで作り込むか悩まし所である。
車体と砲塔を組合せてみる。
主砲が前傾気味になるため、砲塔組立時の調整と車体との接合時の擦り合わせが必要となりそうである。

2005.08.10  車体・足回り・砲塔工作
1ヶ月弱ぶりの更新であるが、作業はそこそこのペースで進んでいる。
写真は車体の隙間埋めの仕上げとを行い、角張った車体の特徴を出すためにヤスリをかけた状態。車体装甲板の接合部にあるメタルキット特有のだるさがなくなり、シャープな印象となる。
メタルキットにヤスリがけをして表面を整える場合には、多少目の荒い金属用のヤスリを使用して削り込みを行い、ペーパーヤスリで仕上げをすると良好である。
足回りの加工作業。
完成度の高い装軌部分のパーツであるが、鋳造時に開口部が埋まってしまっている。ピンバイスとデザインナイフで開口部を掘り起こすと写真の状態となる。
別パーツの転輪も同様に開口する。
砲塔前面の防弾板は鋳造時の欠けがあったため、削り落として真鍮板で作り直した。
車体を吊り上げる為のフックは真鍮線を使用して作り直した。
L字に曲げた真鍮線をプライヤーで押しつぶし、ヤスリで加工した上で車体に埋め込んでいる。
フック用に加工した真鍮線。
0.2mm程度の真鍮線でも押しつぶすと想像以上に面積が広がる為、キットの寸法に合わせて幾度か試作している。
車体後部の装軌部を固定する為に真鍮線にて支柱を作成。
足回りを仮組して、全体のバランスを確認。
今回の制作の山場と思える砲塔上部の手榴弾避けネットの作成。
キットパーツは形状的にはよく出来てはいるが、残念ながらエッチングではない。目立つ箇所だけにメッシュは開口したパーツに置き換えたいため、WAVEのエッチングメッシュと真鍮板を使用して自作することとした。
寸法はキット付属パーツを元とできるため、作業的にはパーツの切り出しと加工が主となる。
WAVE製エッチングメッシュを適度なサイズに切り出し、枠を取り付ける部分をマーキングする。
マーキングに沿って細く切り出した真鍮板をハンダ付けしていく。
写真は表面だが、実際にハンダを付けるのは裏面からとなる。
余剰部を切り飛ばし、曲げ加工を行なうとこの様になる。
幾度か作り直して写真の状態となったが、左右対称のパーツをスクラッチすることの難しさを痛感。
寸法は左右対象だが形状は異なる為、左側のパーツは加工を行なう。
砲塔との接続部は取り付け基部を作成し、真鍮線にて固定する。
砲塔に取り付けた状態。
可動式にしたい所であるが、難易度の高さから今回は見送ることとした。そのうち、フル稼働の六角 or 八角砲塔を作りたいものである。

2005.08.16  細部工作
仕上げの細部工作を行なう。
合わせ目の処理や砲塔の作成には難儀したが、素性の良いキットである為短時間の工作で形にすることができた。
車体後部の追加燃料タンク。
ラック部は細く切り出した真鍮板を組合せて作成し、接着を行なわなくても燃料タンクを保持できるように調整した。
追加燃料タンクはフジミ製 1/76 I号対自走砲に付属するものを使用した。
基本形状が整っている為、持ち手部分を金属製に置き換え筋掘りを入れただけである。
テールライト、後部ハッチ用の足かけを真鍮材で制作。
車体前部の車間表示ポール、ミラー、フック等は真鍮材で自作。ワイヤーカッターはMars製のレジンパーツを使用した。
アンテナと手榴弾避けの天蓋を瞬間接着剤にて固定。

2005.11.07  塗装
3ヶ月近く作業を停止していたが、別のキットの塗装に便乗して作業を再開。
本車が運用された時期(1942.末〜1943.9月)はいくつもの要素が入り交じる時期でありどの様な塗装を施すか少々悩んでいたのだが、SIG33Bの塗装と同時期に行うこととなったため、こちらと同じく東部戦線 1943春〜夏という想定で迷彩を施すこととした。
尚、塗装選定の考察要素は下記となる。

1. 本車は1942年3月に発注され、1942年末には東部戦線へ小数の試作車両が送られた
2. 1943年2月より車体の基本色はダークイエロー(ドゥンケルゲルプ)に変更された
3. 本車の完成により、偵察部隊向け装輪装甲偵察車(Sd.Kfz.222)の生産は1943年5月で打ち切られた
4. アルテ車体のSd.kfz.250は1943年9月まで生産され、翌月よりノイ車体に変更された

1.の車両は時期的にジャーマングレー(パンツァーグラウ)の塗装であったと考えて問題はないであろう。現存する本車の写真で最も有名なものはこの試作車ではないかと思われる。
1.の試験結果を受けて3.の決定に到るわけだが、この間に基本色の変更が行われている。このため、Sd.kfz.251/9アルテ車体型の量産車両はダークイエローで塗装されたものが多かったのではないかと思われる。
下地処理としてマルチプライマーを吹いた状態。
マルチプライマーは希薄せずにエアブラシで全体に吹いている。
希薄したMr.サーフェイサー 1200をエアブラシで吹いた状態。
影となる部位にラッカーのレッドブラウンを吹く。
複雑な面取りがされた車体であるため、影となる部位はしっかり吹いておく必要がある。
写真にはないが、足回り等はこれが基本色となる。
基本色となるダークイエローはMr.カラーのラッカー性塗料を使用。
履帯と転輪の基本色としてダークグレーとフラットブラックの混合色を吹く。
基本色の塗装が終った状態。
基礎的な塗り分けは完了したが、時間切れで作業はここまでで停止。時間が取れる状態になったら三色迷彩を施す予定である。

2006.01.07  迷彩
基本塗装は完了しているため、年末年始の休みを使って迷彩を行なう。
本車のA型は量産開始からB型車両への切替え時期の間の数ヶ月間にのみ生産された車両である為、現存する戦場写真は意外と少なく、塗装やマーキングの参考となる資料がほとんどない。
このため塗装の参考は実車資料ではなく、利用時期の仮定を行い、その時期に準じた迷彩パターンを採用した。想定時期は1943年春〜クルスク戦までの間で、細いラインによる三色迷彩を行なうこととした。
レッドブラウンとオリーブグリーンのラインを細吹きする。
ブラウンは細吹きしやすいのだが、グリーンは目づまりや塗装面への塗料の飛散が発生しやすく、なかなか思いどおりの塗装ができない。塗装技量の問題でもあるが、塗料や溶剤を変更した実地試験を繰り返して最適な方法を模索中である。
足回りの塗り分けを行い組立てた状態。
砲塔と車体の合いが今一つであるため補正を行った後にデカールを張る。
デカールはストックの中から妥当そうなものを選択して張った為、水張り・ドライデカール・ハイテクデカールと3種類のデカールを使用した。
部隊マーキングと車両ナンバーを車体前面と背面に張る。
A型車体の本車の戦場写真で師団マーク等が分かるものがないため、B型車体の使用が確認されているドイツ陸軍 第6戦車師団 装甲偵察車中隊所属車(車両ナンバー:WH-667117)とした。ちなみに、この車両が本当に存在したかは知ったことではない。

車両ナンバーはフジミ製 1/76 Sd.kfz.250/10に付属する水張りデカールを使用。
師団マークはMicroscale Industries.Inc製の水張りデカールを使用。
戦術マークはARCHER製のドライデカールを使用。
国籍マークはFOX MilitaryModels製のハイテクデカールを使用。

2006.01.25  仕上げ
基本塗装と迷彩を施してから暫く更新を行なわなかったが、その間に日々5分・10分と時間をとって仕上げを行なう。
手始めに、全体の色調を整える為に油彩のローアンバーをぺトロールで溶いて全体に流した。これにより全体の色調を押さえ、基本色と迷彩を馴染ませることができる。
この行程はどの制作の際にも行なっており、今回は下地が手慣れた三色迷彩であることもあり、特に迷うこともなく作業を進められた。
細部の塗り分けを行なう。
工具類の柄などは木製であるため、ニス塗りがされている表現を行なう。
若干の光沢と透明感があるニス塗り部分の表現には、上塗りに隠蔽力の低い塗料を使用することとなるため、下地を明るめに塗装しておくと効果的である。
下地はに隠蔽力の強いシタデル製水性塗料の白を使用した。
ニス塗り部の上塗りにはこれまではエナメル塗料のクリアオレンジやクリアイエローを使用していたが、これらでは目立ち過ぎる傾向があったため、今回は手法を変えてコピックマーカーを使用した。
コピックマーカーは山吹色系で多少濃い目の色を使用し、カラーレスブレンダーで適度に伸ばして色調を整える作業を納得がいくまで繰り返し行なう行程を経て、写真の様なややつや消しの色合いに到達した。
塗装の剥げ落ちの表現。
使用による摩耗の表現であると同時に、鋭部に色を乗せることで輪郭線の可視化を目的とした塗装を行なう。
迷彩と相反する塗装であるが、ミニスケールキットでは塗装やウェザリングで細部が埋没しがちであるため、最近はあえてこの様な塗装を行なっている。
塗装にはエナメル製塗料を使用し、写真のように鋭部と搭乗により摩耗すると思われる箇所に筆で色を乗せた。
前段階の塗装を馴染ませ、塗装の剥げによる錆の表現を行なう為にコピックマーカーを使用する。
色を乗せたポイントは剥げ塗装周辺と影になる凹部である。次の行程にてカラーレスブレンダーで色の伸ばしとぼかしを行なうため、狭い面積に若干濃い目に色を乗せた。
カラーレスブレンダーでぼかしを行った状態。
前段階のコピックマーカーで塗料を乗せた場所から放射状にぼかしを行なっていく訳だが、塗料を残し過ぎずかつ伸ばし過ぎないという加減の調整が大変難しい。この辺りの作業は多少のやり直しが効く為、少しずつ作業を進めて自分のイメージに合うまで調整を繰り返すこととなる。
写真ではよくわからないが、鉛筆を使用して剥げ部の光沢表現を行った。
鉛筆の芯を綿棒に擦りつけて色を取り、凸部を中心に撫でるように少しずつ色を乗せる。やり過ぎると光沢が付き過ぎてテカテカになってしまう為、加減が重要である。
全体的に色調が暗くなり過ぎてしまったため、再度ぺトロールで溶いた油彩のローアンバーを流した。
これはやり過ぎるとエナメル塗料が侵される為、注意が必要である。
また、足回りの汚れ表現にはタミヤのウェザリングセット(B)の錆を使用してみた。タイヤの凹部に泥が詰まった様な雰囲気の表現ができ、使い勝手もパステルよりは楽であった。どの様に仕上げたいかにもよるが、使い方次第では様々な表現に使えそうであるため、今後の要研究素材の一つである。
今回はパステルは使用せずに、これで完成とする。
試しに、基本塗装を同時に行ったキューベルワーゲンと並べて見る。各種行程を経てここまで色調が変化するという参考としては申し分ない一葉である。