ALKETT Vs.kfz.617 MINENRAUMER
アルケット社製地雷処理車

2009/06/30 制作開始
発注から約1ヶ月。輸入キットにしては思ったよりも早く納品された。

成形状態は極めて良好で、多少の気泡修正のみで下処理は済みむと思われる。
モールドはやや甘めのため、掘り直しや若干の作り込みをする予定である。  
手始めに剥離剤を洗浄した後に、バリを切除する。
映画を観ながらちまちまと2時間くらい作業をしてこの状態に到達。

レジンは固めなので、バリの切除は細かく切り刻む様な要領で少しずつ落してゆく。
この作業は無理をすると亀裂が入りキットが台無しになるため、気長に焦らず作業をすることが肝要である。

仮組みした状態。

パーツ同士の合いは大変良く、全く接着を行なわない状態でもバランスを取るだけでこの仮組み状態で保持できる。

2009.07.09  車体工作
そもそもこの車両の正確な三面図を 持っていないため、寸法的な面での正確さを調べることはできないのだが、実車写真と見比べて明らかにおかしいのが車体全面の造形である。
幸い、ロシアに現存する実車を正面から捕らえた写真がWeb上で公開されており、それを見比べたところでは鼻面上の正面の面積が明らかに小さく、操縦席の ペリスコープに至る傾斜がキツすぎる事が分かる。

細かい作りに入る前に、この箇所だけは修正を行なう必要があると判断した。
レジンキャストのキットの造形に手 を加える場合にはどの様な素材を使用するかはいつも悩むところだが、今回は容易に盛り上げができ、ヤスリによる調整にも耐えられるプラ材を使用することと した。

EverGreenのプラ材を短冊状に切り、写真のように積み上げて加工を行なう。
レジンとプラの接着は瞬間接着剤を使用し、プラ同士の接着には流し込み型の接着剤でプラを溶かしつつ接着している。
デザインナイフで大まかに形状を整 え、ヤスリがけを行ないキットパーツとの角度を整える。
また、プラの積層構造であるため、レジン - プラの間やプラ同士の間には若干の隙間が生じるため、溶きパテを塗りつけて隙間を塞ぐ。
溶きパテが乾燥した段階でヤスリを 使い余剰部分を削り落とす。
各パーツとの接合は真鍮線を用い る。

1.5mm程度の真鍮線を使い、まずは基部を据える箇所の中心付近に真鍮線を埋め込む。
埋め込んだ真鍮線の先端を鋭角に加 工し、接合させる部品をあわせて当たりを付ける。
部品側の当り位置が確定した段階で穴をあけ、車体との接合を可能にする。

今回は真鍮の軸1本である程度の強度が保てる目処が付いたが、パーツの構成や構造に寄っては複数本の軸が必要となる場合もある。
後輪側も同様の加工を行なう。
後輪はパーツ2点に別れているた め、パーツ間の接合と車体側の接合の2ヶ所で真鍮線の軸を使用する。
車体側を仮組した状態。

後輪の車軸は円形の為、目立てヤスリで中心点を定めて開口している。
砲塔も同様に真鍮の軸を通す。
車体を組立てた状態。

真鍮の軸が無い状態ではバランスで形状を保つしか無かったが、軸をいれたことでこの形状で固定化され、持ち上げることも可能となった。

2009.07.15  砲塔工作
砲塔の工作を行なう。
若干の気泡はあるもののリベット跡も欠落することなく鋳造されており、大きく手直しが必要となる箇所は無い。
主砲軸部分がやや幅広であるため両端を切り落とし、薄くなった基部はプラ材にて調整をしている。

また、砲塔上部のハッチ用ゴム製ダンパーはプラ材と真鍮パイプで再現している。
キット付属のハッチは良い形状をし ているが、可動式とするため真鍮材で作り直しを行なう。
寸法はキット付属パーツを採寸し、0.3mmの真鍮板から部品を切り出す。
ハッチのヒンジは0.1mmの真鍮 板を細く切り出し、真鍮線を軸に折り曲げて作成する。
作成したヒンジはハンダにてハッチ のパーツへ接着する。
ヒンジの軸はハンダにて埋まってしまうが、ハンダは柔らかいためピンバイスにて再度開口する。
砲塔に取付用の穴を開ける。
ハッチは真鍮線を使用して固定す る。
L字加工した真鍮線をヒンジに通 す。
適度な長さで真鍮線を切断し、コの 字に加工する。
ハッチを取付た状態。
ハッチは期待通りの稼働範囲を得る ことが出来た。
砲塔にはMG13K機関銃を2挺装 備している。
キット付属のパーツはさほど良い出来ではないため、アフターパーツから適当なものを見繕った。
使用したのは1/72用のMG34で、1/76として使うにはやや大きすぎることから死蔵していた物である。
砲身のみ切り取り、開口した砲塔に 差し込む形で固定する。
現段階では他の作業中に破損する危険性があるため、接着はしていない。
役割は不明だが、実車には車体と後 輪を繋ぐチェーンがある。
こちらも適当なアフターパーツを使用することとした。

金属製のチェーンは安易に塗装をすると塗料で目が詰まってしまうため、今回は初めから黒染めされているチェーンを使用し、塗装は行なわない。
車体側は真鍮線を使用した芯を付け て固定する。
芯とチェーンはハンダで固定した。
車体側へ取付た状態
後輪側はL字加工をした真鍮線を取 り付け、この真鍮線に通す形でチェーンを固定している。
車体の後部にはメンテナンス用と思 われるフックが取付られている。
キットの素の造形は良いのだが、細いパーツであるため1ヶ所を除いて破損してしまっていた。
真鍮線を曲げ加工して再現を行な う。
とりあえず作ってはみたが、今一つの出来であるため余裕があれば作りなおしを考えたい。
おおよその形にはなってきたが、車 体が大きい分まだ手をつけるべき場所が多々残っている。

2009.08.09  細部工作
アハトゥンクパンツァー第7集を参 考に戦車長ハッチの作り込みを行なう。

主な工作ポイントは、ハッチ内側のクッションと近接戦闘兵器となる。
クッション部は円形のため、WAVEの丸ノズルをベースに制作する。
丸ノズルと円柱のプラ材を張り付 け、基部を作成する。
丸ノズルを薄く削り、プラ材は中央 を開口させる。
ハッチ外側には近接戦闘兵器の投擲 口をプラ材で作成する。
車体上部の排気口とおぼしき部分が あり、参考資料ではここに薄い金属の異物混入防止用カバーが取付られている。

キットはカバー内部のスリットと支柱は用意されているが、カバーパーツ自体は付属していない。
中途半端な精度のパーツが付属するよりは、この様な状態の方が不足部分の追加工作が行ないやすい。
カバーパーツは真鍮板を切り出して 作成する。
切り出したパーツのエッジを落したあと、位置合わせを行なって開口する。
支柱に真鍮線を埋め込み、カバーの 開口部を潜らせて固定する。
この部位の奥まった部分は塗装に難儀しそうな予感がするので、接着は塗装後に行なうこととした。
キット付属の排気管(?)パーツと 牽引ホールドとおぼしきパーツを接着する。

パーツの精度はなかなか良く、参考資料を元に位置合わせを行い、瞬間接着剤で固定した。
また、資料によると車体側面に丸穴のモールドがあるため、これを再現した。
車体全面もキット付属の牽引ホール ドとおぼしきパーツを接着する。
また、形状修正字に切除したモールドを再生した。
細部が分かるような資料がないた め、工作はこれで終了とする。
試作機のため車外装備品などは装備しておらず、そもそも手を付ける余地がほとんど無いため、このくらいで手を止めるのが妥当かと思われる。

2009.10.26  基本塗装
塗装の手始めに下地塗装を行なう。

下地にはマルチプライヤーを使用した。
部品の素材色の違いを隠蔽するた め、サーフェイサーを吹く。

これまではMrカラーの1000番を使用していたが、尽きたため途中から1200番で吹きなおした。
影になる部位の塗装を行なう。

今回はドゥルケングラウの単色迷彩とするため、濃い目の塗り分けを行なうべく、フラットブラックによる影塗装を行っている。
本車の写真ではどの様な基本色で塗 装されたかを推し量ることが難しく、ドゥルケングラウとドゥンケルゲルブの2説があるようである。本車は1942年に生産された車両であり、この時期の基 本色はドゥルケングラウであったことから、この説を採用した塗装を行うこととした。

基本色はMr.カラーのジャーマングレーを使用した。
初めに調色をせずに素の色を吹き、基本色にダークイエローを少量ずつ混ぜて明度を上げたジャーマングレーを吹いて行く。
ある程度色調を明るくできたのだが、ダークイエローとの食い合わせの問題か緑味が強くなりすぎた感じがある。ジャーマングレーの色調調整にどの色を使用す るかは今後も研究課題になりそうである。
仮組みをした状態。

今後は細部の塗り分けを行い仕上げに入る。

2011.05.03  仕上げ
最後に更新してから2年半も過ぎてしまったが、その間に少しずつ進めていた仕上げ加工を掲載する。
長い期間放置していたため、工程の写真と作業内容が分からなくなっており、現存する写真から工程を書いてみる。
本車は試験のみで命運が尽きたため新車常態か試験後の汚れた状態のどちらかとなるのだが、明確なイメージを持たずに作業を進めたため、汚し→リカバリの工程を何度か繰り返すこととなった。

基本は緩く溶いた油彩による汚し塗装を行っている。
使用した油彩はローアンバーのみで、これをペトロールで希薄して流している。油彩が残りすぎたところはペトロールで拭きとり、場合によってはペトロールそのものを使って滲ませる処理を加えた。
マーキングは車体側面の国籍章のみとなる。
これは実車の写真でも確認することができるマーキングで、実戦配備はされなかったことから部隊・戦術マークなどは付けられなかったものと思われる。
油彩による汚しの工程を幾度か繰り返した状態。
工程を重ねる内に全体的に艶が出てしまい、イメージと大きくかけ離れた状態となってしまった。
リカバリとして、ある程度油彩を落とした上でつや消し剤をエアブラシで吹いた。

この状態から汚しに再チャレンジした。
結果として、写真の状態まで進めて手を止めることとした。
完成イメージが明確ではない状態で作業を進めると、作業が間延びする上に手を止めるタイミングが掴めず、いつまでも完成しない状態になってしまう。流石に2年半は放置しすぎたため、今回はここまでで完成とすることにした。

本 車は試作のみの希少な車両ではあるが、当時の写真とクビンカの現存写真があることから資料は豊富な方であり、制作には特には困ることはなかった。しかし、 オリジナルの塗装に関する情報がなく、製作時期も1942年と非常に微妙な時期であったため、とりあえずはドゥルケングラウの単色迷彩としたが、これが正 解であるかは分からない。