M270 MLRS JGSDF Model
M270 MLRS(陸上自衛隊仕様)

2011.09.13 下処理
eBayにて発注、ポーランドから郵送ということで、納品までは2週間弱の時間が必要であった。
納品状態は写真の様なブリースターパッケージとなっており損傷などは特にはなく、製品のできもまず満足できるもので安心した。

この完成品は数年前にどこぞの模型店で見かけたことがあり、その時の記憶を元にネットで探してやっと手に入ったという経緯があったりする。
輸入価格は日本円で1,600円くらいであった。
最近はミニスケールのキットも高騰傾向にあることから、金額的には普通のキットを買うのと大差が無い。
台座と本体は写真のようなネジ止めがされている。
車体そのものにネジ穴が切られているわけではなく、アタッチメントになる部材が取り付けられていた。
このあたりの芸の細かさから、ダイキャストの完成品であっても玩具ではなく、模型であると主張しているように感じられる。
車体を取り外した状態。
ロケットランチャー部はなかなか繊細な造りなのだが、ダイキャストのキャビン部分は手を入れる余地が多分にある。
とりあえず、構造を理解するために分解してみた。

基本はネジ止めであるため、特に苦労することなく分解が可能であった。
少ないパーツ数ながら手の込んだ造形がなされている。
ダイキャスト部分は非常に分厚い塗装膜が付いており、工作にも塗装にも邪魔になることから剥がすことにした。
塗装を剥がすという観点から、ガイアノーツのツールウォッシュを瓶に移して漬け込んでみたところ、即効で塗装皮膜が膨れ上がり剥がすことができる状態と なった。

この際に、迂闊にも樹脂製の小さな部品をつけたままで漬け込んでしまい、どうやら溶けてなくなってしまったようだ・・・
塗装を剥がした状態。
素材はアルミ系の合金の様で、手持ちの刃物でもどうにか加工ができる程度の強度であった。
塗装を剥がして初めて気がついたのだが、なかなか細かいモールドが成形されており、大幅に加工せずに手直しだけで済ませることが可能な箇所も多数見受けら れる。
ダイキャストモデルを改造しようなどと考える人は少ないと思うので参考にはならないが、とりあえず塗装は剥がすのが正解であろう。
車体の数カ所には樹脂製のパーツを取り付けるダボ穴が開いているたため、エポキシパテで埋めることにした。
速乾性のパテを裏側から押し出すように注入し、ある程度表面までパテが出てきたところでキットの形状に合わせて調整をしている。
硬化後には余剰部分を切除してヤスリで仕上げることになる。
手始めに、取っ手類を切除して真鍮線に置き換えてみることにした。
もともとのモールドはニッパで大まかに切除したあと、彫刻刀やヤスリで削り落とし、ピンバイスを穴をあける。
通常の真鍮板やホワイトメタルとは違いかなりの強度があることから、ピンバイスは0.3mm以上の大きさのものでないと開口することが難しい。金属加工全 般に言えることだが刃物の消耗が非常に激しく、今回も例外ではなかった。
ランチャーにあるネジ穴もエポキシパテで埋めた。
こちらは適度な大きさに丸めたパテを押し込み、周辺の形状に合わせた加工をおこなっている。

2011.10.05 工作
更新が滞っていたが、一ヶ月程度かけて作りこんだ内容を更新する。
ランチャー部は総じて良くできており、ネジ穴の埋めパーツの筋消し以外はほとんど手をつける必要はない。
それらの下処理以外は、今回はやや目立つ箇所を一部金属材に置き換える程度の工作で終わらせることとした。
キット付属の履帯は写真のような軟質樹脂製のものである。
塗装がどの程度乗るかはやってみないと分からないところなので、まずはこのままキットパーツを使う方向で進めることとした。
車体自体はブラッドレー歩兵戦闘車を流用しているため、いざとなれば同車のキットを履帯取り用として使い潰すことも考えている。
車体下部は写真のような構成となっている。
足回りは特別手を入れる必要を感じなかったため、手を入れる部位は前面・背面のフック類の作りなおしに留めることとした。
フックのモールドはかなり適当な作りであったため、作り直すこととした。
写真はキットのモールドを切除し、プラ材の自作パーツを埋め込むために溝を掘った状態。
フックの基部をプラ材で作成する。
フック自体はレジン製のアフターパーツを使用することとした。
本来は1/72 ドイツ軍用のパーツなのだが、特に違和感は感じない。
アフターパーツは在庫がすくなかったため、数社のものを混在して使用することとなった。
車体各所に配置されている取っ手を再現する。
開口に使用したピンバイスが0.3mmであったため、同径の真鍮材を使用したのだが、やや大きすぎた感がある。
前照灯を作りなおす。
この部位は自衛隊の他の車両と同等の装備に交換されており、自衛隊仕様車を見分けるポイントとなる。
キットのモールドから再利用できる部位は残し、他は切除する。
自衛隊仕様のライト類は保護カバーに収まりきらずにはみ出す構造となるため、カバー部の側面も掘り込んで形状を変更した。
前照灯の作業ついでに車体前面のフック類を作りなおした。
ライトのガードは金属線で作りなおすこととした。
このパーツも自衛隊仕様車特有のもので、写真で形状を確認しつつ、キットで寸法を調整して作っている。
ライト類の基部はWAVEの丸ノズルを使用した。
塗装後、プラ製のレンズをはめ込む予定である。
フロントガラスの保護用装甲の基部を作りなおす。
最も目立つ位置にある右端の装甲は上に跳ね上げられる構造のため、ヒンジが設けられている。 元々の造形はかなり残念なことになっていたため、すべて切除して作り直すこととした。
ヒンジ部はプラ材を瞬間接着剤で固定した上で整形し、軸には真鍮線を使用した。
軸の両端はプラ材の丸棒をスライスして貼りつけた。
自衛隊仕様はもとより、米軍仕様の一部でもキャビン上部のハッチには手すりが取り付けられている。
キットではこの部位が作られていなかったため、真鍮材で作ることとした。
あまり参考となる資料がなかったのだが、複数の写真からあつめた断片的な情報を総合して手すりを整形する。
基本形状が定まった後は支えとなる軸を取り付ける。
今回はアルミダイキャストのキットであったためできることなのだが、所定位置に開口して真鍮線を貫通させた上で、 キット上で位置合わせをしつつハンダで固定している。
アンテナを作成する。
この部位も自衛隊仕様車では他国の仕様とは異なる装備をつけている。
真鍮材を軸にパイプや鉄線でアンテナを作成する。
キットのモールドは米軍仕様のため切除し、新たにプラ材で基部を作成する。
アンテナを取り付けた状態。
本来は基部から枝状にアンテナが取り付けられているのだが、作成の利便性と強度確保のため、 基部を貫通して車体まで達する穴を開け、アンテナ側に付けた軸を差し込む構造とした。
サイドミラーを作成する。
元々、キットには樹脂製のサイドミラーがついていたのだが、迂闊にも塗料を剥がす際に一緒に溶剤に漬け込んでしまい 消滅してしまった。
このため、写真を参考に金属材で自作することとした。
車体に取り付けた状態。
適当に作った割には、一応見られる形にはなっている。
工具類を作成する。
キャビン側面にスコップと分解されたツルハシを装備しているため、適当なアフターパーツを使用して再現することとした。スコップはドイツ軍仕様のものを改 造して使うこととした。
自衛隊が使用しているスコップはもち手の部分の構造が外国製とは異なる。
プラ材と真鍮線の組み合わせて、意外にも簡単に制作することができた。
キャビンの側面に工具を貼り付ける。
ややオーバースケールのように感じるため、手直しが必要かもしれない。
足回りのマッドガードは鉛板を使用した。
キットパーツに目立てヤスリで凹部を作り、薄く伸ばした鉛板を瞬間接着剤で貼りつけている。
車体前部のマッドガードも同様の方法で作成した。
キットのモールドを最大限に生かしつつ、問題箇所のみ修正することには成功した様に思える。
前照灯下部のスモークディスチャージャーを作成する。
配置する箇所に0.8mmのピンバイスで凹部を作り、プラ材の丸棒を埋め込む形とした。
以上で概ね改造は完了した。
ほとんどが個人撮影の写真に頼って手を入れているため、キャビン上部やランチャーとキャビンの中間箇所などは手付かずとなっている。

現用車両は存在していても機密が多くて情報が集めにくい傾向があり、大戦中のマイナー車両を作る場合とはひと味違う情報収集の難しさを感じる。特に自衛隊 の車両はメジャーなもの以外はろくな図面も無いような場合もあり、作る上では非常に困ったものである。

2011.10.12 下地塗 装
塗装は写真のように分解できる状態で行う。
今回も様々な素材を使って組み立てているため、下地にはマルチプライマーを使用した。
アルミダイキャストが素材の部品であっても、この下地剤で対応できるようだ。
下地色を隠蔽するためにサーフェイサーを吹く。
素材色の違いにより感じられるばらつきがなくなり、一個の車体としての統一感が出てくる。
事前の影入れを行う。
使用した色は後々問題が出にくい茶系の暗色とした。
基本色はタミヤのアクリル塗料よりXF-73 濃緑色(陸上自衛隊)を使用した。
アクリル溶剤で希薄した状態ではエアブラシ塗装との相性が悪いため、ラッカー系の溶剤で希薄している。

2011.10.16 仕上げ
基本色の上にブラウンの迷彩を行う。
使用した塗料はタミヤのアクリル塗料 XF72 茶色(陸上自衛隊)で、こちらもラッカー溶剤で希薄して使用している。
自衛隊の迷彩は色の境界線がはっきりとしているため、XF-73 濃緑色を再度吹いて茶色との色差を強く出すように調整した。
細部の塗り分けは筆塗りで行う。
転輪のゴム部をファレホのNERO BLACKで塗り分ける。
軟質樹脂製の履帯は水性系塗料を弾く性質があったため、コピックマーカーにて塗装を行った。
使用した色はW9 Warm Gray No.9で、普通に塗ると艶が出てくるのだが、これは後ほど油彩をかけることで対処することとした。
マッドガードなどはファレホのNERO BLACKで塗り分ける。
工具類はタミヤのアクリル塗料のXF74 OD色を筆塗りした。
下地がラッカー系塗料となっているため、アクリル溶剤で若干緩めにした塗料を筆塗りをしても下地が溶け出すことはなかった。
デカールは10式戦車を作成した時の残りを使用した。
車体中央に桜のマークを入れたのだが隠れてしまった。なお車台番号はデカールの中の余り物を適当に使ったため、デタラメである。
車体後部にも車台番号を入れる。
油彩のバートンアンバーをペトロールで溶いて全体に塗布し、色調の調整を行う。
墨入れ効果も期待したのだが、効果としては今ひとつな感じであった。
前照灯のレンズを入れる。
全体に塗料がかかる工程が完了したため、レンズをはめ込む凹部に銀色を塗布し、レンズを嵌め込んだ。
橙色のハザードランプは透明プラのランナーから作成する。
写真はランナーをひたすら削って細い部品を作り出し、クリアオレンジを塗布した状態。
ハザードランプを埋め込み、前照灯全体をガードするバンパーを取り付ける。
使用した部材が太すぎた感じが強く、ライト類がかなり隠れてしまったのが残念。
汚れをどの程度乗せるかを非常に迷ったのだが、最小限に留めることにした。
エナメル塗料のダークイエローとフラットアースの混合色を希薄し、土埃が溜まりそうな箇所に薄く乗せた。
これまで実際に見てきた自衛隊の車両は非常に良く整備されており、演習後の土埃以外はほとんどハゲや傷はついていなかった。このため、模型的な表現としてのウェザリングもイメージがつかみにくく、新車らしく見えない程度の汚しを行ったところで手を止めている。
作業の最終工程にさしかかったあたりで新たに実写の写真を多数手に入れてしまい、細かいところに間違いがあることが発覚した。今更作業工程に戻すことも難しいため、考えすぎて完成しない状態よりは仕上げてしまったほうが正解と思い、中途半端ではあるがこれで完成とした。

なかなかに面白い形状の車両なのだが、アルミダイキャストのパーツは大幅な改造に不適当であったため結局のところ満足の行く改造ができたとは言いがたく、なんとも消化不良な感じがある。