Type10 MBT Prototype No.3
10式戦車 試作車(3号車仕様)

2011.07.15 砲塔の 作成
手始めに砲塔から着手することにした。
パーツの点数はさほど多くないのだが、ここのパーツは複雑な形も一体成形で作られている。
砲塔は第三世代以降の戦車に見られる複雑な形をしているがこちらも一体成型で作られている。
モジュラー装甲の周囲にビッシリと取り付けられたフックは凸形状で表現されている。
手始めにハッチ類の取っ手を金属線に置き換える。
取っ手類は簡易な形状での成形されているため、これらの位置を参考に開口し、キットのモールドを削り落として平面を出す作業を行う。
コの字型の金属線を植えこんでゆく。
金属材は長めに作り、プラ部品を貫通させて裏側から瞬間接着剤で固定する。
砲塔後部の自動装填装置上部のハッチ類にも同様の工作を行う。
砲塔上部の牽引用フックと思われる箇所を開口する。
部品自体は成形されているため、これは単に穴をあけるだけである。

また、モジュラー装甲にある発煙筒発射用の穴は開口したが、この後どのように作り込むかは悩ましいところだ。
主砲周りの工作。
同軸の機関銃の部位を開口した。

主砲の軸線上に設置されているレーザー探知機は装甲パーツが分離されており、良好な形状をしている。ただし、探知機自体は成形の限界から円形になっていな いため、WAVEの丸ノズルに置き換えた。
また、上部の装甲はやや厚みがあるため、こちらは薄く削り込んだ。
主砲先端の砲口照合ミラーは形状がいまいちであったため、プラ材で作り直した。
なお、砲はあらかじめ開口されており、このあたりの成形もなかなかよく出来ている。
アンテナは写真の様なパーツが付属している。
基部はキットパーツを使い、アンテナ部のみ真鍮線に置き換えた。
砲塔上部の照準装置関連に手を入れる。
戦車長用の照準器はレンズ部の形状が実車とやや異なるため、削り込んで調整した。
また、照準器基部のフック類は金属線に置き換えた。
砲手用照準機と砲塔側面の高性能カメラ部もフック類は金属線に差し替えた。
この部位の差し替えが可能ということは、モジュラー装甲上の同部品も技術的には置き換えできることを示している。しかし、その膨大な作業量を考えるととて も行う気にはなれない。
このフックの多さは、1/35などでキット化された際にはモデラー泣かせになるような気が・・・
砲塔後部のアンテナには基部をガードするバンパーが取り付けられているが、キットでは再現されていない。
このキットの数少ない欠落部分なので、ここは自作の出番となる。
素材は0.3mmの真鍮線で、図面と公開時の映像を見ながらてきとーに曲げて作ってみた。
キューポラと12.7mm重機関銃を取り付け、砲塔の工作はひとまず完了。
砲塔後部のラックを組み立てる。
やはり少し分厚い感じがするので、気力があれば金属材で作り直したいところではあるが、今回は折角の新作キットなので我慢我慢・・・
車体下部は一体成型になっており、旧来からの箱組みが不要である。
写真は内側の転輪を取り付けた状態。転輪パーツはどうも成形状況が今一つで、結構バリが付いてた。
車体側面と上部のパーツを合わせた状態。
まだ接着してはいないが、一応形状を保持できるだけのダボ穴が開いているため、この状態で固定できる。
砲塔を取り付けた状態。
この角度からみると、レオパルド2A6などよりは、チャレンジャーやアリエテに近い雰囲気があるように思える。

2011.07.23 砲塔バスケットと足回り
砲塔後部のバスケットに手を加える。
基本的な造形はキットのパーツを使用するが、エッチング部材を使用してバスケット下部のメッシュを再現する。
写真はキットの寸法に合わせてメッシュを切り出した状態。
メッシュは瞬間接着剤を使用して貼り付ける。
キットパーツの上に瞬間接着剤を薄く塗り、メッシュを乗せたあと木製のハサミで圧着した。
砲塔への取り付けはキットの構造をそのまま使用する。
このバスケットは成形炸薬弾対策のスラット・アーマーと しての機能があるとされており、位置的にも自動装填装置が装備された砲塔後部全体を覆うように取り付けられている。砲塔背面にはセンサーや弾薬供給ハッチ などがあることから、砲塔側面の様なモジュラー装甲を取り付けることが難しく、バスケットをスラット・アーマー兼用として主装甲にて防御する構造になって いるようである。
履帯の取り付けを行う。
本キットはなかなか洗錬された構造をしており、履帯は上下前後の4枚のパーツのみで構成されている。
履帯の取り付けは転輪をつける経過段階で行う構成となっており、軌道輪・誘導輪と履帯をセットで組み立て、軌道輪・誘導輪の車体側の受け軸で取り付ける構造となっている。

写真は誘導輪と上側の履帯。
誘導輪には履帯の突起部(センターガイドとは異なる専用の突起)を受ける凹部が設けられており、これに合わせて履帯を接着する。
こちらは軌道輪と上側の履帯。
こちらにも同様に凹部が設けられており、これに合わせて履帯を接着する。
上側の履帯と軌道輪・誘導輪を接着した状態。
下側の履帯にも同様の突起部が設けられており、これまた軌道輪・誘導輪の凹部と合わさる様に作られている。
上下の履帯と軌道輪・誘導輪を組み立てた状態。
軌道輪・誘導輪の曲部に取り付ける前後の履帯。
履帯の裏側の突起により軌道輪・誘導輪のどちらに取り付ける部品かが識別できる。
軌道輪・誘導輪と履帯を組み立てた状態。
パーツの合いは非常に良く、ほとんどすり合わせを行わなくてもこの形状になる。
車体側は初めに内側の転輪を接着し、次に軌道輪・誘導輪・履帯を取り付ける順番となる。
写真は外側の転輪を取り付ける前段階。
砲塔も含めて仮組みした状態。
この状態にサイドアーマーを取り付けると完成形となる。

2011.07.26  サイドスカートの作りこみ
サイドスカートのパーツは写真のような一体成型で作られており、細部の再現はなかなか良くできている。
砲塔と同様にサイドスカートの各所にもフックが装備されているのだが、成型の限界からキットでは写真の様な形状で形成されている。
このスケールでわざわざフックを作り直すことは考えていなかったのだが、0.2mmの鋼の線材が手に入り魔がさしてしまった。
キットのモールドを切除し、モールドの寸法に合わせて0.2mmのピンバイスで穴を開ける。
穴の間隔はキットモールドより心持広めにすると後工程の難易度的にも適正値のようである。
鋼材をコの字型に加工する。
プライヤーと真鍮の角材を用意し、角材に押し付ける要領で曲げるとしっかりと角度を付けて曲げることができる。
キットを貫通する足の部分は心持長めにし、長さは意図的に左右不均一にする。
これは、0.2mmの穴に0.2mmの線材を同時に差し込む難易度が高いため、 まず足が長い側を差込み、位置が固定されたあとにもう片方の足を穴に差し込むという段取りで作業を進めるための措置となる。
キットパーツに線材を差し込んだ状態。
この手の単純作業の繰り返しが必要な場合は、同一の作業をまとめて行うと効率的に進めることができる。
今回は初めに既存モールドの切除と開口をまとめて行い、次に線材の加工と取り付けを一箇所ずつ行っている。
差し込んだ段階ではキット面からの飛び出し具合は調整はせず、接着前にこれまたまとめて調整することとなる。
キット面からの飛び出し具合を調整する。
ピンセットを使い、ピンセットの厚みを使って調整して行く。
裏側から見た状態。
当然ながら、不均一に鋼材が飛び出した状態となっている。0.2mmの鋼材は容易に指に突き刺さるため、怪我をしないように注意しながら作業を行う。
裏側より瞬間接着剤で固定する。
接着剤が完全に硬化した後、余分な部位を切除し、組み立て時にキットパーツと干渉する箇所はヤスリがけを行う。
サイドスカートを取り付けた状態。
やはりこのスケールでは手を入れた箇所があまりにも目立たず、労力の割には効果が低いように感じる。 この状態では素材の色の違いから手を入れたことが分かるが、塗装してしまったら全く分からなくなる可能性もあり、あまりお勧めできない追加工作であった。
サイドスカート片側でフックは約16箇所。左右あわせて30箇所程度同様の作業をしている。 ちなみに、砲塔は全体で100箇所近くあるため、さすがにこれはやらない・・・・と思う。

2011.08.02  砲塔の修理
砲塔の裏側にはかなり大きな押し出しピン跡があり、プラスチックが非常に薄くなっている箇所が存在した。
嫌な予感がしていたのだが、案の定写真の様に揮発した溶剤の影響を受けて陥没し始めてしまった。 この部位に限らず、全体として使用されているプラは溶剤に対して弱く、接着剤で容易に変色し、 更に瞬間接着剤による白化現象が非常に強く発生する(梅雨時の湿気が原因の可能性もあり)など不可解な点が多々あった。
塗装前に発覚してくれたことは幸運だったが、このキットを作る際には事前にこの部位はエポキシパテなどで裏打ちし、陥没しないように手当てする必要がある。
表面的な処理ではどうにもならないと思い、陥没部に穴を開けてパテを注入することとした。
幸いにも陥没部にはほとんどモールドの類が無いため、ヤスリがけによる面出しもあまり気を使う必要はなかった。
エポキシパテを開口部に注入する。
開口部付近のフックは金属材に置き換えることを前提に切除・開口し、面出し後に対処を行う。
パテの余剰部をヤスリで大まかに削った後、紙ヤスリで面出しを行う。
平面に直した後、切除したフックを金属材で再現する。方法論としてはサイドスカートにて行った手順と同じなのだが、 組み立てた後では裏側から瞬間接着剤で固定できないため、部品を差し込む際に少量の接着剤をつけて差し込んだ。
砲塔の合わせ目にあるモールドが消えてしまったため、こちらのフックも金属材と置き換えた。
部分的に金属材化すると浮くため、勢いで砲塔前面のフックも全て置換した。

2011.08.09  細部工作
前照灯の作り込み。
キット付属パーツは写真の様な状態で、このスケールでは一般的な水準といったところなのだが、ここは作り込みが映える場所でもあるので全面的に作りなおす。
車体側はキットパーツを使うことを前提にダボ穴が開いているが、作り込みの際にはは修正が必要となる。
前照灯のランプ部は透明のプラで作ることとした。
透明パーツのランナーを適度なサイズで切り出し、デザインナイフで細く削り込んだ上で紙やすりで表面を仕上げる。
車体側の基部はプラ材でベースを作り、ライト類を差し込める様に真鍮パイプを埋め込む。
ライト類。
一部はキットパーツを流用しているが、あとはプラ材と金属材で自作する。
保護用のバンパーは真鍮材で自作する。
左右で形状が違うため、キットパーツの寸法と資料写真の形状を参考に部品を作る。
バンパーの接合部をハンダで固定し、車体側に開けた穴に差し込んだ状態。
前照灯の構成の違いによりバンパーのサイズは左右で異なる。
前照灯類のみを取り付けた状態。
前照灯とバンパーを組み合わせるとこの様になる。
寸法のバランスが難しいところなのだが、とりあえず収まったので良しとした。
このキットで最も残念な部位であるエンジンルーム上部に手を入れる。
写真に写りにくい部位であるため資料が少ないのだが、この部位にはエンジンルームの吸気用グリルと異物混入防止用のメッシュが取り付けられている。
メッシュの枠はプラ材を使用する。
キットのモールドに合わせてプラ材を貼り付けるのだが、この段階では大まかな寸法で貼付け、後ほど調整を行う。
枠を貼り終えた状態。
メッシュはエッチングの汎用部材を使用する。
枠の寸法に合わせてメッシュを切り出し、ヤスリで形状を調整する。
背面はなかなかよくできているのだが、なぜか左はじの排気グリルのみ残念なことになっている。
問題の箇所のみ手を入れる。
彫刻刀を使用して枠を残して掘り込みを入れる。
グリルの再現にプラ材を使用したのだが、 部材の厚みから微妙な出来となってしまった。
後方視覚用と思われるカメラは側面のケーブルにより車体と接続されている。
真鍮線を使用して再現してみた。
前照灯の保護用メッシュを作る。
これも汎用のエッチングメッシュを使用し、切り出した後に形状を調整している。
この段階では固定はせず、個々に塗装を行った上で、車体、レンズ、メッシュの順に取り付けることとなる。
実車の写真を確認していたところ、この部位にも吸気グリルと思しき構造があることに気が付いた。
工作手順はエンジンルームと同様だが、スペースが小さい分だけ細かい作業が要求された。
概ね工作が終わったので車体を張り合わせる。
砲塔に取り付けられる12mm機関砲を作り込む。
元の形状は悪くはないため、空薬莢受けと後部のハンドル部のみ手を入れている。
作り込はこれで完了とする。
次からは塗装に入るのだが、足回りの塗装と組み立ての順番で悩むことになりそうだ。

2011.08.22  塗装
サイドスカートに隠れた足回り部分をどのタイミングで塗装するか1週間ほど悩んでいたのだが、妥当な順番を思いついたので作業を再開した。
塗 装の順番はこれまでと同様に、プライマー → サーフェイサー → 基本色 → 迷彩色の順となるのだが、全体にプライマーを吹いた後、サーフェイサーを 吹かずに足回りの塗装を行い、足回りとサイドスカートを組み立てた後に足回りをマスキングをして、全体に対してサーフェイサーを吹くという順番で進めるこ ととした。
今回使用する塗料は、タミヤのアクリル塗料の中で「自衛隊色」とされる3色(XF72〜XF74)の中から迷彩に使用できる2色(XF72〜XF73)である。
試作2号車の初公開時はOD色(XF74)の単色塗装であったが、展示された3号車は二色迷彩(XF72 茶色、XF73 濃緑色)が施されていた。 この時の写真を参考に塗装を進める。
まずは全体にマルチプライマーを吹く。
この段階では写真のように分解した状態で作業を行う。
次に足回りの塗装を行う。
履帯は適当なダークグレー系の色を吹き、転輪は写真インストの塗装例を参考に基本色で吹き分ける。
転輪のゴム部を塗装する。
使用した塗料はファレホのNERO BLACK(70950)で、薄くなりすぎない程度に水で溶いた上で筆塗りしている。
足回りを組み立てる。
キットのダボ穴に合わせて組み立てるのだが、転輪周りは今ひとつ収まりが悪いことから、浮いた状態とならないように注意が必要であった。
サイドスカートを固定する。
こちらもキットのダボ穴に合わせて固定するのだが、車体側とは隙間が出来易いことから写真の様にマスキングテープで締めて固着するのを待つ。
塗装が住んでいる足回りのマスキングを行う。
マスキングテープで塗損じが出ては元も子もないため、無理にきっちりとマスキングをするというよりは、大雑把に覆う感じでテープを貼っている。
全体にサーフェイサーを吹く。
使用したものはMrカラーのサーフェイサー1200番。
次に基本色を吹く。
茶系と緑系のどちらを先に吹くか悩ましいところだが、下地色の影響を受け易いと思われる緑系を基本色として先に吹くこととした。
使用した塗料はタミヤ アクリルのXF73 濃緑色だが、溶剤はラッカーを使用している。これはアクリル溶剤で溶いた塗料を吹くと、妙に飛散する上にラッカーと比較して皮膜が弱いためである。
ポストシェーディングを行う。
XF73 濃緑色にXF74 OD色を少量混ぜた塗料を影となる部位に吹きつけている。
迷彩を行う。
使用した塗料はXF72 茶色をラッカー溶剤で希薄したもの。
インストと実車の写真を参考にフリーハンドで吹いている。
細部を塗り分ける。
足回りの泥除けと砲塔の機銃はファレホのNERO BLACKを使い、主砲の防水カバーはXF74 OD色を使ってみた。

2011.08.25   仕上げ
仕上げ作業に入る。
ここからの手順は大戦中の車両製作と同様の流れとなるため、まずはデカール貼りに着手する。
キットには写真の様なデカールが付属しており、10式戦車の試作車で使用できる以上の量がある。 おそらくは今後出てくるであろう量産車も視野に入れているのではないかと思われる。
10式戦車試作3号車はこれまで数回公開されており、その度にマーキングが異なるのだが、 今回はこれらの中から富士駐屯地開設56周年記念行事として富士学校で公開された際のマーキングを使うこととした。
砲塔側面のマーキング。
陸上自衛隊の部隊章には詳しくないのだが、ネットで調べたところでは富士学校機甲科部のマーキングらしい。
車体前面には自衛隊の桜の紋章、車体番号、所属が付けられている。
車体背面は富士学校で公開された際の資料が無かったのだが、他の試作車や別のタイミングでの公開時には 車体番号と所属が書き込まれていたため、これらに準拠することとした。
牽引用のワイヤーも塗装を施したのだが、過去の公開時にはシルバーの地金色、黒色の塗装済み、車体の迷彩に合わせた塗装の3パターンが見られるのだが、 今回はシルバーの地金色で再現することとした。使用した塗料はシタデルカラーのミスリルシルバーで、細筆で手塗りしている。
社外装備品などの細部の塗り分けが完了した段階で、全体の色調を整えるために油彩でウォッシングを行った。
今回はあまり派手にはしたくなかったため、バートンアンバーをペトロールで薄く溶き、凹部を中心に塗布している。
凹部のスミイレが弱かったため、薄く溶いたタミヤのエナメル塗料で再度凹部のみ塗料を流している。
使用した色はブラウンとフラットブラックの混合色で、車体の色合いを見つつブラウンにブラックを少量ずつ足して調色している。
ペトロールやエナメル溶剤で希薄した塗料を塗布すると、部分的に油膜のような筋が入ってしまうため、完全に乾燥する前に溶剤で洗い流す工程を踏む必要がある。
完全に乾燥してしまうと溶剤をもってしても修正が困難なため、この作業を行うタイミングは非常に難しい。
前照灯の組み立てを行う。
キットの部位に透明のプラスチックレンズをはめ込み、エッチングメッシュのガードを固定する手順となる。
写真はプラスチックレンズを瞬間接着剤で固定した状態。
次にエッチングのメッシュを貼り付ける。
このパーツは車体の塗装段階で先に塗装を済ませておいた。
足回り(特にゴム製のマッドガード)は薄い色合いの土汚れを施したかったため、希薄したタミヤのエナメルカラーを使用して色を乗せている。
使用した塗料はダークイエローとフラットアースの混合色で、フラットアースをベースにダークイエローで明度を上げる調整をしてから塗布している。
最後に砲塔にあるセンサー類の仕上げを行う。
これらのセンサー類は標的に向く位置にあることから、特殊な構造により光が直接反射しない(=相手に発見されない)構造となっているそうである。 このため、見る角度や当たる光により色合いが変化する特殊な構造色を持っている。
従来はメタル系の塗料などで再現していたそうだが、今回はこの構造色を同じ原理で再現しているハセガワの偏光フィニッシュのシートを使用することとした。
このシートは特殊な処理が施された薄い透明シートで、背面の色が透過する際に独特の構造色を出す作りとなっている。 キット本体並みの価格の部材なのだが、ミニスケール戦車ではこれ一枚で数十輌分はまかなえるため、コストパフォーマンスは高いと思われる。
砲塔の戦車長用視察口、砲手用視察口、砲塔上部の照準用レーザー口の三箇所に偏光フィニッシュを貼り付ける。
視察口は背面は黒、レーザー口は白で塗装した。
偏光フィニッシュを貼り付ける。
このシート自体がシールとなっていため、必要なサイズに切り出してそのまま貼り付けることができる。
写真からは、砲手用の照準口の独特の色合いが分かりやすい。
最後にガンメタルの部位(機銃、履帯)にメタルカラーのダークアイアンをドライブラシし、金属的な光沢を付けて完成とした。

現用車輌の製作は今回が初となるのだが、大戦中の車輌とは各所に異なる傾向があり作りながら様々な発見があった。 特に現用機ならではの装備については、大戦中の車両製作とは違う方法論が求められ、試行錯誤しながら作ることとなった。
キット自体は最新の製品であるため素組みでも高い水準の完成品となるのだが、 完成度を高めるためのプラス1ポイントを追加する箇所の見定めが難しく、手がかかった割りに効果が小さかったりと なかなか悩ましい部位も多々見られた。
10式戦車は2011年度から正式調達が始まっているため、遠からぬうちに量産車が公開されると想定され、 その段階で量産車準拠の新キットが出てくると思われる。このため、試作車のキットを作るチャンスは今回が最初で最後となるが、 いずれ量産車のキットを作るときには今回の製作で試みた工作の結果を反映させることで、より高い完成度を目指すことができると考えている。