Type10 MBT (Tank School Unit)
10式戦車 量産型(戦車教導隊)

2016.01.17   砲塔作成
10式戦車は試作型を2度作成しているが、量産型は初となる。
試作車との違いを確認しつつ、過去の作例実績に準拠した追加工作を行ってゆく。

砲塔パーツの構成は試作・量産の間にさほど差異はない。しかし、試作車では外装となっていたセンサー類が内装化されており、細かいパーツが 減っている。
車体パーツの構成も試作・量産の間では差異は少ない。
量産化に伴い細部の簡略化と車外装備品の配置が改善され、これらを再現するために車体上面のパーツは新造部品となっている。

車体下部と足回りは試作車と同じパーツが使用されている。
サイドスカートは量産型に合わせて変更されている。
量産型では乗降用の足場は数・位置が共に変更された。
仮組みで簡単に形となる所がこのキットの良い点である。
車体の完成イメージがつかみ易い事は、作り込みのバランスを見る上で重要な要素となる。
手始めに砲塔のグリップ類を金属線に置き換える。
実車の写真を見るとグリップの太さが2種類あることを確認することができ、これを再現するために0.2mmと0.3mmの金属線を使い分けて 使用してい る。
戦車長ハッチのレール上に取り付けられた20mm機関砲は実戦配備に合わせた形状に変更する。
キットの部品だけでは不足する部位については、他のキットの余剰部品を使用した。
アンテナは基部のみキット付属部品をしようし、他の部位は金属材で自作する。
接合部も強度を確保するため、真鍮線に置き換える。
アンテナ側面のガード用バンパーを作成する。
この部位はキットにはパーツが含まれていないため、真鍮線を切り出して自作する必要がある。
折り曲げ加工だけでは作成できないため、支えの部位をハンダ付けで取り付ける。
車体に対して差し込みで固定できるようにするため、取付部はやや長めに調整しておく。
アンテナとバンパーを車体に取り付ける。
適度な角度で取り付け、裏側から瞬間接着剤で固定する。
環境センサーを収納した際のガードも真鍮線で作成する。
キット付属パーツも良い形状をしているが、素材強度の限界から実車の比率から考えると太さが目立つことから作り直すこととした。
こちらは折り曲げ加工を行う前にハンダ付けを行い、硬化後の形状の変更を行う。
車体に取り付けた状態。
照準器の形状が実車とは似ていないため、プラ材を使用して寸法を調整した。
側面と背面には偽装ネットを取り付けるためのフックが設けられているが、これはスケール的に再現が難しいことから、0.2mmの金属材を取り 付けることで 再現を試みた。
ハッチ基部のヒンジは立体感が乏しいため、真鍮材とプラ材を組み合わせて作り直した。
砲塔後部のバスケットの形状は試作車と量産車では大きな差異がある。
キット付属の部品も新造パーツに置き換えられていた。
バスケットの中に金属製のメッシュを貼りこむ。
バスケットの大型化に伴い、砲塔との取り付け箇所は軸が追加されている。
キットにはプラ材のパーツが付属しているが、後々の工程で破損する可能性が高いため、金属材に置き換えることとした。
砲塔の基礎的な工作は以上となる。
最終的には滑り止め加工された面への追加工作が必要となるが、これは車体側と合わせて後の工程で対処を行う。

2016.10.15   車体の作り込み
エンジンルーム上部の吸排気グリルの再現を行う。
この部位は過去のバリエーション製品においても再現がなされていない場所であるため、作り込みが必須の箇所と言える。

薄めのプラ材で枠の縁取りを行い、メッシュ部分には汎用の金属メッシュを貼りこんで再現する。
排気グリルと砲塔のバランスを調整する。
砲塔後部とエンジングリルの接触面はかなりシビアであるため、エンジングリル側を削り込んで接触しない様に調整する。
塗装皮膜分も削り込み、塗装後にも砲塔旋回時に接触しないように気をつける必要がある。
車体の滑り止めパターンを再現する。
目の細かい紙ヤスリを素材となるが、紙ヤスリの厚みを解消するため水につけて台紙を剥がした上で使用する。
実車の写真を参考に滑り止めパターンを貼り付ける。
いざ貼りこんで行くとキットのモールドと実車のパターンの配置に矛盾が発生したため、かなりアバウトな仕上がりとなってしまった。
車体側にも同様の処置を施す。
こちらは実車と比較では矛盾は見られず、良好な再現度合いとなった。
車体背面の牽引ワイヤーも金属材で再現する。
専担のフックはキット付属のパーツを再利用し、ワイヤー部分のみ金属材に置き換えた。
前照灯は全面的に作り直しを行う。
キットパーツを一部使用しつつ、金属材とプラ材で再現を行う。
左右で形状が異なるが、キットパーツの形状を参考に再現する。
キットの素性が良いため、作り込みは以上で完了となる。
次は実車を参考に塗装を進めてゆく。

2016.10.30   基本塗装と迷彩
塗装の下地として全体にマルチプライマーを吹く。
後の工程におけるマスキングで塗装皮膜が剥がれない様にするためには、この段階で全体に下地剤を丁寧に吹いておく必要がある。
キットの成型色が濃く、複数の素材色が混在する作り込みを行っているため、塗 装の発色を均質にするためサーフェイサーを吹く。
Mrカラーの陸上自衛隊戦車色の茶色3606を全体に吹き付ける。
次の工程ではマスキングを行うため、塗装後1週間程度乾燥させる。この段階で焦るとマスキングを剥がした際に塗装が剥がれる事故が起きるた め、十分に時間 をかけて作業を進めてゆく。
二色迷彩を再現するためのマスキングにはマスキングテープと練り消しゴムを使 用する。

まずはマスキングテープをおおよその迷彩パターンに合わせて貼り付ける。
砲塔も同様にマスキングを行うが、凹凸が多い形状たのめ塗料の吹込みが起きな いように注意する必要がある。
迷彩の境界線がはっきりとした自衛隊の迷彩を再現するため、マスキングテープ の境界線に沿って練り消しゴムでマスキングを行う。

砲塔にも同様のマスキングを行う。
練り消しゴムは粘着力が弱いため、一通り付けた上で塗装を行う前に今一度境界線に沿って強めに押し付けておく。
Mrカラーの陸上自衛隊戦車色の緑色3414を全体に吹く。
砲塔にも同様に緑色3414を吹く。
塗料の乾燥後、マスキングを剥がす。
概ね予定していた配色となったが、車体と砲塔の迷彩パターンの噛み合わせがおかしい所があるため若干の手直しが必要 となる。

2018.02.03   完成までの流れ
最後の更新から1年以上間が空いてしまったが、完成までの工程を記載。

サイドスカートの泥除け部分を作り直す作業を行う。
キットのパーツから泥除け部分のみ切り取り、これを鉛板で新造したパーツに置き換えることでゴム製部位特有の歪みを再現した泥除けを作成す る。
キットのパーツの寸法を取るため、切り出したパーツにマスキングテープを貼り付ける。
パーツの分かれ目に合わせてマスキングテープを分割するため、基準線を書き込む。
鉛板は適度な厚さに伸ばして使用する。
厚くても薄くても加工が難しいため、適度な厚さに調整する必要がある。
鉛板にマスキングテープで作成した型紙を貼り付け、デザインナイフで各パーツごとに切り出す。
すべてのパーツが均一という訳ではないことから、切り出した部品の順番は覚えておく。
サイドスカートのパーツに切り出した鉛板を接着する。
サイドスカート側の接着部分には凹状の溝を設けており、これに合わせて鉛板を瞬間接着剤で張り付けて行く。先々の工程で力がかかる場合もある ため、使用する瞬間接着剤は高強度のものを使用した。
接着後、元のパーツを重ね合わせて泥除けに設けられている足掛け場所の調整を行う。
泥避けの工作が完了した状態。
仕上げの下処理として、墨入れを行う。
薄く説いたエナメル塗料のブラックを全体に流して凹部を強調する。
余剰に付着した塗料は生乾きの段階でふき取る。
エナメル溶剤を染み込ませた綿棒を使い、凹部周辺にはみ出した塗料を溶かして落としてゆく。
砲塔にも同様の処理を行い、墨入れを行う。
サイドスカートは墨入れ後に泥除け部分の塗装を行う。
鉛板部分は塗料の食いつきが悪いことから、メタルプライマーを塗布した上でファレホの水性塗料を使用して艶消しの雰囲気になるように塗装す る。
墨入れが完了した段階で仮組を行い、全体のバランスを確認する。
履帯の塗装を行う。
このキットは組み立て式のプラ履帯が用意されており、起動輪と誘導輪を軸に履帯を組み立てる構造となっている。今回は市街地走行用のゴムパッ ドを付けた状態を再現するが、後からの塗り分けは困難であることから先に履帯部分の塗装を進める。
錆や泥汚れを再現するためのベースとして、履帯全体は茶系の塗料で塗装を行う。
基本色の乾燥後、墨入れや薄めたエナメル塗料のフラットアースを流して表情を付けて行く。
また、金属履帯のエッジ部分は研磨されて地金の色が出ている場合があることから、シルバーを軽めのドライブラシで乗せる。
路面保護用のゴムパットを取り付ける。
ゴムパットは事前に塗装を行っておき、切り出しながら履帯に貼り付けて行く。
ゴムパットパーツの数が足りない・・・
幸いにしてサイドスカートに隠れる部分も多いことから、組み立て後に見える場所を中心に部品を取り付けた。
前照灯の作成と塗装を行う。
車体前面の大きな前照灯と左右のウィンカーはクリアパーツを作って再現する。

クリアパーツを目立たせるための下地色として、シルバーを塗布する。
クリアパーツはガイアノーツのUVジェルクリアを使用して作成する。
紫外線で硬化する特殊樹脂であるため、ライト類の凹部に流し込んで使用することに適している。
チューブから必要量の樹脂を万年皿に移し、爪楊枝でクリアパーツを形成したい部位に乗せて行く。
硬化するまでは樹脂が流れ出してしまうため、治具を使用して車体を垂直に保つ必要がある。
付属のUVペンライトから紫外線を当てて樹脂を硬化させる。
樹脂の硬化後、ウィンカーはクリアオレンジで塗装する。
前照灯には事前に作成した網目のガードを被せた。
組み立て作業は完了したため、仕上げのウェザリングに着手する。
凹部に溜まった土埃を再現するため、希釈したエナメル塗料のダークイエローとフラットアースの混色を全体に流 す。
車体側はやや少なめ、足回りは転輪の溝に溜まるくらいを目安に塗布する。
底面と履帯は凹部が埋まる位の分量で塗料を流す。
この段階でサイドスカートを接着した。
通常のプラスチック用接着剤を使用するが、塗装面に付着すると塗料が剥げることから慎重に接着剤を乗せる必要がある。
パーツが浮いてしまわないようにマスキングテープで固定して、一昼夜ほど乾燥させた。
ウェザリングの下地となる明るい色合いの土埃を乗せた状態。
汚れの色合いが明るすぎるため、色を重ねて調整を行う。
仕上げを進める前にデカールを張る。
キットに付属しているデカールの中から、戦車教導隊第一中隊のマークを使用している。
明るい色合いのウェザリングを抑えるため、ポイントを絞ってブラウンとダークイエローの混色を乗せて行く。
全体的にシックな色合いに調整したいことから、さらにブラウンの比率を増やした塗料を乗せて行く。
主要部分からは白色に近い色合いが消え、全体的にブラウン調の色合いに仕上げた。
サイトの更新が滞っていたが、完成したのは2017年1月末頃となることから着手から丸一年かかってしまっ た。
素性が良いキットではあるが、手を入れ始めるとなかなか完成しないのはいつもの通りである。

今回は市街地で運用される際の状態で再現したため、他の作品に比べると汚れは抑え目の表現に止めて色調も暗めで落ち着いた雰囲気としてみた。 現用の自衛隊車両はウェザリングで仕上げを誤魔化すことができないため、仕上げの表現方法については研究の余地が多分にあるように感じてい る。