Type 60 Self-propelled 106 mm Recoilless Gun Mod.C
60式自走106mm無反動砲 C型

2013.12.8   車体組み立て
1両分の部品は写真の様な構成となる。
足回りは非常に細かい構成となっているが、他の部位は適度にブロック化されており、組立自体はさほど困難ではない。

ペリスコープが取り付けられているハッチ類はクリアパーツで再現されている。
車体下部と内装は簡素な構造となっているが、底面のモールドはしっかりと再現されている。
内装はブロック化して再現されており、簡単に組み立てることができる作りとなっていた。
車体上部はほぼ一体成型で作られており、車外装備品類も予め整形されていた。
このため、一部ハッチ類と排気管周辺パーツのみ組み立てが必要となる。
車体上部は操縦室天板とエンジンルーム天板が分割されている。
内装は操縦席とエンジンルームが再現されている。
操縦席は組み込み型になっているが、エンジンルームは数点のパーツを直接底面に取り付ける構成となっている。
車体上面のパーツを取り付けると操縦席のみが外から露出する構成となる。
内装の壁面にある押し出しピン跡が露出するため、溶きパテを使用して修正する。
フェンダー背面にも押し出しピン跡が見えるため、この部位も溶きパテで修正した。
ハッチ類のパーツは合いが良く、取り付けは容易であった。
組み立て途上で内装の塗装を行う。
サーフェイサーにつや消し白を若干混ぜ、内装に吹く。
座席や無線機の塗り分けを行う。
後の工程を考慮し、塗装には水性塗料とアクリル塗料を使用する。
薄く溶いたエナメル溶剤で色調を変える。
つや消しの茶色に黒を混ぜた塗料を全体に塗布する。
フェンダー裏面は肉抜きがされていたため、プラ材で埋めることとした。
履帯に隠れて見えなくなる可能性もあったが、組み上がるまで分からないため事前措置として対処した。
エンジンルーム上部のパーツに手を入れ、ハッチのグリップ類を真鍮線に置き換える。
実車ではグリップの太さに差異が見られるため、0.3mmと0.2mmの真鍮線を使い分けている。
エンジンルーム上部のパーツと内装の合わせはシビアな調整となっているため、エンジンルーム上部に手を入れると合わせが厳しくなる。
すり合わせが難しいことから、内装を削ることで対応した。

2013.12.17   車外装備の工作
車体に一体成型されているクリーニングロッドの作り直し。
一部はキットの部位を利用し、ロッド自体は真鍮線に換えることで精密度を上げる。
主砲の昇降時に車体と砲塔の隙間をカバーするための装甲板が装備されている。
本来は可動式の構造をしていることから、0.2mmの真鍮線を軸に可動式とした。
車体側には軸線を収めるための隙間を作成する。
主砲を降ろした際の定位置。
主砲を上げた際の定位置。
主砲支持架も同様の構造で可動式とすることとした。
本来であればロック部も可動式にするべきなのだが、流石にこのサイズではこの再現は諦めた。
主砲支持架も可動式としたが、接合部の強度が弱いことから慎重に扱う必要があ る。
車外装備機器を保護するためのバンパーを作成する。
接合した真鍮線を形状に合わせて曲げ加工し、車体側に差し込む方式で固定する。
こちらのバンパーは1本の真鍮線を曲げ加工することで再現する。
左右対称の曲げ加工は難易度が高く、幾度が試しながら作成することとなる。
バンパーの内側に装備品を付けてゆく。
ペリスコープを取り付ける。
この部位全体がクリアパーツとなっていることから、接着面をつや消し黒で塗装した後に偏光フィニッシュシートを貼り付けた上で部品を固定した。
透明部はマスキングゾルを塗布して塗装から保護する方法とした。
アンテナを作成する。
キットではこの部位は車体に一体成型されており、完成度も低いものであった。
プラ材を基部に真鍮線でアンテナと固定用の軸を作成する。
アンテナは左右一対取り付けることができるが、一般車は左側のみにアンテナを 装備しているようである。
このため、右側は基部のみの再現とした。
左側のアンテナを取り付ける。
差し込み式としているが、取付基部の強度が低いことから塗装後には接着することとなる。
車体後部バンパー上の予備弾薬収納ケースを固定するための手すりを作成する。
キットを採寸して割り出した寸法に切り出した真鍮線をマスキングテープで固定し、ハンダで固定する。
ハンダ付けが完了した状態。
曲げ加工を施したパーツを取り付ける。
予備缶にも手を入れる。
持ちで部分を真鍮線に差し替え、固定用のベルトは薄く伸ばした鉛板を使用して再現する。

2013.12.23   組み上げ
車外装備品を取り付ける。
左フェンダー上部の装備品は多層構造となるため、これらの再現を試みた。

工具はARMOのレジン製のアフターパーツを使用したが、本来はWWIIのドイツ軍車両向けの部品であることから、自衛隊仕様に改造する必要があった。
右フェンダー上の工具は平面に配置されている。
工具はこちらもARMOの製品を使用し、固定具は真鍮板と鉛板にて再現した。
連装の無反動砲にも手を入れる。
主な改造点はスポットライフルの銃身交換と無反動砲の着火用ケーブルの再現である。
砲塔は概ね素組みだが、消火器と主砲の基部には手を入れている。
背面のパーツはクリアパーツとなっているため、視察孔にはマスキングを施して塗装に備える。
車体と主砲基部を組み合わせてみる。
昇降状態は意外と高いところまで上がる事が分かり、この構造を組み合え以外で再現する困難さを感じた。
足回りを作成する。
転輪・軌道輪・誘導輪は全て二枚重ねの構造となっており、組み立てるだけでも手間がかかる。
組立後、直ぐに車体に取り付けると接着面が緩むため、一晩ほど寝かして完全に固着するまで待つのが正解であろうと思われる。
軌道輪も位置固定用の歯が付いており転輪パーツの合いも良いことから、組立自 体はさほど苦労することはない。
接着後に位置調整を行い、中に浮かせた状態で固着するまで待つこととなる。
このキットには非常に繊細なプラ履帯が付属している。
塗装前・塗装後のどちらで組み立てるか悩ましいところですが、今回は塗装前に組み立てる方法としてみた。
履帯に沿った緩みまで再現されており、再現度合いは古今の同スケールキットでもトップクラスであると思われる。
砲塔の組み立ては塗装後に行うため、塗装前組み立てはこれで完了となる。
内装が露出した構造のため、航空機モデルの制作で訓練したマスキングの手法が活用できそうである。

2013.12.30   塗装と仕上げ
塗装に入る前に事前作業を行う。
このキットでは前照灯はクリアパーツの一体成型となっているため、塗装には工夫が必要となる。
まずレンズ面を塗料から保護するため、マスキングゾルを塗布する。
レンズの裏面の色はクリアパーツを活かす上で重要なポイントとなる。
レンズの裏面は白色もしくは銀色が適していることから、タミヤペイントのシルバーを筆塗りした。
車体の内装に塗料が入り込まないようにマスキングを行う。
下地剤としてマルチプライマーを全体に吹く。
可動部が固着することを防ぐため、個別に塗装を進める必要がある。このため、写真のように分解した状態での作業となる。
次にサーフェイサーを吹く。
足回りを組んだ後の塗装となるため奥まった箇所には塗料が回りにくい。
サーフェイサーを厚塗りするとモールドが潰れてしまうため、慎重に吹き重ねてゆく。
基本色の緑色を吹く。
Mr.カラー 特色セットに含まれる塗料をそのまま使用している。
次に茶色の迷彩を吹く。
こちらも特色セットの塗料をそのまま使用している。
陸上自衛隊の車両は迷彩の境界線がはっきりとしているため、再び緑色を吹き重ねる。
試行錯誤したが境界線のボケを防げなかったため、結局は筆塗りで対処することとした。
下地の色は既に定まっているため、薄めに希薄した塗料を筆塗りすることで境界線が明確化した。
塗料からクリアパーツを保護するために塗布してたマスキングゾルを剥がす。
マスキングゾルがはみ出した箇所を筆塗りでリタッチすると同時に、スポットライフルなどの塗り分けを行う。
履帯と転輪ゴム部の塗り分けを行う。
組立後の塗装は苦労するかと思っていたが、思いの外簡単に塗り分けることができた。

尚、塗り分け用の塗料は全てファレホの水性塗料を使用している。
工具と予備缶を塗り分ける。
これらはタミヤ アクリルカラーの自衛隊OD色を使用している。
デカールを貼る。
このキットには車体番号・所属番号・国籍章・陸自マークが含まれているが、普通科連隊の部隊章は含まれていなかった。
今回は手軽に仕上げるため、プリセットされた組み合わせの車体番号と部隊番号を使用した。

この段階では気がついていなかったのだが、車体番号と部隊番号を貼る位置が間違っており、実車では車体上面が正解である。後処理をしてしまった後に気がついたため、諦めてそのまま仕上げている。
車体背面にも所属と車体番号のデカールを貼る。
尚、国籍章や所属部隊のマーキングを車体側面に貼る事例も見られるが、今回はこれらは施さないこととした。
デカールが乾燥した段階でクリア部にマスキングゾルを塗布し、全体につや消しのスーパークリアを吹く。
これは塗装面及びデカールの保護と同時に、仕上げ処理時にデカールの隙間に塗料が侵入することを防ぐための措置となる。
車長席のペリスコープは裏面に偏光フィニッシュを貼りこむ仕込みをしたが、概ね期待通りの仕上がりとなった。
しかし、あまり見えない位置の上にヒサシがあることから光が入らず、手間の割に目立たない結果となってしまった。
墨入れと色彩調整を兼ねて、ペトロールで溶いたバートンアンバーを全体に塗布した。
次いで、汚れの再現のためにエナメル塗料のダークイエローとフラットアースの混色を乗せる。
小柄の車体であることから土埃を被りやすく、かつ登場時には土足で昇降されるためか、演習中の車両の写真では全体的に乾いた土で薄く覆われている様に見受けられる。
これを意識して、人が昇降に使用する箇所を中心に汚れを乗せている。
最後の仕上げの段階でエナメル塗料を使用したのだが、恐れていたプラの劣化が発ししてしまい、可動部に甚大な影響が出てしまった。
ある程度は修復し、一部は金属材に置き換える対処をしたが、アオシマ製のキットで使用されているプラスチックはエナメル溶剤の浸食を受けやすい点に注意が必要である。

塗装はこれにて完了し、まずは一両を完成させた。
砲塔の昇降機能はキットの仕様に準拠した組み換え式としている。これは油圧シャフト部のカバーの再現に使用できる部材が見つからないためだが、適した部材があれば可動化を試みてみたいものである。
一通り組み立ててみた感想としては、全体としては小さく繊細な作りながら組み易さも考慮されている良好なキットであると感じた。