Type73 3t1/2 CargoTruck Advanced Type
73式3t半トラック(改良型)

2013.01.10 基礎工 作
キットの構成は基本的に新型と同様である。
キャビンと、これに付属するパーツのみ異なっている。
新型と改良型のキャビンの比較。

新型は民生車両に違い形状をしていることに対し、改良型は軍用車らしい無骨な印象である。
手始めに肉抜き穴を埋める。
肉抜き穴には速乾性エポキシパテを充填し、硬化後に余剰箇所を切除して整える。
燃料タンクの改造を行う。
キットの燃料タンクは新型の構造に準拠しているため、これを改良型準拠に変更する。

モールドを削り落とし、面だしを行った状態。
燃料タンクの帯と注油口の位置関係を改良型準拠に変更した状態。
排気管は素組した上で排気口を開口する。
車輪はパーティングラインと押し出しピン跡を処理したのみで素組する。
シャーシのパーツを組み立てる。
元々が大変良くできているため、あまり手を入れる必要はない。
キャビン内装の作成。組み上がると見えなくなる部分のため、基本素組である。
前輪のマッドガードは側面を薄く削り込む。
本来は非常に薄い部品のため、真鍮材などで作りなおしたほうが良い箇所ではある。
フロントバンパーの工作。
一部開口し、押し出しピン跡を消した以外はキットのままである。
荷台のアオリ部分。
こちらも押し出しピン跡が目立つため、彫刻刀で削り落とした上で流し込み型接着剤で表面を調整する。
荷台の底版の工作。
底版の痛み具合を再現するため、意図的に傷を付ける処理を行う。
荷台の左右のアオリも押し出しピン跡が目立つ。
凸上の跡であるため、彫刻刀で削り落として面出しを行う。
座席の底面にも押し出しピン跡がある。
こちらも同様に処理を行う。
仮組みを行った状態。

2013.01.21 キャビ ン作成
キャビンの作成。
一体成型のキャビン部はパーツの精度が高く良い出来ではあるのだが、整形上の限界である取っ手や突起部を金属線に置き換えた。
キャビン上部には3トン半新型のキットには付属していないライトが着くのだが、クリアパーツへの置き換えを想定してくり貫き加工を行なっている。
キャビン前部にある三箇所のパネル部分を実車の写真でみると、左右は若干浮いているような印象を受けた。
このため、左右のモールドを削り落とし、真鍮板に置き換えることを再現を試みる。
適度なサイズに切り出した真鍮板は角を落とす加工を施した上で貼り付ける。
若干浮かせるためキットのモールドは完全に落とすのではなく、端を落として中央部のみ残し、その上に真鍮板を貼り付ける工作を行なっている。
キャビン側面は省略されているtステップや取っ手類を金属線で作成する。
警告灯類はクリアパーツに置き換えることを考え散るため、キットのモールドの切除や作り直しを行っている。
フロントガラスのクリアパーツは取り付ける前に入念にマスキングを行った。
フロントガラスを貼り付ける。
若干隙間が空きそうであったため、接着後にはマスキングテープで押さえて固着させた。
前照灯のガードを作成する。
実車では非常に繊細なガードがついているのだが、使用できる部材の限界からオーバースケールになってしまった。
この段階では接着はせず、塗装とクリアパーツ取り付けのタイミングを見ながら作業をすすめることとなる。
キャビン上部のライトにもガードを付ける。
こちらは細く切り出した真鍮板を使用し、寸法をあわせて加工した上で瞬間接着剤で固定した。
キャビンと荷台の中間に位置するエアクリーナーの部品への工作。
このパーツは3トン半新型の仕様に準拠しているため、改良型とは左右が逆になっている。
このため、シャーシとの取り付け部位と上部構造物を切断し、左右反転して再接着した。
予備燃料タンクの工作。
固定器具の作りこみを行っている。単純な構造で固定されているため、金属線と鉛板を使用して作りこむ。

予備燃料タンクは取り付け位置は新型準拠、取り付け方法は改良型準拠と混ざった仕様になっている。実車にも細かいバリエーションがあるため、参考にした車 体がたまたま混ざり合った仕様であったのかも知れないが、標準的な仕様に合わせるには新型・改良型共に手を入れる必要がある。
後輪下部のパーツを作りこむ。
キットパーツはモールドがある面の精度が今ひとつのため、ヤスリで面出しを行い、失われたモールドの復活と不足するモールドの追加を行った。
後輪のマッドガードは鉛板を使用して作成し、取り付け位置に凹モールドを入れて瞬間接着剤で固定する。
マッドガード系のパーツは真鍮板で作りなおす。
実車でも薄い金属板で構成されているため、キット付属の部品では厚さが再現しきれていない。このため、キットパーツの寸法を参考に切り出した真鍮板でパー ツを作成して置き換えることとした。
真鍮材の固定は瞬間接着剤を使用する。
本来は軸線を入れるほうが望ましいのだが、荷台の表面に飛び出してしまうと処理が難しいため、接着面を取ることで瞬間接着剤のみでの固定とした。
荷台の左右アオリの下部には幌を固定するための突起を真鍮線で再現した。
シャーシ・キャビン・荷台のパーツを組合わせた状態。
手を入れる余地がある箇所がまだ残っているため、引き続き作りこみを続ける。

2013.01.27  仕上げ工作
塗装の利便性を考慮して排気管を着脱可能な構造にする。
細い部位でシャーシと接続する構造のため、塗装後の接着では十分な強度が得られない。
このため、金属線の接続部を作成してシャーシ側に差し込む構造に変更した。
シャーシ側には受け口の穴を開ける。
前輪後部のマッドガードの作成。
事前に作成したガードにマッドガードを取り付けるための部位をハンダ付けする。
鉛板にてマッドガードを作成する。
鉛板は低温であればハンダ付けも可能だが熱しすぎると溶けてしまうため、安全を考えて今回は瞬間接着剤で固定している。
バックミラーの作成。
キット付属のパーツはなかなか良い出来ではあるのだが、プラ成型の限界から太さには難がある。このため、適度な太さの真鍮線を使用して作りなおすこととし た。
まずはキットパーツの寸法・形状を参考にベースとなるフレーム部分を折り曲げ加工で作成する。
フレームにミラーの取り付け部をハンダ付けする。
車体側には真鍮パイプをハンダ付けして取り付けの基部とする。
キットのミラー部をフレームに取り付ける。
ミラー部の取り付け位置を開口し、フレームの取り付け基部に差し込む形となっている。
操縦席側のバックミラーは単純な形状をしているため、写真の様な簡単な加工で済ませている。
操縦席側のミラー取り付け基部は真鍮材で作成した。
真鍮板で基部を形成し、真鍮パイプをハンダ付けしてミラーを差し込む構造とした。
操縦席側のミラーを取り付けた状態。
助手席側のミラーを取り付けた状態。

前作同様、塗装後にミラーフィニッシュのシートを貼ることを想定しているため、この段階では着脱可能な構造としている。
テールランプ周辺の工作。
ガード用のフレーム作成とナンバープレートの金属材置き換えを行なっている。
塗装時の利便性から予備燃料タンクの取り付けも真鍮線を軸とした差し込み方式とした。
エアフィルターの形状を変更する。
キットパーツの縁を落とし、環状に工作した真鍮板を取り付ける。
工作完了後状態を左側から見た状態。
基本的な部位は全てキットパーツで構成されており、手直し程度の工作のみでとどまっている。
同右側から見た状態。
シャーシ周りはもう少し研究して工作した方が良いかもしれない。
厚みが気になっていたパーツはほぼ置き換えたため、現状で手を入れられる箇所はここまでが限界かと思われる。
組み立てが完了し、次は塗装段階に入る。
今回は塗装後に更にもう一段階の追加工作をおこなうため、完成にはもう少し時間がかかることになる。

2013.05.11  塗装と仕上げ
取り外し可能な部品は分解した状態でマルチプライマーを吹く。
下地色としてサーフェイサーを吹く。
足回りはセミグロスブラックを吹く。
最終的には筆塗りやウェザリングを施してゆくため、この段階の塗装はサーフェイサーの色をすべて隠すことが目的となる。
基本色はMr.カラー特色セットの陸上自衛隊戦車色のOD色を原色のまま使用する。
シャーシと同様、こちらもサーフェイサーの色を隠すことが目的である。
OD色単色では実際のイメージと大きく異なるが、この後にOD色をベースとして色味を変えた色を重ねてゆく。
退色が進んだ車両の色合いに近づけるため、OD色を基本に調色を行う。
過去の塗装経験より、グリーンの色調を強調するためにタミヤのアクリル塗料であるフィールドグレイ(XF-65)を使用する。
OD色とフィールドグレイの比率は2:1程度となる。
調色皿の上での色と実際に吹いて乾燥した色合いでは明るさに若干の差が出てくるため、これを考慮した調色が必要となる。
荷台も同様の塗装を施す。
底板は後の工程で塗装を行うため、主に外に面したアオリの部位にのみ色を乗せてゆく。
退色具合を出すため、OD色とフィールドグレイの混色につや消しホワイトを混ぜてゆく。
一度の塗装では色合いは調整できないため、少しずつつや消しホワイトの比率を上げて行きながら数回に分けて塗装する。
全体に吹くのではなく凸部に塗料が乗る様に注意すると同時に、光源位置を考慮した塗装を行う。
荷台も同様に塗装を行う。
アオリ部分のみが塗装対象となり、斜め上から吹き付ける要領で塗料を乗せる。
つや消しホワイトは比率を徐々に増やしてゆくのだが、最後の1回のみホワイトの比率を増やして色調を変える。
極端に色合いが明るくなるような印象を受けるが、後の墨入れ工程において全体の色調は調整することとなる。
後の工程では色合いが暗くなる処理しかできないため、この段階の色合いが全体で最も明るい色となることを留意する。
荷台の予備燃料缶はOD色とフィールドグレイの混色のみであるため、色調調整を行った状態との違いが分かりやすい。
車外装備品などは車体と完全に同色ということはないため、あえて色調を合わせない工夫が必要となる。
実車を確認した所、ホイールの色はツヤのある黒色であった。
このため、ホイール部のみグロスブラックを吹き、タイヤの部位はフラットブラックを筆塗りしている。
排気管の塗装。
一般論としては、排気管は熱により塗料が剥げることで錆びるわけだが、自衛隊の車両は手入れが良いのか錆びついた状態を見ることはまずない。どの様な色合いにするか悩んだ末、無難にシルバーで塗装し、錆表現を加えることとした。
従来は水性塗料を使用していたが、今回はタミヤペイントのシルバーを使用してみた。
錆と汚れを再現するため、薄く溶いたつや消しブラウンを乗せた。
タミヤペイントのシルバーは粒子が細かくて発色が良いのだが、溶剤がエナメル溶剤に侵食されるため、塗装後の処理には苦労することとなった。
重ね塗りの工程を繰り返すため溶剤の特性を把握することは重要なのだが、初めて使う塗料であったため今回は失敗した。
塗装にあたり施したマスキングを剥がしてゆく。
フロントガラスのマスキングは表裏両面から行なっているため、塗装を剥がさないように注意しつつマスキングテープを剥がしてゆく。
幌の部位は自衛隊色のOD色とブラウンの混色である。こちらは基本色塗装時に別途マスキングして吹いている。

キャビンの基本塗装が終わった後、ペトロールで溶いたバートンアンバーを塗布し、生乾き段階で溶剤を含まえた綿棒で凸部をなぞることで凹凸を強調するための陰影を付ける。
この際に退色を強調したい箇所や塗装が摩耗する凸部は重点的に塗料を拭き取り、凹部との差別化を図ることとなる。
バックミラーの塗装と加工を行う。
ミラー部はつや消しブラックを筆塗りし、鏡面はハセガワのミラーフィニッシュのシートを使用した。
キャビン上部のランプを塗装する。
基本色と退色具合の塗装は車体と同様で、ランプの内部のみシルバーを筆塗りした。
ランプ部はWAVEのプラスチック製のレンズを使用する。
最も小さい経の1mmのレンズにクリアグリーンの塗装を行い、瞬間接着剤で基部に接着した。
キット付属の前照灯のクリアパーツの裏側にシルバーを塗装する。
キャビンのパーツの塗り分けを進める。
キャビン側面の警告灯をクリアパーツで再現する。
使用したものはWAVEのプラスチックレンズで、クリアオレンジで塗装して貼り付けている。
車体背面の塗り分けを進める。
ランプ類を塗装で再現するには限界があり、クリアパーツによる再現性と比べると数段落ちる様に感じられる。
デカールを貼ってゆく。
ナンバープレートはキット付属のデカールを貼った上で、同じくキット付属のフリー素材を使用して改造した。
初期状態では「34-6635」であるが、二文字差し替えて「36-3635」としている。
所属は「12施」としたが、特にモデルとした車両がある訳ではない。
車体背面のデカールは反射板と所属の二点のみとなる。
背面のナンバープレートもキャビンと同様の番号に改造する。
ウェザリングを行う。
基本的には土埃による汚れが中心となるが、パステル等の粒子素材は使用せずに塗料のみで再現することとした。
タミヤのエナメル塗料を使用し、ダークイエロー(XF-60)を基本色として、フラットアース(XF-52)、フラットブラン(XF-10)で色合いを調整した。
タイヤはダークイエローの比率を高めに調色した塗料を希薄して塗布し、生乾きの段階で綿棒に溶剤を付けて軽く拭き取る処理を加えた。
荷台の塗装を行う。
三色を混色した塗料を適度に斑をつけて塗装した。
乾燥後に調色のバランスを変えた塗料を乗せる。
汚れを強調する箇所を中心に塗料を乗せている。
仕上げとして再び茶系の色合いを強めた塗料を乗せ、全段階での境界線をぼかしつつバランスを調整する。
仕上げに細部の塗り分けを行う。
パーツを全て組み付けて完成とした。

塗装の退色表現は未だ試行錯誤の段階ではあるが、同一の色をベースに調整を進めることである程度期待通りの結果となることが確認できた。
また、仕上げの処理において改良型の凹凸が多いキャビンに陰影を付ける試みは多少なりとも実現できたと思われる。

キット付属クリアパーツは箇所が限られているが、ランプ類をクリアパーツ化してゆくことにより塗装では不可能な再現が可能である。
民生車をベースとした軍用車はランプ類が多数取り付けられているため、これらを置き換えてゆくことは効果的な改造ポイントであった。