Type73 LightTruck
73式小型トラック

2012.10.30 工作工程
一箱に2両分のキットが含まれているが、1両あたりのパーツの点数はさほど多くはない。
車体は一体成型で作られている。
形状は安定しており、なかなか良くできている。しかし、改造するにはこの一体成型の車体が最大の問題となった。
エンジンルームの改造に着手する。
三菱ジープはウィルスMBと比較してエンジンルームの車高が高く、全体的に面長の印象を受ける形状をしている。
これを再現するため、車体部品からエンジンルーム全面の部分を切り出して作りなおすこととなる。
車体部品から切り出したパーツ。
程度なところで上下に切断する。
隙間をプラ材で埋め、嵩上げを行う。
嵩上げした部位の吸気グリルを再生する。
使用したプラ材が軟質なEverGreen製のものであったことから、この作業はデザインナイフ一本でここまでの加工できる。
前照灯も大型化するため、レンズの基部としてWeveの丸ノズルを埋め込む。
三菱のマークはプラ材を切り出して再現した。
車体後部も延長する必要があるため、背面部品を車体から切り離す。
三菱ジープの後部車輪の上部車体は曲線ではなく直線となっているため、プラ材の積層で再現する。
余剰箇所を切除してヤスリで整形しする。
車体後部の延長箇所も同様にプラ材の積層で再現する。
開口部の枠もプラ材にて再現。
形状が整った段階で切り離した後部パーツを接着する。
シャーシはなかなか繊細に作りをしており、このままでも十分なクオリティを持っている。
車体の延長に合わせてシャーシ側にも延長加工を行う。
車体との組み合わせを確認。
エンジンルームの嵩上げに合わせて操縦席周りも寸法変更を行う。
操縦席周りは別パーツ化されている。
元々はアメリカの車であるため、左ハンドルを前提としていることから、操縦席には大規模な改修が必要となる。
操縦席周りの工作を行った状態。
かなり強引に右ハンドル車に改造した。
エンジンルームの嵩上げを行う。
プラ材の積層を行い、高さを調整する。
ボンネットは曲面があることから、真鍮板を加工して作成した。
適度な寸法に切り出した真鍮板をエンジンルームの形状に合わせて曲げ加工を行った。
フロントガラスはキット付属のクリアパーツを基礎に作成する。
不要なモールドを削り落とし、ヤスリで面出しを行った後にコンパウンドを使用して磨き上げる。
フロントガラスの枠をプラ材で作成する。
塗装時の利便性を考慮して、真鍮線の軸を入れて着脱可能な構造にしておく。
車体側にフロントガラスを差し込める基部を作成する。
フロントガラスを車体に取り付けてバランスの調整を行う。
車体後部はハッチとなっていたため、キットパーツを切除して作りなおした。
フェンダーと乗降ステップを真鍮板から作る。
寸法と構造を理解した上で作図を行う、図面に従い真鍮板を切り出して曲げ加工を行った。
車体との接合は真鍮線の軸を使用する。
軸の強度が必要となるため、ハンダ付けで取り付けている。
車体にフェンダーを合わせた状態。
フェンダーはやや余裕のある寸法で作り、車体とすり合わせながら適合する様に加工してゆく。
細部の工作に入る。
無線アンテナ用ブランケットは真鍮材で作成し、プラ材の基部に接着する構造とした。
後部ライト類はキットのモールド、プラ材、アフターパーツと様々なもので再現した。
携行缶の加工を行う。
キット付属の携行缶部品を元に、缶自体の加工と固定具の新造を行った。
細かい部分ではあるが、このあたりの作りこみが全体の精密感を高めるポイントでもある。
ミラーは真鍮板と真鍮線をハンダ付けして作成した。
座席のシートは民生車両に近い形状をしているためキットパーツでは不適当であった。
このため、特価販売されていたミニカーの部品から座席を徴用することとした。
車体に合わせると寸法が大きすぎることから、削りこんで加工を行う。
後部座席はスクラッチすることとした。
背もたれ部分は真鍮の枠にプラ材を固定して作成する。
座面は切り出したプラ材に薄く加工した鉛板で包む構造とした。
鉛板は製品そのままでは厚すぎるため、金属製の角材とパイプを使用して押しつぶし、薄く引き伸ばす。
背もたれ、座席共に鉛板で包むことで、合皮張りの構造を再現する。
前照灯のガードを作成する。
レンズを取り付けるタイミングとの兼ね合いから、この段階では仮組みとなる。
ミラーとランプの取り付けを行う。
ランプは取付枠のみ接着し、ランプ自体は塗装後に透明プラパーツをはめ込む構造とした。
武装はキット付属の12.7mm重機関銃を加工して搭載する。
近年の自衛隊で使用されている銃身交換を容易にしたQCB(Quick Change Barrel)仕様に合わせた工作と、空薬莢受けを作成した。
ナンバープレートの部品を取り付けて組み立てが完了した。
基本色の塗装は可能だが、ナンバープレートやマークに使用できるデカールが調達できていないため、塗装はこれらが調達できてから行う予定である。


2012.12.18 塗装と仕上げ
塗装に着手する。
フロントガラスをマスキングした上で下地塗装を行った。

金属素材を多様したため下地剤にはマルチプライマーを使用し、サーフェイサーを吹いて下地色の統一を行う。
シャーシ部分の塗装。
セミグロスブラックを吹く。
車体に基本色を塗装する。
Mr.カラーの特色セット「自衛隊戦車色」からOD色を使用した。
73式小型トラックの旧型は長年使われていることもあり、写真で見ることができる車体は退色が目立つものが多い。
このため、原色であるOD色をそのまま使用したのでは実車とは随分と異なる印象を受けてしまう。
Mr.カラーのOD色にタミヤのアクリル塗料のOD色を混ぜ、全体的に緑系の色調を強くした基本色を吹きなおす。
全体に吹くわけではなく、元のOD色を残しつつハイライトとなる箇所を中心に塗装を行った。
フロントガラスのマスキング部に持ち手をつけていたため、OD職の調色前と調色後の色合いが分かる状態となった。
マスキングを剥がす。
一応、期待通りの結果となった。
仮組みを行い、バランスを確認する。
全体的に明るい印象となっているが、後の工程で色調を暗めに調整する。
タミヤのエナメル塗料のフラットブラウンを希薄した塗料を全体に流して色調を調整する。
生乾きの状態で溶剤を染み込ませた綿棒でこすり、部分的に塗料を剥がして色合いのメリハリを付ける。
細部の塗り分けを行う。
ライト類はクリア系の色を使うため、下地色が重要となる。
このため、ファレホの水性塗料からフラットホワイトを下地として筆塗りする。
ライト類はタミヤのエナメル塗料からクリアレッドとクリアオレンジを使用した。
本来はもう少し透明感がある色にしたいところなのだが、素材自体がクリアパーツではないことの限界を感じる。
フロントライト類はプラスチックレンズを使用して再現する。
取付面にシルバーを筆塗りし、少量の瞬間接着剤でレンズを固定した。

フロントライトはガードが付いているため、こちらは別個に塗装した金属線で再現した。
実車では横軸のガードもあるのだが、再現が困難であったことから今回は妥協することとした。
バックミラーの鏡面はハセガワのミラーフィニッシュを使用して再現する。
金属を薄く蒸着させたシールとなっており、適度な寸法に切り出して貼り付けた上で余剰部分を切除する。

フェンダー上のライトは透明のプラスチックランナーを適度な寸法に切り出し、枠に瞬間接着剤で固定した上でクリアオレンジで塗装を行った。
デカールを貼る。
アオシマの3トン半に付属するデカールから所属とナンバーを使用した。
桜のマークはピットロードのオプションデカールから徴用した。

所属・ナンバーともに文字・数字を自由に組み合わせて使用出来る仕組みとなっているが、小さい文字のデカールを均一に貼り付けて行く作業は非常に骨が折れる。
背面のナンバープレートも同様に番号を貼り付ける。
フロントのナンバープレートは一度にまとめて貼ったため、相互に干渉して貼り付け位置がズレてしまったことから、背面のナンバープレートは両端から一文字ずつ貼り付け、貼る度に一晩寝かせて乾燥させた。
比較的均質に貼ることはできたが、とても工数がかかるのが難点であった。
差込式で個別に作成した部品を固定し、完成形にする。
機銃は支持架が短く感じたため、底面を底上げして高さを稼いだ。

塗装と組み立てが終わり、これで完成とする。
軽い気持ちで手をつけたキットなのだが、完成には3ヶ月程かかってしまった。

作り始めて元としたキットとの違いに気がつくことは多いのだが、ウィルスMBの73式小型トラック改造はかなりの難物である。
プラ工作の力量を試される様な作業が多かったが、まだまだ力量不足であることを痛感する工作となった。