Type 99 155 mm self-propelled howitzer
99式自走155mm榴弾砲

2013.08.26   砲塔作成
分冊百科より模型を取り出した状態。
2個購入し、組み立て精度に難がある方を改造のベースに使うこととした。
砲身は写真の角度まで上げることができる。
砲塔は全周回式となるが、90度回すと取り外すことができる。
車体側はネジ止めで固定されている。
ネジを外すことで写真のように三枚卸しにすることができる。 
車体底面はダイキャスト製となるが、転輪部は樹脂製となっている。
底面部を転輪部で挟み込む構造となる。

ネジ止め部は軟質素材のキャップで隠蔽されている。
履帯も軟質樹脂製となっている。
本車はサイドスカートを装備していないため、取り外しは容易である。

履帯はなかなかのもので、特に手を入れる必要が無いレベルの出来である。
砲塔の取手類は軟質樹脂製となっているが、製造精度の限界からかなりオーバースケールとなっている。
これらを取り外した上でエポキシパテで穴埋めを行い、真鍮線に置き換えることとした。
車体前部の牽引ワイヤーの固定用穴も同様にパテ埋めを行う。

パテは飛び出すまでの要領で裏側から充填し、硬化後に余剰部を削り落とす。
砲塔後部のパーツを作り込む。

砲塔後部には給弾車との接続部やバスケットが取り付けられている。
部品を取り外し、1点ずつ作り込みを行う。
取り外す際には差込部の固着が強すぎて取り外せないケースがままあるが、部品自体が破損しない程度で切除して取り外す。
バスケットは角ばった面を丸める加工と、エッチングメッシュを貼りこむ。
実車の構造では、底面はバスケット内部、側面はバスケット側面に取り付ける様になっていた。
下部の雑具箱はフックを金属材に置き換え、接続部に真鍮線の軸を取り付ける加工を行った。
アンテナ基部を作り込む。
比較的軟質な部品で構成されているが、形状は素のまま使える精度を持っている。
この部品は砲塔側の基部とアンテナ基部に切り離し、可動式に加工する。
個々に手を入れ、真鍮線をアンテナとして取り付けた状態。
接着はしていないため、写真の様に折りたたむことが可能である。
砲塔上部のセンサー類を作り込む。
模型の素の状態では写真の様な形状となっている。
元々のパーツを生かしつつ、プラ材、金属材を使って手を入れてゆく。
センサー類は最終的にはフィニッシュシートを使用して再現することを前提に作り込む。
ハッチ類も含めて手を入れてゆく。
全体としては出来が良いため、細かい突起部を作りなおすことが主たる作業となる。
12.7mm機関砲の取り付け基部を作りなおす。
強度や製造の限界から素の状態ではかなりアバウトな作りとなっているが、削りこんでゆくことで写真の様な状態に加工することができた。
機関砲の基部は真鍮パイプとプラ材の複合で作りなおしている。
機関砲も素の状態でもそこそこの精度になっている。
パーティングラインを消し、適度に細部のデティールを追加した。
ハッチの基部はプラ材の丸棒を使用してモールドを追加する。
砲塔の作り込みは以上で完了とした。

2013.09.05   車体と主砲支持架の工作
車体前部の作り込みを行う。
全体の造形は良好であるが、製造上の限界から省略されている箇所を中心に作り直してゆく。
作り直す箇所のモールドを切除する。

主にハッチの取手類を作り直すため、金属線を固定するため0.3mmのピンバイスで開口を行う。
0.3mmの真鍮線を曲げ加工し、開口した箇所に取り付けてゆく。

真鍮線は裏側まで貫通させ、裏側から瞬間接着剤で固定する。
車体側面の偽装網固定用のフック類を作りなおす。

元のモールドは完全にオーバースケールになっているため、これらを全て作り直すことになる。
元のモールドを全て切除すし、.0.2mmのピンバイスで開口する。
強度の関係から、側面のフックは0.2mmの鉄線を使用する。

なかなか手に入らない貴重な部材であるが惜しむと良い結果にはならないことから、妥協無く資材を使用する。
主砲支持架の作り直しを行う。

元のパーツもなかなか良い作りをしているが、可動化と作り込みを行う。
軸を切断し、パーツを分解した上で可動部を金属素材に置き換える。
可動部は真鍮線の軸を通すことで可動式とした。
主砲支持架を倒した状態。
軸の部位は真鍮パイプと真鍮線で伸縮する構造としている。
実車の写真を見るに裏面にはかなり細かい配線がなされている。
車内から固定を解除できる機構を備えているため、これらを制御するためのものと思われるが、模型として再現するにはなかなか手間のかかる部位ではある。
目立つ部位の作り込みは順調に進み、残るは車体下部の前後面に関する作業とな る。

新たな資料が手に入ったことで砲塔上部に作り漏れがあることに気がついたため、こちらも合わせて作業を行う。

2013.09.16   車体下部の工作
車体下部の再組み立てを行う。
この部位は底面のみダイキャスト製となっており、左右の足回りと平面は樹脂部品となっている。

ダイキャスト製の部位を仕上げるには塗装皮膜を剥がす必要があることから、写真の様な状態に分解する。
塗装皮膜を剥がすため、ガイアノーツのレジンウォッシュを使用した。

本来はレジンパーツの剥離剤を落とすための溶剤だが、ダイキャストに厚塗された塗料を剥がす用途にも使用することができる。
ただし、樹脂製のパーツは溶解してしまうため、作業前に樹脂パーツは全て取り外して置く必要がある。
塗装を剥がす面に対して、溶剤をスポイトで垂らしてゆく。
表面張力で垂れない程度まで溶剤を乗せ、しばらくすると塗装面が溶剤を吸い込んで溶剤がなくなるまで待つ。
溶剤を吸い込んだ塗装面は非常に柔らかくなるため、デザインナイフなどの刃物を使用して塗装皮膜を剥がすことができるようになる。

溶剤に漬け込んで剥がすこともできるが、塗装皮膜の混ざった溶剤は使いものにならない上、後始末が大変であることから、 塗装皮膜を剥離させて剥がす方法 が良いと思われる。
塗装を剥がした後、不要な開口部をエポキシパテで埋める。
牽引ワイヤーを取り付けるためのフックを作る。

実車の写真を見ながらフックの取り付け位置にピンバイスで穴を開け、潰して扁平にした真鍮線を差し込んでフックを形成する。
差し込んだ真鍮線はある程度の長さを残しておき、裏側から瞬間接着剤で固定す る。
元々付いている樹脂製の牽引ワイヤーは再利用が厳しいため、素材を駆使して作 り直すこととした。
ステンレス製の縒りワイヤーをベースにプラ材と真鍮線を組み合わせている。
実車の写真を参考にワイヤーを取り付ける。
フックに引っ掛けるだけの構造で再現しているため、塗装時には取り外して個々に処理することができる様にしている。
車体下部の牽引フックは元の形状が良いため、パーティングラインのみ処理を 行って使用することとした。
車体との接合部は取り外し時に破損したため、真鍮線の軸を埋め込んで固定する方式とした。
車体側にも開口し、フックを差し込める構造としている。
前照灯周辺は元の状態を加工する形で作りなおしている。
実車では非常に薄い鋼板で形成されているため、元の形状を削りこんで薄さを強調し、ライト類は実車に合わせて作りなおしている。
塗装後にプラスチックレンズをはめ込んで、ライト部を再現することになる。
砲塔周りで作り忘れていた箇所に手を入れる。
砲身上部の写真が手に入ったため、金属線を使用して再現を試みた。
砲身上部を別の角度から見た写真。
どの部位がどのような機能を持つのかがわからないため、形状のみの再現としている。

2013.09.23   塗装と仕上げ
組み上げてみると、車体と砲塔の隙間が大きいことに気がついた。
これは、このモデル唯一の構造的な課題かもしれない。
砲塔リングの高さが問題であることは明白であるため、デザインナイフで慎重に 高さを削り落してゆく。
概ね削った上でヤスリをかけて面出しを行い、砲塔の回転に不具が起きないように調整する。
加工後の状態。
あまり砲塔と車体の固定位置が近すぎると砲塔回転時に塗料が剥げてしまうため、バランスを見ながら細かい調整を行った。
組み立てが完了し、塗装に入る。
車体側面には第7師団 第7特科連隊 第1大隊 第2中隊のマークが付けられている。
なかなか繊細に再現されているため、これを活かす方法を模索した結果、デカール部のみマスキングを行うこととした。
マスキングテープを貼り付け、マークの形に合わせてテープをカットする。
マスキングテープを剥がした際にマークが剥離してしまうことを防ぐため、事前にクリアを吹いてマークを保護する。

塗装後に筆塗でリタッチしたり、フィルタリングによる色調調整での微調整もできるため、若干の余剰をもたせた状態でテープをカットしている。
下地にはマルチプライマーを使用する。
下地と元の塗装を隠蔽するため、サーフェイサーを全体に吹く。
影となる部位にダークブラウンを吹く。
基本色としてMr.カラー特色セットの陸上自衛隊戦車色から濃緑色 3414を調整せずに素のまま吹く。
色調は後の工程で調整を行うことを前提に、迷彩の調整やリタッチを行い易い様に塗料を素のまま使用する方法を採用している。
次に迷彩として同セットの茶色 3606を吹く。
数両の実車の写真を参考としたが、三面図的な資料は手元にないことから、96-7001号車をベースに数両の迷彩を合わせる形にしている。
陸上自衛隊の迷彩は境界線がハッキリとした迷彩なのだが、エアブラシでの塗装 を行うと境界線がボケてしまう。
境界線のボケを抑えるため、濃緑色 3414を吹き重ねる。
境界線のボケ自体は消すことは難しいが、茶色 3606を吹いた際に緑色の上に飛散した塗料を覆うことが出るため、緑の色調が強くなり境界線が見えやすくなる効果が期待できる。
履帯の塗装を行う。
樹脂製のパーツとなっているが、下地を作らずとも塗料の乗りは良好であった。

塗料はMr.カラーのウェザリングカラーセットに含まれるH-341 マッドを使用した。
塗装の乾燥後、ゴムパッド部の塗料を剥がす。
綿棒に溶剤を含めて拭き取る方式を用いている。
履帯は転輪が触れる部位は汚れが落ちるため、地色が出るように塗料を剥がす。
工具等の細部を塗り分ける。
砲塔前面に取り付けられた予備履帯は、個体により迷彩の有無が異なる。
今回は迷彩が行われていない予備履帯を取り付けられている様に塗り分けを行った。
転輪の塗り分けを行う。
ファレホのNEGRO BLACK 70950を筆塗りしている。
同様にマッドガードと前照灯部も塗り分けを行う。
背面に取り付けられている携行缶は陸上自衛隊戦車色のOD色で塗り分ける。
固定用のバンドはシタデルカラーのDESERT YELLOW(61-83)を使用している。
デカールのマスキングを剥がす。
期待通りの結果となった。
一部が塗装に埋まってしまったため、筆塗りでリタッチして復旧させている。
車体番号等のマーキングを行う。
車台番号と桜マークはフジミの10式戦車、部隊番号はアオシマの3トン半の余り物を使っている。

99式自走155mm榴弾砲の車台番号は「96-7xxx」となっており、10式戦車に付属するデカールを分解して使用した。
部隊マークを活かす形で作成したため、所属部隊は第7特科連隊 第1大隊 第2中隊となる。
実車では白色のみのマーキングであるが、アオシマのデカールは黒枠白抜きのデカールとなってしまい、こればかりはどうにもならなかった。
連隊を省略する漢字のデカールは他には入手できないため、ここは妥協点となる。
色調の調整と墨入れを行う。
エナメル塗料のフラットブランとフラットブラックの混合色を溶剤で希釈した塗料を作成する。
全体に塗布し、半日ほど乾燥させる。
写真は乾燥後の色となるが、色味が濃すぎるため、溶剤を含ませた不織布で塗料 を拭き取り調整を行う。
前照灯にプラスチックレンズを埋め込む。

前照灯は背面にタミヤ ペイントマーカーのシルバーを塗り、その上にWAVEのプラスチックレンズを瞬間接着剤で固定した。
ハザードランプは同レンズにクリアオレンジを塗装し、裏面をシルバーで塗装した上で取り付けている。
背面のハザードランプはファレホのBLANCO WHITE(70951)を塗装した上で、タミヤ アクリルカラーのクリアレッド・クリアオレンジを塗装している。
埃汚れを再現するため、タミヤ エナメルカラーを希釈した塗料を使用する。
使用した色はフラットアースとダークイエローの混合色である。
凹部を中心に塗料を乗せてゆく。
乗せすぎると過剰になるため、バランスを考えながら色を乗せる。
ペリスコープを再現するため、ハセガワの平面用偏光シートのブラウン〜シアン を使用した。

このシートは貼付け面の色により見え方が変わるため、事前に黒色を塗っておく。
シート自体はシール式になっているため、寸法に合わせて切り出して貼り付けるのみである。
砲塔上部のペリスコープとセンサーにも同様の処理を行う。
車体側面とマズルブレーキにすす汚れを付ける。
塗料はMr.カラーのウェザリングカラーセットに含まれるH-343 スートを使用し、ドライブラシの要領で塗装した。
仕上げを行い、完成とした。
完成品として購入したものを分解して再組み立てする工程で作成しており、あまり悩むこともなく1ヶ月足らずで完成させることができた。
これは組みあがり後の形が見えていることと、元の形状が良好であることも一因となる。

デアゴスティーニ社の完成品を元とした作成は2例目となるが、改造箇所が樹脂製の部位に集中することから改造は行い易い構造となっている。
軟質樹脂部も含めて塗装の乗りも良好であることから、分解・改造・組み立ての入門としても良いモデルとあると思われる。