Mitsubishi MU-2S Air Rescue Wing
三菱 MU-2S 航空救難機

2014.08.01   基礎工作
キットのパーツ構成は写真の様な状態となっている。
オークションで入手した中古品であったため、いくつかのパーツはランナーから切り外し済みであったが、目立った破損はないことから、制作には支障はなさそ うである。

尚、このキットは同スケールのウィリス.M.Bが付属していたが、こちらは作らない方針で進める。
付属デカールには経年劣化が認められる。
今回の制作にあたり、プラッツの航空自衛隊50周年の際の機体を再現するデカールを購入しているため、付属デカールは最低限のみ使用することとなる。
手始めに内装から手を付ける。
このキットでは操縦席のみが簡素なパーツ構成で再現されている。
今回は短時間での完成を目指しているため、内装は最低限の工作のみで留めることとした。
肉抜き穴の処理を中心としたパーツの処理を行い、合わせて座席には鉛板から切り出したパーツでシートベルトを再現した。
以前に航空自衛隊の機体向けのシートベルトを再現するアフターパーツを以前に入手していたため、組み立てた後にこちらを使えばよかったと後悔した・・・
組立後には見えなくなるが、操縦桿の類を真鍮線で再現することとした。
適度に切り出した真鍮線をハンダで固定し、T字方のスロットルを作成する。
主要パーツを組み付けた後に塗装を行う。
写真を撮り忘れたが、サーフェイサーを吹いた後に全体につや消しの黒を吹き、座席やカーペット、シートベルトの塗り分けを行う。
塗装の乾燥後、操縦パネルのデカールを張るが、寸法が合わなかったため、デカールを3分割に切断し、パーツの位置に合わせて貼る必要があった。
デカール乾燥後、操縦桿を接着して完成とした。
機体を貼り合わせる前に機体側面の窓を取り付ける。
古いキットであるため、クリアパーツの成形精度はあまり高くないことから、形を調整しながら接着する必要があった。
後の工程でクリアパーツが傷つくことを防ぐため、マスキングテープを貼り付ける。
通常の窓への貼付けは難しくはないが、捜索用の観測窓は曲面であるため工夫が必要となる。
機体を貼り合わせる。
機首に重りを入れ、操縦席は内部に接着した上で機体を貼りあわせ、マスキングテープで固定した。
古いキットではあるが機体パーツ自体の合いは良好で、妙なズレなどは発生しなかった。
しかし、内装の固定ガイドは狂っており、ガイドに沿って固定したところ操縦パネルと機体パーツにずれが生じてしまった。
翼類を組み立てて取り付ける。
主翼は幾つかのパーツに分かれているが、尾翼は1パーツとして成形されてる。
仮組みでも形状を保持できる構造になっていたため、翼の着脱を繰り返しつつ、形状を調整することとなる。
プロペラは組み立て・塗装の利便性も兼ねて可動化することとした。
エンジン部内にポリキャップを仕込むことを前提に、キットパーツの軸にプラ材を足して太さの調整と補強を行った。
エンジン内には3mm棒用のポリキャップを仕込む。
適度な寸法に加工した上で、パーツ内にエポキシパテと共に封入して固定する。
主翼を組み立てた状態。
エンジンと翼の合いがあまり良くはないため、エンジンの中心軸を考慮しながら擦り合わせが必要となる。
尾翼は一枚のパーツで構成されている。
翼パーツはほぼ全て凸モールドであることから、デザインナイフでモールドの彫り直しを行った。
機体を仮組みした状態。
全体のバランスは悪くはないため、大幅な修正は不要であると思われる。
この後、パーティングラインの処理と細部の作り込みを進めてゆく。
機体の凸モールドも全てデザインナイフで彫り直した。
小柄な機体であるため、この作業はさほど苦労はしなかった。
機体のパーティングラインを処理する。
航空機は機体の中心線に沿ってアンテナや警告灯が取り付けられているため、これらを破損させない様に気をつけつつ作業を進める。
パーツの合いの悪さから窪みが出来た箇所は、溶きパテを使用して穴埋めをしている。
操縦席の風防を取り付ける。
こちらもややパーツの合いが悪いことから擦り合わせをしつつ位置を調整し、マスキングテープで固定してから流し込み式の接着剤で固定した。
凹凸の確認と処理が甘い箇所の洗い出しを目的として、全体にサーフェイサーを吹く。
この後、再度凸モールドの処理とパーティングラインの処理を続け、細部のパーツを取り付けて行く。

2014.08.26   細部工作
機体の細部の作り込みを進める。
MU-2Sとされる機体の写真を見ていると、操縦席上部のアンテナの形状が2パターンあることが分かる。

元のキットはおそらくMU-2Eの模型化であると思われ、MU-2S・MU-2J・LR-1に見られる鶏冠状のアンテナはパーツ化されていない。
このため、MU-2Jのキットを参考に厚みがある真鍮板からの削りだしでアンテナを再現する。
操縦席下部のアンテナはパーツ化されていますが、製造技術の限界から大味な作りとなっている。
再現精度を上げるため、キットパーツは基部のみ使用してアンテナ部は金属線に置き換えた。
垂直尾翼から操縦席上部まで伸びるアンテナを再現するため、真鍮線を加工した取付部を作成する。

アンテナ基部となる部位は操縦席上部、機体後部、垂直尾翼の三点となり、これらの箇所に0.3mm真鍮線の先端を潰して0.2mmの穴を開けた部品を取り 付けてゆく。
機体側に穴を開け、瞬間接着剤を付けた基部パーツを取り付けてゆく。
尾翼のパーツは一体成型となっているが、パーツは肉厚があることから開口して部品を取り付けることが出来た。
塗装後、この基部を使用してアンテナを再現することとなる。
機体側面のハッチ類のハンドルも真鍮線で作成した部品に置き換えてゆく。
主脚のカバーはキットのパーツをそのまま使用する。
前脚のカバーは着陸時は一部のみが開くため、キットのパーツを切り離して使用する。
前輪のカバーは後付出来るように真鍮線の軸を入れる。
後輪のカバーも同様の処置を行う。
塗装と組み立ての利便性を考慮した措置として、主脚類は着脱できる構造とする。
前輪は各パーツに真鍮線の軸を入れて仮組みする。
後輪は機体への接合部を金属材に置き換えた。
前輪を仮組みした状態。
前輪周辺を構成するパーツは個々に塗装した後に接着することとなる。
後輪は主脚とカバーの擦り合わせを行う必要があるが、これも塗装完了後の工程とした。
MU-2Sでは垂直尾翼の側面にはアンテナが増設されている。
この部位はパーツ化されていないため、真鍮板を加工して接着している。
組み立てが完了し、塗装の工程に入る。

2014.08.28   基本塗装
下地と基本塗装を進めます。

金属素材を使用した箇所が少なかったことからマルチプライマーは使用せず、金属部はメタルプライマーを筆塗りするのみに留めている。
下地はMr.サーフェイサー 1200を使用した。
次いで、基本塗装として「62 つや消しホワイト」を全体に吹く。
戦車などの地上装備の場合には濃い色を下地に薄い色を重ねる塗装を行うが、航空機のような白色の箇所が多い装備の場合は薄い色から重ねる必要がある。
これは、薄い色は隠蔽力が弱いことから下地色に影響されて色合いが変わることに起因している。
次いで機体各所の塗り分けを進めてゆく。
マスキングテープを塗り分けラインに沿って貼り付け、塗装の準備を行う。
機体下部は「329 イエローFS13538」、尾翼先端は「59 オレンジ」、機首と主翼付け根は「309 グリーンFS34079」を使用してる。
凹凸のある箇所を中心にマスキングが甘かった場所で塗装のはみ出しが発生しま した。
どれだけ慎重にマスキングをしてもこの様な失敗は発生してしまうため、まだまだ経験不足であることを痛感する。、
機体先端の燃料タンクと尾翼の付け根も同様の問題が発生したが、こちらはそも そもマスキングテープでは保護しきれない構造であったことに起因する。
この様な箇所へのマスキング方法は今後も研究をする必要がある。
塗装のはみ出しが発生した場所に対して、再度塗装を行う。
数日乾燥させて塗料が定着した後に再びマスキングテープを貼って塗装する準備を進める。
つや消しホワイトを吹き直して塗装のはみ出しを隠した状態。
思いの外つや消しホワイトの隠蔽力が強く、軽く吹いただけではみ出しを隠すことができた。
主翼先端の燃料タンクは内側と外側で色が異なる。
こちらもマスキングを行った上で塗装の重ねている。エアブラシを使用した塗装は予想以上に周囲に塗料が飛散するため、パーツの非対象面は不織布で覆うこと で保護している。
エアブラシ塗装ではカバーできない箇所は筆塗りで対処する。
ファレホのつや消しホワイトの筆塗りで慎重に塗料を乗せてゆく。
塗り分けが概ね完了した状態。
今後、マーキングを含めた仕上げ作業を進めてゆく。

2014.08.31   仕上げ
デカールを貼って行く。
今回はキット付属のデカールは使用せず、プラッツが販売している50周年記念機を再現するためのデカール(NBM21 JASDF MU-2S 50TH ANNIVERSARY)を使用する。

機体側面のプロペラ位置を示すマークだけでも、このデカールの品質が分かる。
細かい文字の繊細さ、ラインの美しさ、白抜き文字の正確な再現など、大変良好な出来栄えである。
主翼のマーキングは大判のデカール一枚で再現されている。
ここまで大きなデカールを貼った経験がなかったことから、貼付け面にマークセッターを十分に塗布した上で台紙から素早くデカールを移して固定した。
乾燥までの時間が短いことから位置調整をできるタイミングが限られるため、素早く位置を合わせてシワを伸ばす作業が必要となった。

プロペラの細部もデカールのみで再現することが出来る。
先端の赤白の塗り分けは、前面・背面にデカールを貼り合わせる形で再現される仕組みとなっている。ただし、デカールだけでは接合面などに問題が起きるため、乾燥後に余分なノリシロを切除し、デカールの隙間は水性塗料で埋める工程が必要となった。
主脚のカバーにもデカールを貼る。
垂直尾翼には機体番号と救難隊のマークの他、尾翼の黒色の部位もデカールで再現している。
機首には航空自衛隊の文字と機体番号が付く。
ウェザリング処理に入る前にデカールを保護するため、全体につや消しクリアを吹き付ける。
風防のマスキングを剥がす。
塗料が吹き込んでいた箇所があったが、紙ヤスリで塗料を剥がした後、コンパウンドを付けた綿棒で研磨して透明度を復活させている。
操縦席の風防にあるワイパーは一体成型のまま塗り分けを行ったが、再現度合いからして切除して作りなおした方が正解であると思われる。
機体上部のアンテナを取り付ける。
製作工程にて掲載した真鍮線の軸に対して、0.1mm未満の金属線を張る作業となる。

使用した部材はモデルカステンのメタルリギング 0.1号を使用した。
これは本来は艦艇モデルなどに使用する直径0.06mmの超極細の金属線である。
軸の0.3mmの穴に金属線を通し、結ぶことで固定して行く。
部材の特性から接着剤を用いた固定は不向きであることから、実機のアンテナの貼り方を参考に金属線を張り、固結びで固定する。
主脚は塗り分けを行った後、深い凹部に対しては希薄したエナメル塗料を流し込み墨入れを行う。
エナメル溶剤はプラを劣化させて強度を下げるため、細い部位には溶剤が付かないにように注意して作業を進める。
機首下部には投光器が設けられているため、下地としてシルバーの塗装を行う。
ウェザリングが済んだ後、プラスチックレンズをはめ込む。
水平尾翼や機体の凹部に対して墨入れを行う。
コピックマーカーのW5 Warm Grayを使用し、適度に塗料をのせた上でカラーレスブレンダーを使用して余剰な塗料の洗い流しと凹部への塗料の集中を行う。

また、航空機に見られる空気の流れに合わせた薄汚れの再現も同時に行ってゆく。
主翼は裏側を中心に墨入れを進めて行く。
コピックマーカーのアルコール系溶剤は水性塗料を溶かす性質があるため、ファレホの水性塗料で塗装した箇所に塗り重ねてはいけない。
このため、ウェザリング前にはコピックマーカーの溶剤に侵食されない、ラッカー系のクリアを吹いておく必要がある。
プロペラのスピナーは、実機ではやや光沢がある色合いをしていたため、アクリル系のクリアレッドを筆塗りして光沢を回復させた。
機体の凹部を中心に塗料を乗せ、ぼかす処理を繰り返して行く。
実機の写真を参照すると、機体の汚れは凹部を中心に付く傾向が見て取れることから、写真を参考に汚れを乗せる。
警告灯をクリアパーツを元に作成する。
WAVEのクリアレンズを元にヤスリで形を整える。
表面にはアクリル塗料のクリアレッド、裏面にはシルバーを塗布して色合いを引き出す。
機体下部に瞬間接着剤で固定する。
機体末端も警告灯と思しき箇所が認められることから、こちらもクリアパーツを使用した再現を試みた。
操縦席側面のピトー管は塗装時に破損してしまったため、金属材を組み合わせて修復した。
塗装作業は苦手であることから、このような箇所は破損させてしまうことが多く、あらかじめ金属材に差し替えておいた方が正解であったかと思われる。
以上で仕上げ処理を終了し、完成とした。

白色の面が大きい機体は表面処理が完成精度を大きく左右するが、塗装ミスを始めとして数々の失敗の結果として残念な仕上がりとなってしまった。
航空機に対するウェザリング手法は回転翼機を中心に様々な手法を試してきたが、今回使用したコピックマーカーを使用した方法が手軽かつ効果的な手法であるとの結論を持った。

今回の作成では多々反省点はあるため、今後の作成ではこれらの課題を解決できるようにして行くこととなる。