AH-1S Cobra Attack Helicopter
AH-1S 攻撃ヘリコプター"コブラ"

2013.05.04   基礎工作
機体を構成する主要パーツは写真のような構成となる。
貼り合わせ式となっていることから、合わせ目を消す作業は苦労しそうである。
細部のパーツは写真の様な構成となる。
武装は機首のチェーンガン、TOW対戦車ミサイルとロケット弾2種となっている。
機体のモールドはあっさり目であるため、適度に手を入れてゆく。
エンジンの排気部のカバーはメッシュ構造となっていることから、エッチングのメッシュを貼りこんで再現する。
エンジン排気口のカバーも同様の工作を施す。
機体は張り合わせ構造をしていることから、まずは後嵌め加工が不可能なコックピットを作成する。
コックピットのパーツは基部、座席、操縦桿類で構成されている。
キットのパーツでは再現されていない配線類を追加し、工作密度を上げてゆく。
この時点では内装がはっきりと分かる資料がなかったことから、分かる範囲でパーツを追加した。
座席のシートベルトは鉛板を薄く伸ばした材料で作り直している。
座席全体をつや消しの黒で塗装する。
複数の素材を使用していることから、下地の形成も含めた通常の塗装工程を踏んでいる。
機体の裏側も同様の塗装を行う。
塗料のはみ出しを防ぎたい箇所はマスキングを行った上で塗装している。
コックピットの細部を塗り分け、機体のパーツに固定する。
機体の合わせ目を消す作業を行う。
細かい段差や凹凸があることから、入念に紙ヤスリをかけて段差を無くし、この工程で消えた凹モールドは目立てヤスリで再生させる。
機体下部も同様の仕上げを行う。
アンテナ類の突起があることから、最初はこれらを避けて作業をおこなった。
しかし、どのように回避しても部品の破損と中途半端な合わせ目が残ることから、思い切ってパーツを切り離し、面を整えてから再接着する方法に切り替えた。
ローター部分は最も加工が難し箇所であった。
ローター基部は嵌め込み工作が必要となるため、破損を気をつけながら接合面を整えることとなるが、結果的にシャフトの一本が破損してしまった。
破損したシャフトは脱落部品を接着しただけでは強度が足りないことから、真鍮線にて作りなおすこととした。
コックピットの風防を作成する。
風防には登場時の開閉部にハンドルが付いていることから、これを真鍮線から削りだした部品で再現した。
当初は裏側の塗装は想定していなかったが、追加した部品の色が浮いてしまうことから、マスキングが可能な箇所のみ筆塗りの塗装を施すこととした。
前席の射撃手は機体正面の右側、操縦手は左側から搭乗する構造となっている。
このため、風防に取り付けられるハンドルの位置は左右で異なる。
同じく搭乗時の足場が機体の左右に設けられている。
キットでは突起が設けられていたが、再現度合いが物足りないことから金属材で作りなおした。
足場も機体の左右で設けられている位置が異なっている。
元のキットにより取り付け位置は判明しているため、所定位置にパーツを植えこむ要領で取り付けている。
風防上部にはワイヤーカッターを取り付ける穴が設けられている。
自衛隊が配備している機体の内、夜間戦闘能力を向上の改修を施したモデル(C-NITE)ではワイヤーカッターが取り付けられているが、この改修が施され ていない機体では取り付けられていない。
今回は改修前のモデルを作成しているため、不要な穴は埋める必要があった。
風防を機体に接着した状態。
後の作業工程でクリアパーツが傷つかないように、マスキングテープを貼って保護する。

2013.05.22   自衛隊仕様への改修
Hobby Bossのキットの課題点として、まずはコックピット前部の形状が挙げられる。
写真はキットを素の状態で組み上げたものだが、全体的に角張っており、実機に見られる流線型の形状とは程遠いモノがある。
また、自衛隊のAH-1Sには見られないセンサーらしき部位が形成されており、自衛隊仕様とする場合には切除することとなる。
ヤスリにて削りこみを行い、先端を流線型に近づける工作を行う。
自衛隊仕様のAH-1Sでは、エンジンの吸気口にカバーが設けられている。
これは、ロケット弾を一斉発射した際に、発射炎の燃焼によりエンジン吸気口周辺の酸素濃度が低下し、これに伴いエンジン出力が低下する問題を回避するため に設けられている。
全機が装備しているわけではないらしいが、現在見かける機体にはほぼ全て同様の改修が施されているようである。

Hobby Bossのキットにはカバーのパーツは含まれておらず、これを再現できるのはハセガワのAH-1Sのキットのみとなる。
写真はハセガワのキットに含まれるカバーのパーツである。
悩んだ末、型思いを使用して複製を作り、Hobby Bossのキットに取り付ける方法を選んだ。

最近はあまり使用していないが、「型思い」は片面複製用の樹脂製の型とり部材で、熱湯に漬けることで柔らかくなり、常温でゴム状に固まる性質をもってい る。
写真は型思いでハセガワのキットパーツの型を取った状態である。
硬化後、型を原型から取り外す。
硬化するといっても、簡単に曲げることが出来る程度のものであるため、原型から取り外すことは簡単にできる。
作成した型にエポキシパテを充填し、生乾きの状態で型から取り外した状態。
通常はポリパテを使用する事例が多いのだが、エポキシパテでも同様に扱うことができる。

エポキシパテが生乾きの状態で取り外すことで、バリの除去がやりやすくなる。

左の複製品はかなりきれいに作れたが、右の複製品は型取り時に気泡が入ったのか、表面に凹凸が出てしまった。
凹部が多い右側はモールドを犠牲に瞬間接着剤を使用して凹部を埋める対処を行う。

複製品が完全に硬化した後、モールドを切除して面出しを行い、凹部に瞬間接着剤を乗せてゆく。
瞬間接着剤の硬化後、ヤスリで余剰部を削り落として面出しを行う。
切除したモールドはプラ材で再度作成する。
機体への取り付けは、エポキシパテを使用した。

型思いは原則として片面複製しかできないため、キットとの接合部はどうしても綺麗に成形することができない。
このため、キットと複製品の隙間を埋める意味もあり、細く伸ばしたエポキシパテをキット上の所定位置に乗せ、複製品を押し付けて固定する。
隙間に押し込んだパテが生乾きの段階で形状の調整と余剰部の除去を行う。
両面共に同様の処理を施し、キットに固着させる。
実機に見られるカバー側面の突起は真鍮板を使用して再現した。
機首下部のチェーンガン周りを作り込む。
キットの状態では基部とチェーンガン接合部のガード構造が全く再現されておらず、かなり残念な状態になっている。
基部を作成するため、WAVEのアフターパーツより丸ノズルを使用した。
くり貫いて形状を整えたパーツをキット側に固定する。
チェーンガンの基部と合わせた状態。
基部の周辺をパテで固め、機体との擦り合わせを行う。
チェーンガンを作り込む。
キットの砲身は1パーツ構成で精密感の欠片もないため、真鍮パイプで作り直しを行う。
真鍮パイプ三本を束ねて接合パーツを介してハンダで固定しており、基部とは真鍮線の軸を使用して固定する形式とした。
TSUモジュールのディテールアップを行う。
カメラ部は後の工程で専用の反射シートを使用して再現することとした。
機首周辺に細々と手を入れ、部品を組み付けた状態。
塗装時には取り外す部位は接着は行わない。
脚部の先端はワイヤーを通すと思しき円形のパーツが取り付けられている。
こちらも真鍮パイプを使用して再現を行う。
Hobby Bossのキットは全体的にモールドが薄めで、立体感に乏しい雰囲気がある。
少しでも改善するため、機体各所に設けられたハッチ類を真鍮板で作り直す。
機体の尾部にも同様にモールドを追加する。
塗装段階で取り付けるパーツ類を全て付け、組み立ては一応完了とした。

今後、機体の迷彩を行い、その後に更に組立工程が必要となる。

2013.06.11   塗装と仕上げ
塗装から仕上げまでの工程を一気に行った。
手始めに下地剤としてマルチプライマーを吹く。
サーフェイサーを吹く前にキャノピーの枠につや消しブラックを筆塗りする。
全体にサーフェイサーを吹き、下地色の統一と細かい傷の隠蔽を行う。
基本色はMr.カラー特色セットの陸上自衛隊セットに含まれる茶色を使用する。
迷彩を施すためのマスキングを行う。
キットに付属する塗装説明のインストをスキャナで取り込み、1/72相当に引き伸ばして印刷する。
印刷した上に透明のプラ板を重ねてマスキングテープを張り、迷彩の形状をマスキングテープに書き写す。

プラ板から剥がしたマスキングテープを作業用のタイルの上に張り、デザインナイフでテープの上に書いた形状に沿って切り抜く。
切り抜いたマスキングテープを貼りこんだ状態。
平面が多い機体であったため、手数はかかるが難易度は低い作業であった。
迷彩の文様に沿ったマスキングテープを貼った後、突起部を中心に適度な寸法に切り出したマスキングテープを貼り付ける。
陸上自衛隊セットに含まれる緑色の塗料を全体に吹く。
マスキングを剥がした際に塗料が剥離しないよう、できるだけ塗装皮膜は薄く吹いておく。
迷彩のマスキングを剥がした状態。
境界線がはっきりとした迷彩が施される。
キャノピーのマスキングを剥がした所、内側に謎の白い粒が多数付いていることを発見した。
おそらくは、機首部分に重りを入れた際の瞬間接着剤の蒸発物質が張り付いたものと思われるが、外部からは手の施しようがなかったため、キャノピーを取り外して裏側をコンパウンドで磨くこととした。
キャノピーを取り外し、裏面に付着した汚れはコンパウンドを含ませた綿棒でこすり落とした。
清掃完了後に再接着したのだが、接合面にはどうしても隙間ができてしまったことから、溶きパテを使用して隙間を埋める。
パテの硬化後、余剰部分を削り落としてヤスリをかけ、サーフェイサーを塗布して面の乱れや傷の有無を確認する。
キャノピー部を再度マスキングし、迷彩を吹き直した。
インストを参考に黒色の文様を筆で書き入れてゆく。
隠蔽力の強いファレホの水性カラーを使用し、塗装の皮膜が厚くなり過ぎないように注意しながら色を乗せてゆく。
凹モールドに墨入れを行う。
つや消しブラックとブラウンの混合色を流したが、思っrたほど目立たなかった。
迷彩の色調調整と墨入れのため、油絵具をペトロールで解いて全体に塗布する。
溶剤とプラの相性はあまり良くはなく、接合面の弱いパーツが一部脱落する問題が発生した。
使用した色はバートンアンバーで、迷彩の色合いを落ち付けるには良好な結果を得ることができた。
墨入れの効果も十分であり、溝部に適度に塗料が残っている。
クリアパーツの取り付けを行う。
チェーンガンの奥に設置されたライトをプラ製のレンズで再現する。
プロペラ付近の警告灯もクリアパーツを使用する。
接着前にアクリル塗料のクリアレッドを塗布し、接合面はシルバーで塗装している。
機体後部の警告灯もプラ製レンズを使用した。
最小のレンズでも寸法が合わなかったため、1/3程度切除してから接着している。
メインローターを取り付ける。
ローターを支持するパーツが制作途上で脱落したが、ローター取り付け時に再生させた。
エンジン排気口のカバーを塗装する。
実機では特殊な構造をしたカバーをつけているが、本キットでは再現できていないことから、せめて塗装で多少なりとも雰囲気の再現を試みた。
煤色の下地の上に焼鉄色を塗布し、その上にコピックマーカーのE18 Copperを塗る。
仕上げに再度煤色をドライブラシで乗せてゆく。
機首のTSUのカメラ部はハセガワの偏光フィニッシュのシートを使用した。
デカールを貼ってゆく。
基本的なマーク類はキット付属のデカールを使用したが、機体番号は童友社のキットに含まれるデカールを使用している。
機体側面の「陸上自衛隊」の文字は、付属デカールでは寸法が合わないため、アオシマの3トン半のキットに含まれるデカールから調達したものに置き換えた。
デカールの糊の性質か通常よりも白化した箇所が目立ってしまったため、デカール部にはつや消しクリアを吹いて調整を行った。
武装類の仕上げを行う。
TOW対戦車誘導弾はラックへの取り付け部を塗装後に付けるため、先行して誘導弾とラックの塗り分けを行った。
ハイドラロケットはキットを素組すると形状が悪いため、プラ材で溝部を補正している。
TOW対戦車誘導弾の固定用パーツは真鍮材をベースに作成し、組立と塗装を行う。
機体に取り付けた状態。
武装類も墨入れと色調合わせのため、バートンアンバーを軽く塗布する。
いくつか手付かずの箇所は残るものの、これで完成とした。
初の回転翼機の模型製作であったため、失敗した箇所も多々あり、組み立て方や塗装方法については研究の余地が多分にある。 特に塗装と組立の順番は車両系とは異なる考え方が必要であり、これは制作を進めながら理解してゆく必要があると思われる。