OH-6DA Training Plane (MD 500E)
OH-6DA 初等操縦練習機 (MD 500E)

2013.11.13   内装組み立て
キットは写真の様な構成となる。
機体はクリアパーツで整形されており、この部位のみ機種により差し替えることでバリエーション展開をしていると思われる。
パーツの精度は可もなく不可もなくと言った感じだが、薄いパーツの成形精度と較べて曲面の成形はあまりうまく行っていないように感じられた。また、表面の 成形状況から原型は3Dプリンタにて製造しているのではないかと推察される
付属のデカールはなかなか充実している。
プリントの品質は良好だが、水貼りデカールとしての品質は貼ってみるまで分からない。
自衛隊向けのデカールは1機分のみ付属している。
アルファベット圏の海外メーカー製モデルに付属する漢字のデカールは残念な感じのものが多いが、このキットに付属するデカールは許容できるレベルの品質で あった。
バリエーション展開用として、スキッドのパーツは二種類付属していた。
自衛隊機では脚が短い方(写真では上)のパーツを使用することとなる。
テイルローターは2枚羽と4枚羽のどちらも再現できるようにパーツが付属していた。
自衛隊機は2枚羽となるため、片方のみを使用することとなる。
クリアパーツは機体と扉で構成されている。
扉パーツが分割されていることから、扉を外した機体を再現するには適したキットといえる。

尚、イタレリ(タミヤ)のキットでは片面のみ扉がパーツ化されており、AZ-Modelsのキットでは扉と機体は一体成型となっていた。
内装のパーツは成形状態は良いのだが、パーツの合いはかなりダメな状態であった。
色々とやりくりした結果、パーツの合いが悪い部分はプラ材で代替させてどうにか形にしている。
座席や操縦桿はそこそこの精度であるため、この辺りは素の状態でも一応は形になる。
今回は塗装をしながら組み立ててゆくため、一応形状が定まった段階でサーフェイサーを吹いてみた。
成型色が実物感を損ねていたため、色を変えてみると随分と印象が変わる様に感じられる。
ついで、クリアパーツ部も先に塗装を行う。
透明である部位にはマスキングテープを貼ってゆくが、風防の形状が複雑であることからなかなか苦労した。

尚、透明パーツなので外側のみの塗装とするかを悩んだが、風防が大きいことから内装が丸見えとなり、機体内部にも彫刻やプラの厚み分の透明度が視認できる ことから、裏表用面に塗装を行うこととした。
つや消し白を吹いた状態。
透明の状態では見えにくかった機体の凹モールドがハッキリと分かるようになった。
組み立て時の調整を考えても、まずは塗装してしまう方法が正解の様に思える。
機体に扉のパーツを取り付ける。
この部位のパーツの合いはかなり悪く、扉側を徐々に削って寸法合わせを行うこととなった。

パーツの合いが改善された段階でマスキングテープでパーツを固定し、裏面より流し込み式の接着剤で固定している。
この際に接着剤が多すぎると透明に維持したい部分にも流れこんでしまうため、注意が必要となる。
その様な事態に陥った場合、接着剤で溶けた部位をデザインナイフで軽く削り、紙やすりで表面を整えた上でコンパウンドを付けた綿棒で研磨することで透明度 を復活させることができる。
機体のパーツを仮組みしてみる。
パーツの合い自体は良好なため、バリを適切に除去しておけば隙間なく合わせることができる。

風防周辺の合わせ目の処理と、風防下部に位置するライトなどを如何に再現するかということが課題となりそうだ。
内装にも軽く手を入れる。
定番ではあるが、薄く伸ばした鉛板でシートベルトを再現した。
操縦席と操縦桿周辺は黒一色なのだが、いざ塗ってみたら何がなんだか分からなくなってしまったため、座席は濃い目のグレーで塗り直してみた。
操縦パネルの裏側は無数の配線が露出する構造となっているため、金属線を使用して再現を試みた。
内装の汚れを再現するため、エナメルのつや消し黒を薄く解いて塗布する。
プラ材が侵食される心配であるため、あまり過度の流し込みは危険である。
機体の裏側にも同様にエナメル塗料を流し込む。
後部座席の扉には凹凸が彫刻されているため、これらを活かすためには軽くでも塗料を流したほうが良い。
機体を貼り合わせる前に、スキッドの取り付け位置を確定する。
スキッドには全重量がかかるため、普通に接着しても強度が確保できない。
このため、スキッドと機体の接合部には真鍮線の軸を入れ、強度を確保する必要がある。
まず、スキッド側に0.3mmの穴を開け、真鍮線を固定する。
真鍮線の軸は短めに切り詰め、機体側と接合位置をすり合わせる。この際に真鍮線の軸で機体側に開口位置のマーキングを行い、ピンバイスにて開口する。

2013.11.23   組み立て
機体内に内装を取り付ける。
パーツの合いはあまり良くないため、適合するように形状の調整を行ったうえで接着する。

OH-6は機体後部に重心が寄っており、バランスが取りにくいことから機体内部に重りを入れる必要がある。
内装の床下には空間があることから、この部位に鉛板を入れて重心の調整を行う。
機体を張り合わせる。
接着前には入念に擦り合わせを行い、スチロール樹脂用接着剤による仮止めをい行った後、マスキングテープで接着位置を固定して流し込み式接着剤で再度接着 を行った。
パーツの合いの悪さから、風防上部に隙間が出来てしまった。
この部位は修正する必要がある。
機体を張り合わせると凸状となることから、こちらも調整が必要となる。
機体上部の凸状となった箇所はヤスリで調整を行う。
テイル・ブームのパーツを組み立てる。
このパーツの曲面の再現度合いが悪いが、修正するには非常に手間がかかるため今回は素組みとした。
機体とテイル・ブームを張り合わせる。
こちらも機体の貼り合わせと同様の手法にて接着する。
メインローターの組み立て。
パーツの合いは良いため、バリ等の下処理を行ったパーツを素組みする。
ローター基部の構造には若干の手を入れた。
実機の基部は蛇腹状のカバーで覆われているため、これを再現する。
機体張り合わせ時に出来た隙間はプラ材にて穴埋めする。
内装が白色系の色であるため再塗装は不要であったが、内装に特定の色が使用されていた場合には再塗装で悩むことになったと思われる。
風防前面の工作を行う。
各種センサーやアンテナ類が装備されているが、キットでは完全に省略されている。
クリアパーツ部は薄い上に加工には向かないことから、プラ材を貼り工作を行う。
機体下部のアンテナ類を取り付ける。
プラ材では強度を確保できないことから、素材には真鍮板を使用し、機体側に凹部を設けて固定する。
垂直・水平安定板を組み付ける。

水平安定板はキットパーツのみではパーツの薄さを再現できていないことから、キットパーツを採寸して切り出した真鍮板に置き換えている。
テイル・ブームとの接合は普通の接着では強度が維持できないため、真鍮線の軸を設けて差し込み式とした。
テイル・ローターも軸には真鍮線を入れ、後から差し込むことが可能な方式とし た。
テイル・ブーム先端のローター接合部のキット付属パーツは大味な作りであった ため、プラ材を使用して作り直す。
テイル・ブーム先端を組み立てた状態。
ローターは後の工程で塗り分けが必要となるため、この段階で接着はしない。
エンジン排気口のパーツはアフターパーツに置き換える。
WAVEの丸ノズルのセット内にて適当な部品が含まれていたため、加工して使用することとした。
ハッチの取っ手は基部のみ成型されており、取っ手事態は省略されている。
真鍮線を加工して取っ手を作成し、基部に取り付けて再現する。
組み立ては完了し、次は塗装を行う。

2013.11.27   塗装と仕上げ
塗装と仕上げを行う。
風防には入念なマスキングを行い、下地剤としてマルチプライマーを吹く、
透明パーツの透過を防ぎ、下地色を統一するため、全体にサーフェイサーを吹 く。
機体の基本色が白色であることから、下地色が異なると色味が変わってしまうため、サーフェイサーによる下地色の均質化は重要な工程である。
基本色としてつや消しの白色を全体に吹く。
今回はエアブラシを使用して数色の塗り分けを行うことになるが、この様な場合にはどのような順番で吹いて行くかが重要となる。
模型用塗料は全般的に隠蔽力が弱く下地色の影響を受けやすいことから、明るい色から順に吹いてゆくことにより塗料本来の色調を損ねずに色を重ねることがで きる。
一部の機体ではメインローターのローターブレードの根本は白い塗り分けが行わ れている。
この機体はキットに付属するデカールの都合により211-8782号機となることから、ローターブレードの塗り分けが必要となる。
機体と同様につや消しの白色を吹いた後、色を残す部位のマスキングを行った。
次にテイル・ブームと水平・垂直安定板の橙色の塗装を行う。
テイル・ブームにマスキングテープを貼り、塗装箇所の位置決めを行う。
塗装箇所を残して機体はテッシュペーパーで覆い、塗装時の飛沫から保護する。
橙色を吹いた状態。
本来の塗料はつや有りのものであるため、スーパークリア(つや消し)を混ぜて使用した。
メインローターのブレード先端にも橙色を吹く。
橙色を残す部位にマスキングを行った後、セミグロスブラックを吹く。
マスキングを剥がした状態。
概ね期待通りの塗装結果となったが、マスキングテープの貼付けが甘かった箇所については筆でリタッチして対処を行う。
デカールを貼る。
キット付属のデカールは必要なものは概ね揃っているが、漢字の品質がさほど高くはなかった。
PROFILINEと同様にチェコのメーカーであるAZ Modelsのデカールの方が品質面では良好であったため、OH-6Jに付属して余剰となる海上自衛隊のデカールも合わせて使用することとした。
付属デカールの品質は良好で、マークセッターを使用しつつ、特に苦労すること無く貼ることができた。

デカールを貼る箇所は、メインローターの覆いに機体番号、テイル・ブームの付け根に日章旗、エンジン排気部とテイルローターのコーテーションマークとなる。

「海上自衛隊」の文字とコーテーションマークはAZ-Modelsのデカール、残りはキット付属のものを使用した。
機体下部にも日章旗と所属のデカールを貼る。
「海上自衛隊」の文字は数が足りなかったため、キット付属のデカールを使用している。

デカールを貼った後、一晩乾燥させた後につや消しのスーパークリアを吹いてデカール面のテカリを抑制した。
ライト・警告灯はクリアパーツを使用して再現する。
赤色の警告灯はアクリル塗料のクリアレッドを塗布して再現する。
警告灯を強調するため、プラスチックレンズの接着面にシルバーを塗る。
接着は部品が浸食される心配のない瞬間接着剤を使用した。
テイルローターの塗り分けを行う。
キットにはこの部位に貼るデカールが用意されていたが、両面を正確に再現できそうには無かったことから、マスキング+筆塗りで再現することとした。
テイルローターの基部はつや消しの黒色を筆塗りする。
スキッドの接地面にもつや消しの黒色を筆塗りした。
機体への墨入れと若干のウェザリングを行う。
従来は希薄した塗料を流す方式を使用していたが、溶剤の侵食によるプラの劣化が起きるため、今回はコピックマーカーを使用することとした。

機体色は白色であることから、墨入れにはCOPICMODELER  W5(ウォームグレー)を使用し、カラーレスブレンダーにてはみ出し箇所の除去とウェザリングを行うこととした。
機体側面の凹部をマーカーでなぞり、はみ出した塗料をカラーレスブレンダーで伸ばしてグラデーションを付けてゆく。
ファレホの水性塗料とコピックマーカーを合わせて使用したのは今回が初めてであったのだが、カラーレスブレンダーが触れた箇所の水性塗料が溶け出し、焦る場面があった。
墨入れやウェザリングでコピックマーカーを使用する場合には、事前にクリアを吹いて塗装面を保護する措置を講じた方が良いであろう。
ローター類を取り付ける。
元々差し込み式としていたため、適度な角度で取り付けた後に瞬間接着剤で固定した。
以上の工程を経て完成とした。
迷彩の軍用機ばかり作ってきたため、このような色合いの塗装は初めてであったが、順当に手順を踏んでゆくことでさほど苦労なく塗装することができた。
今回は訓練機ということもありウェザリングは控えめにしたが、機体色が明るい場合にはコピックマーカーで表現できる幅が広がるため、希薄した溶剤を使用した調整とは異なる雰囲気を作ることができると思われる。
下地色の色合いや溶剤の相性など、手軽に作成した割には技法面での収穫がある制作であった。