Sd.kfz.101 Panzerkampfwagen I Ausf.A
I号戦車 A型

2009.09.02  作成 開始
キットの構成は車体・砲塔と細部のパーツ数点と、非常にシンプルである。
成型状態は良好ではあるのだが、大きな気泡跡による成型不良とレジンの注入不足によるスカスカな箇所があるため、これらを解消する必要がある。
足元の成型用の足場を切除する。
履帯を破損しないようにデザインナイフで徐々に削る形で除去した。
足回りには気泡とレジンの注入不足で中空状態となった箇所が多数ある。
特に起動輪の内側は酷く、薄皮一枚で起動輪の形を保っている様な状況であった。
中空状態の箇所にはエポキシパテを押し込み、中空状態を解消させた。
フェンダー後部の排気管は気泡で虫食い状態となっている。
本来であれば排気管を覆うような形でパンチングプレートのカバーが取り付けられた形状である。
排気管のみならず、後部のマッドガードも酷いことに・・・・
排気管とマッドガードは作り直す方向で対処することとした。
キットパーツの寸法に合わせて真鍮板へあたりをつける。
切り出したパーツはコの字型に曲げ加工を行う。
I号戦車の後部マッドガードは意外と複雑な形状をしているため、あとは車体側パーツと付き合わせつつ調整を行う必要がある。
車体との接合部の作成とリベット跡を再現。
車体との接合部はL字加工した真鍮板の一辺を瞬間接着剤で固定する方式とし た。
もう少し大きな車体であれば可動式とすることも出来たのだが、いかんせんフェンダーの幅が狭く、かつ素材がもろいため、今回は断念した。
切除した排気管はプラ材と真鍮材で作り直す。
実車では車体との接合は蛇腹状の排気管で接続されているのだが、これはどう再現するか悩みどころである。
排気口は真鍮パイプを加工して作成。
砲塔の成型状態は良好で、小さな気泡がわずかにある程度である。
ハッチ受けのゴムパッドのみ作り直しが必要であったため、真鍮パイプを使用して再現した。
キット付属のハッチパーツ。こちらも非常に成型状態が良い。
ハッチは可動式とするため、真鍮板から作り直すこととした。
キットの寸法に合わせて真鍮板からハッチ部のパーツを切り出した。
真鍮板から作成したヒンジをハンダで固定する。
稼動部はL字の真鍮線で固定する方式としている。
ハッチは写真の様に180°の稼動域を確保した。

2009.10.18   細部工作
1ヵ月半程の間で作り溜めた内容で更新する。

本キットは鋳造時の気泡による破損箇所が多く、小さい欠損はパテを使用して修復したが、
パテでは修復できない欠損が履帯にある。
運悪く、左右両方の履帯の同じような箇所が欠損している。

履帯が大幅に欠損したキットの修復は初めての経験であり、どの様な手法で対処するか暫し悩んだ。
修復方法の結論は、プラ材により破損箇所を作りなおす方式とした。

欠損箇所の周辺を切除して工作を行ないやすい状態に整え、EverGreenのプラ材を履帯のパターンに合わせて組み合わせて行く。
プラ材とレジンの接合には瞬間接着剤を使用し、プラ材同士の接着には流し込み型のプラスチック用接着剤を使用した。
欠損部分を埋め終えた状態。
履帯の形状にあわせて縁を削る。
パテで埋め忘れた箇所もプラ材を使用して埋めた。
接着方法は履帯と同様である。
車体に一体成形されたライトの中をくり貫く。

このパーツは非常に目立つ部分であるため、WAVEのレンズを入れ込む予定である。
1939年以降はボッシュライトが装備されるため、ストックしている装備品類 からレジン製のライトを使用した。
接合部は強度が必要となるため真鍮線に置き換え、車体側の開口部に差し込む構造とした。
ボッシュライトを車体と接合した状態。
車幅灯はプラ材を削り、ボッシュライトと同様の方式で固定した。
車体後部のジャッキ台の工作。
キットの状態では固定具が微妙な状態で成形されていたので、これらを全て切除してヤスリで面を出した。
彫刻刀と罫書き針で木目のモールドを彫り込む。
細く切り出した真鍮板を使用してジャッキ台の帯と車体側の留め具を再現する。
エンジンデッキ後部には後期型に見られる排気口の装甲カバーがつけられてい た。
しかし、図面や写真と比較すると膨らみが小さく寸法が違うと思われることから、プラ材の積層で形状の修正を行なうこととした。
数枚のプラ材を積層した上で、デザインナイフで大まかな形に余剰部を切除し た。
車体側の形状とあわせつつ、ヤスリで形状を整える。
エンジン冷却口の装甲カバーも作りなおすこととした。
キットの成形状態は良いのだが、二層構造の装甲板を再現で来ておらず、立ち上がり部分もオミットされている。

キットの寸法を参考に真鍮板を切り出し自作する。
自作した装甲カバー
キットのモールドを切除し、大まかな当たりをつけて筋彫りを行なう。
装甲カバーは瞬間接着剤で固定した。
アンテナ周りの工作。

キットにはアンテナケースは付属していたが、アンテナ自体は基部の成形のみ行われていた。
基部は真鍮パイプで置き換え、アンテナ本体は真鍮線とパイプを組み合わせて自作した。

アンテナケースは形状を整え、車体側との接合部に真鍮線を入れて補強している。
アンテナケースには筋彫りも入れたが、思った程は目立たなかった。
排気管の工作。

実車の排気管は車体との接合が蛇腹状の構造をしていたため、どの様に再現するか悩んだ。
そこで、接合部の真鍮線に燐銅線を巻きつけて蛇腹状にしてみた。
排気管カバーの自作。

エッチングのパンチングプレート(丸穴)を適度なサイズに切り出し、U字に加工した。
縁はハンダを付けて一列分穴を埋めた上でヤスリで形状を整えた。
排気管を仮置きした状態。

ほぼ期待通りの形状となった。
キットのガーダー・ビームの形状に納得できず、悩んだ末に足回りも手をつける こととした。

ガーダー・ビームと周辺を切除し、デザインナイフとヤスリで形状を整える。
ガーダー・ビームは真鍮板にて作成。
非常に小さい部品であったため、コの字加工の制度がいまひとつであったが、このまま作業を続行した。
板バネは積層したプラ材を使用して作成。
足回りを組立てた状態。
砲塔の機関銃はキット付属の部品を使用した。

形状はなかなか良いのだが、細いレジンは非常に脆いため、塗装で破損しない事を祈りつつ作業を続行する。
以上にて車体の工作は完了した。

次回より塗装に入る。

2009.10.26   基本塗装
塗装の下地としてマルチプライヤーを吹く。

塗装の利便性を考慮して、写真のパーツ分割の状態で塗装を進めて行く。
下地色としてサーフェイサーを吹く。
足回りと排気管周辺を中心にフラットブラックを吹き、影を付ける。
基本色はMr.カラーのジャーマングレーを使用した。

素の塗料を付吹いた後、基本色にダークイエローを少量ずつ混ぜて明度を上げたジャーマングレーを徐々に吹き、全体の色調を整える。
排気管は錆色を薄く塗布した。
排気管の塗装が乾いた段階で排気管カバーを瞬間接着剤で固定した。
工具類は隠蔽力の強い白色で基本色を隠す。
コピックマーカーを使用して柄の塗装を行なう。

使用した色はE07 Light Mahogany と Y17 Golden Yellow で、Y17を全体に塗布した後、E07を塗り色調を整えている。
前照灯の工作。

前照灯の内側に白色を塗布する。
WAVEのレンズを接着する。
基本塗装は完了した。


2009.11.07   国籍章
国籍章・部隊章などのマーキングを行なう。
I号戦車A型は1936〜1940年頃に配備されていた戦車であるため、国籍章については大戦中期以降の戦車とは異なる点がある。
ポー ランド侵攻の初期までは黄色一色の十字が国籍章として画かれていたが、ダークグレーの車体に黄色のマーキングは目立ちすぎ、ポーランド軍との戦闘にて国籍 章を打ち抜かれる例が続出したそうである。この戦訓から、後の白色の国籍章に切替えられたそうであるが、素人目には黄色も白も変わらない気がしないでもな い。

使用したデカールはたまたま入手した Aleran Minitures の1939年車両向けデカール。内容は国籍章と、第3〜第5機甲師団の部隊章がセットになっており、初期モデルのIV号戦車への施工例が書かれたインストが付いていた。
手元にあった資料を元に検討した結果、ポーランド戦役に参加した第5機甲師団軽戦車中隊所属車両という設定でデカールを貼った。

同師団には第15、31の2つの装甲連隊が配備されており、それぞれに軽戦車中隊が9個配備されていた。この軽戦車中隊にはI号戦車B型が配備されていたことまでは確認しているが、A型が配備されていたかどうかは分からない。
このため砲塔番号はB型で確認されていないものを使ったが、実際にこのような車両があったかどうかは不明である。
砲塔の三面に国籍章を貼る。

黄色の国籍章を貼ってみると、確かに非常に目立つことは間違い無い。小さい砲塔の三面に国籍章を貼るのは、どの面からも識別しやすい反面、標的となるのは致し方ない様にも思える。
デカールの色が薄く印刷のドットも見えていたため、デカールの上にコピックマーカーのYR12 Yellow Ochreを塗ってみた。
砲塔の地色とはメリハリが付いたが、この色合いでは工事現場の車両の様だ・・・
車体前面と右側面に戦車中隊の部隊章を貼る。
使用したデカールはArchrt Fine Trnsfersのドライデカールで、ミニスケール向けの部隊章をとしては欠かせないものである。
このシリーズは白・黄・赤の3色で同じ内容のデカールを販売しており、車体色や時代考証にあわせて使い分けることができ、非常に使い勝手が良いデカールである。

2010.12.15   仕上げ
最後の更新から1年が過ぎてしまったが、断続的に仕上げの試行錯誤を続けていたので工程を更新する。
ダークグレーの単色迷彩は暗い色調の中で単調な印象となってしまうため、ウェザリングを兼ねてエナメル溶剤で溶いたフラットアースを塗布する。
塗料は写真の様な状態まで希薄して使用する。
全体に塗布した状態。
プラキットではエナメル溶剤により細かい部品が侵食されてしまう危険性があるが、レジンや金属を使ったキットではその心配は無いため、全体に染込ませる要領で塗布する。
乾燥させた状態。
この固定は何度も重ねながら調整を行うのだが、1回目の結果からどのあたりに顔料が残りやすいかを見極める必要がある。
顔料が乗りすぎた箇所はエナメル溶剤を染込ませて洗い流す。
2回目以降は全体に塗布するのではなく、強調したい箇所を中心に塗料を染込ませる。
数回に渡り繰り返し塗布した結果、この様な色合いに変化する。
繰り返し塗布することでエナメル塗料の皮膜にありがちな妙な光沢が出来てしまうが、後の工程で解消できるため、顔料の乗り具合を見て手を止めるタイミングを計ることとなる。
仕上げとしてつや消しクリアをエアブラシで吹く。
光沢が消えて色が馴染み、落ち着いた雰囲気になる。
今回はなかなか思うような仕上がりにならず、また一時期戦車兵のフィギュアを乗せることも考えていたため完成が遅れた。
単色迷彩の仕上げはまだまだ試す余地が多く、コレといった技法が確立できていないため、今後も試行錯誤を繰り返すこととなりそうである。
Milicast社のバトルフィールドシリーズを作るのは今回が初となるが、主要部位は一体成型で作られているため基礎工作の手間がかからず、従来のバラバラな状態の同社のキットと比べて製作難易度は大きく下がったと感じられた。
その上で、全体のクオリティは旧来のシリーズに引けを取らないため、品質据え置きで作り易さが向上するという、非常に取っ付きやすいガレージキットに進化していた。