Sd.kfz.101 PanzerjagerI LateModel
I号対戦車自走砲 後期型

2009.12.27 工作開始
キットはS.W.A 35のI号戦車キットと同等の車体パーツと写真の専用パーツを組み合わせてI号対戦車自走砲を作る方式となっている。I号対戦車自走砲の他に7.5cm対 戦車砲が付属しているが、今回はこちらは制作しない。

車体のデザインから後期型かつ熱帯仕様の車体であることがわかる。
車体側のパーツは内装の無いタイプのI号戦車のキットである。
小さいなりにかっちりとした出来であるため、普通に組み立てるだけでも見れる形になる。
車体を構成するパーツを切り離した状態。
古いキットではあるが目立つバリは無いため、パーツの下処理はほとんどする必要が無いのはありがたい。
足回りのパーツには派手な押出しピン跡がついてる。
これは流石に処理する必要があるため、穴埋めと削り込みで対処する。
オープントップの車両であるため、戦闘室下の内装はパーツが付属している。
底面の各部品の配置は正しいのだが、壁面の部品は付属していないためプラ材をで作り込む。
戦闘室を覆う装甲板の形状は後期型の実車に準じた構造となっている。
本来であれば真鍮板からスクラッチする方が良いのだが、今回はキット付属パーツを尊重する形で工作を行うこととした。
実車の装甲は非常に薄かったため、プラ材の厚みを消すためにエッジをデザインナイフで薄く削ってみた。
戦闘室前面の工作。
可動式装甲板のパーツは真鍮板から切り出して作成。
ボルト跡はアドラーズネスト社のステンレス製アフターパーツを使用した。
主砲のパーツもキット付属品を最大限使う方法を考えている。
まずは砲架と砲身の接合部をピンバイスで開口し、真鍮線で固定する方式へ変更することで、後組みができる構造にした。


2010.01.13 主砲周辺の工作
戦闘室の仕上げとして、上面の装甲板をプラ材で作成した。
プラ材の厚みが気になり何度も真鍮板で作り直そうと思ったが、とりあえずは一通り組み上げることができた。
本キットで最大の難所となる、砲架の工作に着手する。
キットパーツでは写真の様に車体上部から砲架が突き出す構造となっているが、実車では車体側から3点の軸で支えられる構造となっている。
まずは手始めに車体上部の装甲板を砲架にあわせた形に切り取る作業を行った。
参考資料の三面図を見つつ、罫書き針で大よそあたりをつけた上で彫刻刀で部品を切り取り、ヤスリで弧の角度やエッジの処理を行っている。
次に主砲の工作に着手する。
キットパーツは成型状態が良く、寸法的にも狂いが無いと思われたため、当初はこれを軸に作成することを考えていた。
しかし、マズルブレーキ周辺の構造を作り込む上で、砲口のテーパー部分をプラ材で再現することが困難であるという問題に直面。 やむなく20mm Flak用のアフターパーツを流用しつつ作ることとした。
当初は砲身の途中までを真鍮パイプに置き換え、砲口部分を差し込んで固定することを考えていたが、これでは強度に問題があることが発覚した。
結論として、砲身の大部分を真鍮パイプの1部品に置き換え、砲口のテーパー部分はアルミ挽きの砲身、マズルブレーキは真鍮材で作成し、それぞれをつなげて 形にすることで落ち着いた。
次に砲架を支える車体側の作成を行う。
下部から砲架を支える支柱は真鍮線を使用。砲架の後部を押さえる部分はプラ材を張り合わせて作成した。
砲架本体は真鍮板から部品を切り出し、2本の支柱とハンダで固定した。
主砲との接合部分はキットパーツを切り出して使用している。
戦闘室周辺に配置されるガスマスクケース受けと短機関銃受けは真鍮材で作成した。
主砲を取り付けた状態。
中空になっている構造の割には強度があり、主砲の取り外しも簡単に行えた。
戦闘室の防護版と組み合わせた状態。
さほど厳密に加工したわけではないが、組み立て時に部品の精度に起因する問題は発生せず一応収まった。
この段階では全て分解可能な状態になっているが、塗装段階ではどこまでを固定し、先行して塗装するかが問題となりそうだ。

2010.01.22 内装・外装品
排気管の作成。
これは定番どおりに金属材より部品を切り出し、ハンダで組み立てることとした。
排気管本体は真鍮パイプから作成。
放熱板はアフターパーツのパンチングプレートを適当なサイズに切り出し、半円状に加工した後、外側一列分のみハンダで穴を埋めている。
車体との接合は真鍮線を使用する。
先端を潰した真鍮線をハンダで固定し、軸線の位置合わせて車体側に穴をあける。
車体と排気管を組み合わせた状態。
十分な数の軸を入れることで、接着せずとも写真の様な状態に組み付けられる。
エンジンルーム上部のネットの作成。
キットパーツの寸法に合わせて金属メッシュを切り出す。
メッシュの周辺に細く切り出した真鍮板をハンダで固定する。
縁の作成が完了した段階で、コの字型に折り曲げ加工を行い、固定用の軸をハンダ付けした。
車体側には軸を受ける穴をあける。
車体と組み合わせた状態。
組み付けて気がついたのだが、キットパーツと比較してやや大ぶりになってしまった。
車体の内装に手を入れる。
戦闘室外から見える砲弾ラックを真鍮材から作成した。

キットパーツと図面からおおよその寸法を出し、展開図の要領で真鍮板に罫書き針で切り出すポイントに線を入れる。
真鍮板から切り出した部品。
砲弾を入れる部位はピンバイスで穴を開けている。
砲弾ラックを組み立てた状態。
車体側面の砲弾ラックはプラ材で作成する。
こちらはEverGreenのプラ材で箱組した。
車体に取り付けた状態。
寸法はほぼ想定通りで、特に無理なく収まった。
車体側面のベンチレータ排気管を真鍮パイプにて作成。
当初はキットパーツを使うことを考えていたが、他のパーツと干渉したため作り直すこととした。
ライト類はキットパーツを小改造して使用する。
軸パーツは真鍮線に置き換えることで工作時の利便性と固定強度を確保する。
車体側面のL字アングルを貼り付ける。
戦闘室側面のアンテナを取り付ける。
アンテナの軸はシリウスのレジン製アフターパーツを使用した。
組み立てが完了した状態。

次の段階では内装の塗装を行い、車体の上下を貼りつけた上で車体全体の塗装を行う。

2010.02.12 内装塗装・細部工作
先日までの段階で工作を終える予定だったのだが、装備品周りの工作を行うこととした。

エンジンルーム脇に設置された燃料タンクのラックをスクラッチする。
真鍮板を細く切り出し、組立用のパーツを作る。
パーツはハンダで接着し、車体には瞬間接着剤で固定する。
燃料タンクはMMS Modelsの1/76 ホワイトメタル製パーツを使用した。
4個が1組で成形されているが状態は良いため、バリを落とす程度で十分な形になる。

オープントップな車体のため、内装の塗装を行った。
塗料はガイアノーツのインテリカラーを使用した。

金属部には予めメタルプライマーを塗布したが、下地処理としてサーフェイサーを吹かずにインテリアカラーを吹いてしまったため、素材色がインテリアカラーへ影響を与えてしまった・・・
内装塗装の仕上げはエナメル塗料のブラウンを全体に流す。
内装の塗装が乾燥した段階で、車体の上下を貼り合わせる。
ライトは後からレンズを張り込める様に凹状に削り込む。
車体前面のフックを真鍮線でスクラッチする。
車体の貼り合わせ跡を処理したのち、真鍮板の基部を貼付け、真鍮線でフックを作成した。
塗装時に取り付ける外装を全て固定し、基本塗装に備える。
今回は初のアフリカ仕様の車両のため、塗装方法を検討した上で作業を進める予定である。

2010.02.26 塗装
今回は熱帯仕様のI号戦車がベースの車両であるため、北アフリカ戦線に投入された車両として塗装を行う。
DAK(ドイツ・アフリカ軍)は急遽派遣された部隊であったため、派遣初期(1942年初頭頃まで)はジャーマングレーの基本色上に溶剤で溶いた砂や手持ちの適当な塗料(鹵獲品など)で迷彩を施していた。I号対戦車自走砲もこの時期に合致する車両であるため、ジャーマングレーの上に地勢に合わせた塗料が上塗りされた状態で使用されていたと思われる。

DAK車両の塗装は今回が初となるため、模型作家の塗装例を参考に作業を進めることとした。
迷彩の基本色はガイアノーツの「ドイツ戦車アフリカ軍団<1941/1942>セット」からイエローブラウンを使用してみることとした。
DAK車両に見られる特徴として、苛酷な環境で使用したことによる塗装の剥がれや、塗り斑が顕著であるという点がある。
塗装技法としは、実車と同様に下地にジャーマングレーを塗り、迷彩を上塗りした上で部分的に剥がす方法と、迷彩色で塗装した上で、剥がれを表現するためにジャーマングレーをポイントごとに塗布する方法の二つが考えられる。
今回は後者の迷彩の上に剥がれを表現する方式を取ることとし、上塗り用の塗料としてVallejo社の水性アクリルカラーを使うこととした。この塗料は以前から使用してみたいと思っていたが、なかなか機会が無く今回が初の利用となる。
下地剤としてマルチプライマーを吹く。
サーフェイサーを吹き、素材の色を隠蔽する。
今回使用する黄系の色などは下地色の影響を強く受けるため、均質に発色させるためには下地色が重要となる。
影になる部位へブラウンを吹く。
これは奥まった部位に基本色を吹きすぎないため(吹き損じた箇所の色を隠す)と、濃い下地色をつけることで特定箇所の基本色の色味を変えることが目的である。
基本色を吹く。
大戦後期に使用されたダークイエローと雰囲気は似ているが、比較するとやや茶系・緑系の雰囲気がある色である。
多少明るい色味にするため、白を少々混ぜた塗料を吹いている。
塗装用に分解していたパーツを組み立てた状態。
主砲の防盾と戦闘室の壁面が当たってしまい、組み立てには思いのほか難儀した。
ジャーマングレーで軽くドライブラシを掛けてみた。どこまで塗料の剥げを表現するかが悩ましいところ。
ぺトロールで溶いたバートンアンバーの油彩でウォッシングを行う。
希薄しすぎた様で、思ったほど色味が濃くならなかったが、基本色とドライブラシを行った箇所の色差が薄れたように思われる。
工具類には下地となる白色を塗る。
排気管は錆色を塗ったが、少々暗い感じとなったので、後ほど調整が必要となりそうである。
剥げの表現の具合がわからず、やりすぎてしまった・・・・
どうやってリカバリするかを考えてあれこれ試すうちに、より一層酷いことに・・・・
前回よりも濃度を濃くした油彩で再度ウォッシングをしてみる。
やればやるほどイメージから遠のいていく気がする・・・・どこかの段階でリセットしないとマズイ予感・・・
本体が微妙なことになってしまったので、リカバリをするまでの間に小物の塗装を行う。
支持用転輪は小さいため,両面テープの上に貼り付けて塗り分けを行った。
燃料タンクは4個1組で成型されていたため、1つはジャーマングレーで塗り、末端の1つを水用のタンクであることを示す白い帯を書いてみた。

2010.04.19 塗装
塗装の剥げを書き込みすぎてしまったため、基本色を上塗りしてリトライすることとした。
筆塗りだけでは剥げの境界線が直線的になってしまっていたため、基本色の吹き直しにより適度にグラデーションがかかったことは予定外の好結果であった。
改めて剥げとデカール位置の再塗装を行う。
下地色が見える部位はVallejoのジャーマングレーを引き続き使用したが、塗装前の攪拌が足りなかったようで、当初より色味がやや濃くなってしまった。
合わせて基本色の吹き直しで埋めてしまった排気管周辺とOVM関連の下地色の塗りわけも行った。
デカールはBison Modelsの製品を中心に使用した。
側面と背面の国籍章と戦闘室後面の車体番号は同製品、車体全面のDAKの椰子の木のマークはフジミの同キットに含まれているデカールを使用している。
エナメル塗料のつや消しブラックを希釈して、凹部への墨入れを行う。
合わせて全体にペトロールで溶いたローアンバーの油彩を流し、全体の色調を調整した。
履帯はキット付属のゴム製履帯を使用した。
このシリーズのゴム履帯は総じてあまり出来が良くないのだが、I号戦車とII号戦車に付属しているものだけは例外である。 素材の性質上やや厚みがあることは仕方ないのだが、履帯表面の文様も再現されており、そのまま使用しても鑑賞に耐えるレベルである。
履帯の接合は瞬間接着剤で行った。
起動輪はもとより、転輪とセンターガイドの噛み合わせにも問題はなく、特別手を入れる必要が無いことは大変ありがたい。
取り付けのコツは、起動輪は接着せずに履帯と共にはめ込み、履帯の接合位置の調整を行った後に流し込み式接着剤で起動輪を固定する。
次に履帯と転輪を瞬間接着剤で軽く留め、履帯の接合を行う。
最後に、履帯の接合用ピンを切除して完成となる。
仕上げとして、支持輪・アンテナ・ライトのレンズなどを取り付けた。
足回りの汚れを再現するため、ピグメントを使用する。
北アフリカの砂漠の砂がどの様な色をしているか知らないため、さほど差は無いであろうと信じてGarf War用のものを用意した。
ピグメントをつける場所にアクリル溶剤を塗布し、筆でピグメントを落としてゆく。
ある程度乾いたら、毛先の短い筆でこすり落とし、余剰分を除去する。
砂のテクスチャを残したい部分は、アクリル溶剤が生乾きになるまで待ち、軽めにピグメントを乗せている。
完成した状態。
そもそもは素組みを目指していたはずなのだが、結局は何箇所か作りこみをしてしまった。
組み立て開始から4ヶ月程度で完成となったが、途中で別のキットを作っていたため実質は2ヶ月程度の作業で、比較的ペースは速かったように思われる。
今回はDAK塗装のテストも兼ねた製作で、塗装段階では試行錯誤の連続であったが、概ね予定通りの雰囲気に仕上げられたのでまずは良しとしたい。