Sd.kfz.138 Marder III Ausf.M
38(t)対戦車自走砲マルダーIII M型(46口径75mmPAK40/3型)

2005.01.12  キット内容と仮組
仮組を行った状態。
下処理を行なった後、バリを落しゆがみを直した後に多少手を入れてマスキングテープにて仮組を行った。パーツの合いは良く、さほど苦労なくこの段階まで組立てることが出来た。
組立前のパーツ構成。
シャーシ部と足回りは一体成形だが成形状態は良好で、大幅な修正や作り直しは不要である。
内装用アクセサリ類が少ない点と予備履帯の成形状態はさほど良くはない為、代用品を考える必要がありそうである。
パーツの下処理。
真鍮ブラシで磨いて剥離剤を落した後、メタルプライマーを塗布している。
主砲のパーツ割。
マズルブレーキの成形状態が良い為、開口のみを行いそのまま使用している。
主砲パーツは写真の部位以外にハンドル類と照準機が別パーツで付属している。
砲架部と主砲部の接合は真鍮線に置き換えた。
本来は砲架の凸モールドと砲部の凹モールドを組合せるのだが、組立て強度を考慮して真鍮線への置き換えを行った。
排気管は真鍮パイプを使用して自作した。
キットでは車体側面・後部・マフラー部の3パーツより構成されるが立体感が乏しく、車体外部に露出する部位でもあることから作り直した。
マフラーを覆うパンチングプレートはファインモールドのメッシュより作成した。
車体側面の排気口はキットのモールドを切り落とし、真鍮材にて作り直した。
キットパーツの戦闘室側面部。
排気口部はくり貫き、自作パーツのはめ込みを可能としている。
排気口部を差し替えた状態。
排気口周辺を仮組みした状態。
マスキングテープで固定して固定部の当りを付けている。
他の38t系車両と並べてみた。
上部構造物の形状が大幅に違い、足回りを見なければ同一系統のシャーシを元に作られた車両とは思えない程異なっている。

2005.01.16  砲弾ラック作成
戦闘室内の砲弾ラックを作成。
MarderIII Ausf.Mは戦闘室内に砲弾ラックが設置されており、27発の砲弾を携行することができる。
ラックは砲弾を垂直に格納する筒状のもので、6本x2列収納可能なラックが左右に1機ずつと3本収納可能なラックが1機設置されている。
キットにも砲弾ラックパーツは付属しているが、砲弾数が足りない上に3本収納ラックはパーツが付属しない。このため真鍮材を組合せてこれらのラック制作を行った。
オープントップ型車両の戦闘室内装に手を出すのは楽しい作業ではあるのだが、こだわり初めると収拾がつかなくなる上に塗装に苦労することが多いのが難点である。
キット付属の砲弾ラック(らしきもの)。
数も違えば形も違うため、切り離して砲弾パーツとして使う以外に用途が無さそうである。
制作途上で写真撮影を小まめに行なったので、真鍮材を用いた加工の工程を書いてみる。
1/76の模型では0.1mm〜0.3mm程度の真鍮板を使用して工作を行なう。寸法が小さい上に曲げ加工や切り出しをある程度正確に行なうには0.1〜0.2mmが限界であり、加工の少ない装甲板などの作成に0.3mmを使用するといった感じである。
写真は0.1mm真鍮板よりパーツを切り出した状態。0.1mm厚であればニードルで当りを付けたあとデザインナイフで切り出すことが可能である。
パーツの組立てはハンダや瞬間接着剤を使用する。
組立て作業は写真の様に治具で固定して行なうことである程度正確な組み立てが可能である。
また、ハンダでの組立ては真鍮板自体が熱を持つ為、素手で作業を行なうことはできない。このため写真の様に熱で溶けない治具を使用しての作業となる。
複数のパーツを組み立てる場合は治具を組合せて使用する。
ハンダで接合した箇所は他のパーツ接合時の熱で剥がれてしまう為、治具を使用して剥がれないように押さえながら作業を行なう。
使用しているのはミニ万力と木材製のハサミである。木材は熱で焦げてしまうが、単価が安いことと板金用フラックスに侵されないという利点があるため治具として常用している。
ハンダを使った接合では板金用のヤニ無しハンダを使用する。
ヤニ無しハンダを部材にそのまま乗せても接合できない為、板金加工用フラックスを併用する。フラックスを塗布することでハンダが流れ易くなり、組み立てを容易に行なうことができる。しかし、フラックスは強酸性であることから金属製の工具に付着すると錆びるため、扱いに注意が必要である。
ハンダは糸状になって販売されているが、そのまま使用するのではなく写真の様に細切れにして使用する。使用時にはハンダ小手の先でハンダの破片を拾い、接合部に落すイメージで作業を進めていく。
組み立てが完了した状態。
組立時にはパーツの寸法を全て整える必要はなく、持ち手となる余分な部位を残しておくと作業性が上がる。
組立後、余分な部位を切り落としてヤスリがけを行なう。
この程度の寸法であればニッパやデザインナイフで余分な部位は切り飛ばし、ヤスリをかけて仕上げることとなる。
仕上げには板金加工用のヤスリとダイヤモンドヤスリを使用している。板金用ヤスリである程度削り込み、切除面を整えるのにはダイヤモンドヤスリを使用するといった感じである。
砲弾ラックの砲弾を垂直に立てる為の筒状部位の作成。
真鍮パイプを適正な寸法で切り出し、ヤスリで竹槍状に加工する。
このパーツは27個必要となるのだが、正直なところかなりしんどい作業である。
ラックに筒状部位を収めた状態。
瞬間接着剤であたりを付けたあと、ハンダで固定し直している。
車内にラックを収めてみる。
寸法はおおよそ正しいのでここまま作業を続けてゆく。

2005.02.07  細部工作
後部トラベリングロックを作成。
強度が必要な可動式とするために真鍮材にて基部より作成した。真鍮パイプと真鍮線の組合せで稼動させ、固定にはハンダを用いている。
稼動部位は計4箇所。
キットのパーツと組合せた状態。
固定には高強度瞬間接着剤を使用している。
仮組みを行うとこの様なイメージとなる。
少々オーバースケールの様な気がするが、作り直す気力が無いので現状のままで作業を継続する。
主砲となる7.5cmPAK 40にも手を入れる。
防危板は真鍮材にて作り直し、閉鎖機のグリップを真鍮線に変更した。
ラックに収める砲弾の作成。
薬莢部はアルミパイプから切り出し、弾頭はプラ材を使用している。
薬莢は素材の色をそのまま使用し、砲弾部のみ弾種により塗装を代える予定である。

2005.02.15  背面ハッチ
車体背面のハッチを作成。
キット付属のパーツを固定してしまうと内装が見えなくなる為、実車及びスケール無視の可動式として作製した。1/76に合わせた蝶番を作成することは不可能である為、寸法と形状は実車と大幅に異なり、本来4箇所ある可動部は2箇所に省略している。
排気管も含めて固定した状態。
ハッチを開いた状態。
ハッチの開閉可能範囲は排気管に支えられる形で実車に近づけている。実車には蝶番部分にストッパーがあるが省略している。
ハッチパーツを取り外した状態。
車体側には基部としてコの字型に加工した0.15mm真鍮板を取り付けた。接着は車体はホワイトメタル製であることからハンダを使用せず、瞬間接着剤を用いている。しかしこれでは強度が足りない為、真鍮線の芯線を通している。車体との接合面を開口して芯線にて貫通させた後、ヤスリで芯線の頭を削り抜け留め防止とした。
ハッチパーツを裏面から見た状態。
0.3mmの真鍮板からハッチを切り出し、0.1mm真鍮板により作製した固定部をハンダ止めしている。こちらはデティールを追加するため芯線を通している。

2005.02.28  装備品類工作
半月ぶりの更新。仕事が忙しくサイト更新は滞りがちだが、制作の方は余裕を見てはちまちまと進めている。
戦闘室を組み立てる前に済ませておくべき車体の細部工作が一通り完了し、戦闘室左右装甲板を固定した。
取付強度を高める為、車体を左右から挟み込む部位に2mmの穴を開け、真鍮線を通した後に高強度瞬間接着剤にて固定した。
主砲支持架の作成。
キット付属のパーツを元に真鍮パイプを用いて可動式とした。砲身をロックする部位の制作は放棄した為、今回は根本は稼動するが主砲を固定することはできない。
主砲支持架を寝かせた状態。
主砲支持架本体と固定用のピン。
支持架は下部を削り落とし真鍮パイプを瞬間接着剤で固定し、ピンを通して固定できるようにしている。
ピンは0.25mmの燐銅線に真鍮パイプをハンダずけして制作。
工具箱はキットのモールドにパンチングプレートを張りつけた。
この工作方法は38t偵察戦車の際と同じだが、キットのモールドが扁平であったため、当初のイメージとは違う物となってしまった。
ジャッキはキット付属のパーツを使用し、開口して真鍮線で固定した他、細く切り出した真鍮板で固定部を作製した。
工具類はキットのモールドを生かしつつ手を入れている。
柄を真鍮線に置き換え、スコップの頭はパテの袋を伸ばして押し当てたものを被せるように固定した。
戦闘室装甲を取付た状態。
左右装甲板を車体に合わせた後に背面装甲板を取付たが、大きく隙間が空いてしまった。
隙間をエポキシパテで埋めた状態。
パテの余剰部を切除し、表面を整える前の状態である。

2005.03.21  内装組立て
1ヶ月ぶりの更新であるが、暇を見ては手を入れていたので制作は一応進んでいる。
内装も含めた装備品一式を組みつけた状態。内装にあと少し手を入れて完成とする予定である。
主砲のクリーニングロッドはキットのモールドを削り落とし、真鍮パイプと真鍮線を組合せて作製した。
車体への固定具は真鍮パイプを輪切りにし、ハンダにて固定した物を使用している。
内装の無線装置とそのラック。無線のパーツはよく出来ている為、多少手を入れてそのまま使用することとした。
無線機ラックは真鍮板をハンダで止めて作製した。無線機本体とラックは色が異なり、先々の塗り分けが大変であることが予想される為、別パーツとして塗装後に取付る予定である。
主砲を取り外すと内装がある程度見える様になる。
このスケールでの内装の塗装はかなり厳しいものがあり、塗装の手間を考慮したパーツ割りが必要となる。

2005.04.13  塗装
下地塗装を吹いた状態。
希薄したメタルプライマーを吹いた上にサーフェイサーを吹いている。
影となる部分とエッジ部分にブラウンを吹く。
基本色のダークイエローを吹く。
この辺りまでの手順はいつも通りである。
迷彩を施す。
今回はブラウンの文様のみの迷彩とした。
仮組を行なう。
ようやく完成間近という雰囲気となったが、オープントップ車両はこのあとの塗り分けが大変である。今後は色調の調整と墨入れ、細部の塗り分けと装備品の取付を行なう。
足回りの塗装はサーフェイサーの上にブラウンを吹き下地とし、車輪に基本色のダークイエローを吹いた。
履帯にダークグレーを吹く。
ブラウンで迷彩を行なった後、コピックマーカーで転輪のゴム部と履帯の塗装を行った。
右側面から移した仮組状態。
左側面
正面
背面

2005.05.06  ウェザリング
塗装が完了した後、エナメルのブラウンを使用したウォッシングを行なった。
全体を同一色を流した後、部分的に濃度の異なる塗料を流している。ウォッシングの工程数を増やすことで全体的な明度を下げて基本色と迷彩の色調が整える以外にも影部強調する狙いがある。
一度、ラッカー系のつや消しを吹いた後、チッピングを行なう。
エナメル系のブラック+ジャーマングレーの混合色を作り、細筆で鋭部を中心に色を乗せている。
本来チッピングは塗料の剥げを表現する技法であるが、一歩踏み込んで鋭部や凸部に色を乗せることで全体の輪郭を強調させることができる。剥げ表現+αすることで、ミニスケールでは埋もれてしまいがちな細かい凸部を強調することを目指している。
塗料の剥げは研究の余地が多分にある技法であるが、基本的には人が触る頻度が高い箇所や接触により剥げると思われる箇所を中心に塗料を乗せている。
単色いよる剥げ表現だけでは物足りない箇所には鉛筆を使用して微妙な光沢を乗せている。
平面部やリベット跡などの細かい凸部に行なうことで、エナメル塗料の筆塗りでは表現できない剥げ表現が可能である。
この状態でコピック+チッピング+鉛筆の組合せによるウェザリングはほぼ完了である。この後、つや消しを吹いてパステルで埃表現を行い、完成とする予定である。

2005.05.15  仕上げ
制作開始より5ヵ月かかりどうにか完成に漕ぎ着けられた。
初のメタル製キットであるが素性が良かった為、大きな苦労をすることもなく組み立てることができた。ホワイトメタルは素材の特質からナイフの通りは良いがピンバイスの扱いが難しいなど、工作時の苦労もプラスチックやレジンとはことなる趣のある素材である。このため、素組み+α程度であればさほど苦労はしないが、大幅な改修などには向かない素材であると思われる。
また、下地作成時のメタルプライマーの塗布量が足りなかったためか、塗装後に軽くこすれる程度で塗料が剥げてしまう箇所があり、仕上げ処理にはかなり神経を使う必要があった。

メタル製キットは工作には少々難があるものの、完成後のずっしりとした重さはプラキットには無いある種の達成感を感じさせてくれる。このキットの制作でメタルキットの扱い方が多少は見えて来た為、今後はホワイトメタル製も購入の対象となり、未着手キットが増えそうな予感がする...
仕上げ処理としてつや消しとパステルを使用したウェザリングを行った。
全体につや消しスーパークリアを吹いてコピックによる塗装を行った箇所の光沢を押さえ、パステルワークの下地としてマッドを全体に薄く吹いている。
これまではパステルの色調のみで埃表現を試みていたが、全体的な埃汚れはエアブラシを用いた塗装で表現し、泥の粒子をパステルにて表現する方法に変更してみた。
足回りのパステルワーク。
作業手順は泥汚れ表現を行なう箇所にアクリル溶剤を塗布し、溶剤が乾く前に粉末状にしたソフトパステル(ホルベイン 896)を乗せる。溶剤が乾燥してパステルが固まった段階で丸筆で払い、浮いているパステルを落している。
錆の表現として排気管に対しても軽くパステルを乗せている。
基本的な手順は泥汚れと同じであるが、乗せるパステルの量を少なめにして余分なパステルを落す処理を行なわず、より粉っぽい雰囲気を残すようにしている。