Sd.kfz.161 Pz.Sfl IVa "DickerMax"
105mm 自走砲IV号a型 "ディッカーマックス"

2007.07.11  取り 掛かり・主砲代替品
キットの構成状況はフェンダーを含めたシャーシ、戦闘室の上蓋、足回りが大型 パーツとしてあり、あとは主砲と若干の内装となる。
キャストは固めで若干のゆがみと多数の気泡があり、下処理はかなりしんどいことになりそうである。この手のキットは完成時には1/2程度が新造パーツに置 き換わってしまう事が過去にもあり、制作には相応の覚悟が必要となる。
制作初見ではキットの中枢構造は丁寧に下地処理を行なって使用し、あとはインジェクションキットのIV号戦車のパーツで足回りを置き換え、主砲は妥当そう なアルミ挽き砲身に換装、フェンダーは全面的に作り直し、内装もほぼ手作りとなりそうである。
1/76 105mm砲でマズルブレーキが付いた製品などは存在しない為、別スケールのアフターパーツから類似した形状で寸法的にも大きな狂いがない製品を探すこと となる。
幸いにもMilicast製105mm野戦砲のキットにはアルミ挽き砲身が付属しており、こちらの寸法が正しいことを前提に、1/35 50〜60mm、1/48 75mm〜88mm程度の砲身であれば寸法的に大きな狂いが生じずに利用できると判断。
50mm〜60mmでマズルブレーキが付いた製品は少ないことから、今回は1/48 75mm砲(IV号戦車用)を利用することとした。
砲身はアルミ挽きのアフターパーツを中心にキットパーツと真鍮パイプを組合せ て使用する。
それぞれのポジションをキットパーツを参考にあたりをつけ、削り込みを行なって整えてゆく。
砲身の各パーツを組合せた状態。
キットパーツの寸法と比較してもそう大きくは変らず、デティールは確実に上昇したと思われる。

2007.07.15  基本 工作
主砲のパーツ構成。
キットパーツは実車の構造は全く考慮されていない大雑把な作りで、どこまで手を入れるか悩ましい所である。
砲身はアルミ挽き砲身を軸にキットパーツを使用して構成。
寸法はキットパーツを参考に調整している。
砲尾はキットパーツを中心にプラ材と真鍮材を使用して工作を行なう。
防危板周辺はキットパーツには含まれない為、写真を参考に目算で寸法を出している。
主砲を組み合わせた状態。
流石に105mm野戦砲ともなると1/76でも相応の寸法になる。
キットパーツの足回りは写真のような中途半端に成形された状態である。
これはどうこうできるレベルではないため、全面的にインジェクションパーツに置き換える方向で加工を行なう。
使用するインジェクションキットはフジミのIV号戦車である。
寸法の調整とディッカーマックスの足回りに準じた工作を行い使用することとなる。
インジェクションキットパーツを組込めるよう、キットパーツを大幅に切除す る。
デザインナイフで切り落とした後、彫刻刀を使用して凹部の彫り込みを行なう。
フェンダー部も作り直すことから車体パーツから切り離す。
フェンダーと一体となっていた内装の基部はプラ材を貼り込む。
インジェクションキットパーツを組込んだ状態。 接着には高強度瞬間接着剤を使用している。隙間は後程パテ埋めすることとなる。
戦闘室上面のパーツ。 基部と上蓋は別パーツとなっている。
戦闘室上面は実車とデティールが異なる為、全て削り落として成形しなおす。
キットパーツのエッジが表に出る部位は削り込みを行ない薄くした。隙間埋めにはアルテコ SSP-HGを使用している。
車体後輩部のカンバスカバー収納部のスクラッチ。
真鍮板に骨となる真鍮線をハンダ付けした後にアールを付けている。
車体上部にカンバスカバー収納部を仮止めする。
カンバスカバー収納部の下部には砲身清掃用器具の固定場所となるため、留め具を取り付けた。
車体背面の状態。
キットには余計なモールドがあることから削り落とすこととなる。
ハッチは装甲面と平行であることから作り直しを行なう。
キットのモールドは削り落とし凹部の彫り込みを行なう。
ハッチは真鍮板を切り出して作成する。
背面の予備転輪固定部はキットパーツを軸に真鍮材で固定部の作成を行なう。
後部の誘導輪基部パーツはフジミのインジェクションキットを切り取り使用す る。
背面パーツを取り付けた状態。
誘導輪支持架部はインジェクションパーツをベースにプラ材を使用して作成している。
フェンダーの作り直し。
キットパーツの寸法を元に真鍮板を切り出し、折り曲げ加工を行なう部分を罫書き針で筋を入れる。
折り曲げ加工を行なった状態。
後部の泥よけも含めてまとめて加工を行った。
フェンダーの滑り止めパターンはJADAR-MODEL製の滑り止めパターン 付きプレートを使用する。
滑り止めパターンの接着はハンダを使用する。
固定を行なう為にフェンダーパーツにハンダメッキを行う。
ミニ万力と木製ハサミを使用してパーツを固定し、ハンダゴテを当ててメッキし たハンダを溶かして滑り止めパターンを張りつける。
左右のフェンダーが完成した状態。
フェンダー固定用の軸を裏面に固定する。
フェンダーの軸を車体に差し込んで固定することで寸法の確認を行なう。
全体のパーツを仮組みした状態。
今後は内装を仕上げ、車体を固定化した後に外部の装備品類を取り付けることとなる。完成まではまだまだ遠い道のりである。

2007.08.29  フェ ンダーと内装
車体側面部の排気管を作成。
真鍮線と真鍮パイプを組み合わせた簡単な構造で、フェンダーに留め具諸共ハンダ付けしている。
フェンダー側面の固定具は真鍮板から切り出したパーツで作成。
こちらもフェンダーにハンダで固定している。
フェンダー後部の泥よけの形状が今一つであったことから、罫書き針でリベット 跡を付けた真鍮板を張りつけた。
フェンダーの状態。
残りの工作は工具類の固定具のみとなる。
車体側の排気管カバーも真鍮板加工で作成。
戦闘室の内装に手をつける。
戦闘室中央の台座部はプラ材で箱組を行った。
戦闘室内部の加工。
内部のステップは曲げ加工を行った真鍮板。内装の凹凸はプラ材を積層して組立てている。
車体側面の砲弾ラックもプラ材の箱組で作成した。
こちらもう少し工作を重ねる必要がある。
戦闘室内部の座席の基部を作成する。
L字加工した真鍮板を折り曲げ箇所に合わせて切り込みを入れ、枠状に加工する。
加工箇所の補強と切りかけ箇所の穴埋めをする為、ハンダ付け工作を行なう。
ハンダ付けの際に形状を維持する為に両面テープの上にパーツを固定する。
切りかけ部の穴埋めは細く切り出した真鍮板をハンダ付けを行なう。
座席の基部はL字加工した0.3mm厚の真鍮板を使用。
車体との固定は塗装の利便性を考えて着脱式とするため、下部には真鍮線の軸をハンダ付けしている。
車体側に開口し、座席を固定する。
微妙に左右のサイズが異なるのは工作技術の未熟さを示すものである。まだまだ精進せねば・・・

2007.10.14  工作 と塗装
前回の更新から随分と間が開いてしまった が、基本塗装まで完了した段階で途中 経過の写真と制作状況をアップしてみてる。

上下に分割されていた戦闘室の接合を行なう。
キットパーツには大きくゆがみがあり、普通に合わせただけではあちらこちらに隙間が出来てしまう。このため、上下を最大公約数的な位置で固定した後、エポ キシパテにて大きな穴を塞ぐ作業を行った。
大きな穴を塞いだ後、表面を整える為にアル テコ SSP-HGを接合部に多めに乗せた。
アルテコ SSP-HGは久しく使っていなかったせいか混合剤が固まりかけており、思うように粉末と混ぜることができずに苦労した・・・
アルテコ SSP-HGの硬化後にヤスリで形状を整える。
これで戦闘室上下の致命的な隙間は全て埋めることができた。
内装は入り組んでいる為に外装と同じ手法で は対処できない。
今回は大雑把な方法ではあるが、切り出した真鍮板で壁面を覆う方法を採用した。
戦闘室壁面には砲弾ラックが隙間無く並ぶ 為、写真のようなイメージとなる。
後々後悔したのだが、この段階で勢い余って砲弾ラックを接着してしまった・・・・
実車の戦闘室側面には生々しい溶接痕があ る。
どの様に再現するか悩んだ後、今回はエポキシパテで再現を試みる。

まずは溶接痕のラインにそってマスキングを行った。
マスキングの上から薄くエポキシパテを乗せ る。
マスキングを剥がし、厚過ぎる箇所はヤスリ で整えた。

出来は・・・・かなりイマイチなモノのなってしまった・・・_|⌒|○ .......。
溶接痕は工作面がプラ材であれば溶解したプラで、金属であればハンダで再現できるのだが、レジンではどの様な手法で再現することが良いのか、今後の研究課 題である。
戦闘室上面の工作。

雨樋と砲隊鏡のハッチはプラ材にて再現し、排気グリルは彫り込んだ後に金属メッシュを埋め込んだ。
砲隊鏡のハッチは2ヶ所にあり、片側は解放状態で作成した。
自走砲系の作成時には外せない工作である主 砲支持架の作成を行なう。
これまでと同様に金属素材による可動式とする前提で工作に入る。

まずはキットパーツの寸法を参考に真鍮材を切り出す。
ドイツ車両の一般的な主砲支持架の可動部は 車体と固定する基部と砲を固定する上部の2点となる。
車体側の基部は真鍮パイプにシャフトを通して固定する方式とした。
砲の固定部は実車ではチェーンを使用して固定する方式であるため、同様にミニチェーンをハンダ付けし、突起部にひっかけて固定する方式とした。
車体側の基部は開口してコの字加工した真鍮 板を使用する。
車体との固定は瞬間接着剤のみでは不安であるため、こちらも開口して真鍮線を通すことで強度を確保している。
取り付けた状態。
寸法はキットに準じている為、おかしな所はない。
基部の固定用シャフトは塗装が完了し、完全に固定する段階に入ってから余剰部を切除することとなる。
収納状態。
特に無理なく折り畳みが可能である。
主砲を固定した状態。
主砲の角度と支持架の角度を調整できるため、位置の調整は比較的簡単に行なえる。
戦闘室内後部のパネルは真鍮板で作成。
戦闘室上部に付くハンドルとおぼしきパー ツ。
実車の戦闘室上部は砲のメンテナンスの為に取り外せる構造をしており、このハンドルその際に使用される部位のように思われる。
工作は曲げ加工を行った真鍮線を接合して行った。
フェンダー上の装備品類と装備品ラックを作 成する。
実車の後部泥よけはスプリングで位置が固定 される仕組みとなっている。
この部位は真鍮線に導線を巻き付けたパーツを作成し、スプリングの形状に見立てている。
フェンダー上の予備履帯ラックと工具ラック は細く切り出した真鍮板で作成。
装備品類はレジン製のアフターパーツを使用 した。
製品はトライスターの1/72 ドイツ戦車用OVMパーツセット.。細部まで細かく成形されており非常に使い勝手の良いアフターパーツだが、なかなか入手 できない逸品でもある。
工具類を取り付けた状態。
レンチはMarsのレジンキャスト製アフターパーツを使用した。
前照灯の工作。
本車には奇妙な箱型の前照灯が装備されており、この形状のものは他のドイツ戦車では類を見ない。
工作はくり貫いた真鍮板とプラ材をベースに作成する。
プラ材にマイナスモールドを入れ、真鍮板を 重ねる。
車体に取り付け、配線は0.1mmの真鍮線 で再現した。
戦闘室内の砲兵鏡を作成。
関節を4ヶ所に設け、一応フル稼働する。

真鍮線と真鍮パイプの接合で作成し、先端の白色部はプラ材で作成している。
工作が完成した状態。
以降、塗装作業に入ることとなる。
車体は写真のパーツ構成にバラして塗装を行 なう。
戦闘室内が奥まっている為、この部位の塗装は困難を極めそうな予感がする。

今回はレジン・キャスト・真鍮と複数の素材で構成されている為、下地はマルチプライマーを使用した。
サーフェイサーを吹いた状態。
かなり細かい傷が目立っており、表面処理の技量の無さを痛感する。。
傷の修正は行なわず、ウェザリング段階で適当に誤魔化す方針で作業を先に進める。
影となる部分の塗装。
今回は本来の目的である基本色の濃さ調整よりは、奥まった箇所に塗料を乗せて基本色が乗り切らなかった場合の保険としての意味合いが強かったりもする。
基本色はガイアノーツのドゥルケングラウを 使用。
今回が初使用となるが、これまで使用していたグンゼのジャーマングレーと比較して若干青味が少ない雰囲気の色合いである。
まずは未調整の塗料を全体に吹き、その後、 徐々に明るめに調合した基本色を軽く吹いてゆく。
都合三回の重ね塗りを行った状態。
色が暗過ぎて写真ではさっぱり分からない・・・
フェンダー上の小物を塗装。
排気管はパステル粉をアクリル溶剤で溶いて塗装した。
期待よりも明るい色になってい待った為、後程明度の調整を行なう予定である。
工具類の下地は隠蔽力の強いシタデル製水性 カラーを使用。
金属部はブラック、木部は下地としてホワイトを塗装した。
木部の塗装はコピックマーカーを使用する。
E25 CaribeCocoaで下地を塗り、YR23 YelllowOcherで調整を行った。
木部のある装備品類は同様の塗装を行なう。
足回りの工作。
今回は全てフジミのキットに付属するパーツにて工作を行なう。

車体の塗装と同時に足回りのパーツも塗装を行った。
まずは起動輪と誘導輪を組立てて取り付け る。
上部支持輪はランナーから外した後にゴム部 の塗装と組立てを行なう。
最後に転輪を取り付ける。
転輪もランナーから外した後にゴム部の塗装を行い、組立て・取り付けを行なっている。
足回りの工作は接着剤が完全に固まるまで時 間をかけて行なう。
転輪周りの工作後、二日程度寝かせてから履帯の取り付けを行なう。
キット付属の履帯は妙に伸びのある素材で、プラスチック用接着剤で留めることができる。

履帯の幅が部分的には厚過ぎる為、余剰部をカットしてから取り付けを行った。

履帯のたれ下がり具合を表現するため、ポイ ントごとに真鍮線で抑えを入れた。
抑えに入れた真鍮線をブラックに塗装し目立 たなくする。
フェンダーを取り付けた状態。
寸法上のミスで上部履帯がフェンダーに隠れて見えなくなってしまった・・・_|⌒|○ .......。
フェンダー上のテールランプは水性塗料のホ ワイトで下塗りを行い、コピックマーカーの赤色を乗せている。

2007.10.28  仕上 げ
基本塗装後の仕上げ作業に入る。
国籍章と部隊マークのデカール張りから手をつけることとなるが、その前にディッカーマックスの配備来歴を調査し、時期想定を行った上で使用するデカールの 選定をおこなう。
本車は損失するまで第521戦車駆逐大隊に配備されて使用されたと記録されている。第521戦車駆逐大隊はフランス戦役の頃から対戦車大隊として存在して おり、その主装備はI号対戦 車砲自走砲であった。この部隊が装備していた車両の写真も現存しているおり、本車の写真で確認できる部隊章と合致する。
第521戦車駆逐大隊はソ連侵攻時には第三戦車師団に配備されており、これにより国籍章・師団章・部隊章までは確証をとることができる。
問題は戦術マークだが、どの写真を見てもそれらしきマーキングは確認できず、そもそも本車は部隊の整式装備ではないことからも特別な戦術マークが記されな かった可能性も考えられる。(対戦車自走砲小隊の本来の定数は3両であるが、本車2両とKfz.4およびKfz.15各一両のみ配備された小隊であったと されている)

問題の作業の方は第521戦車駆逐大隊の部隊章デカールは入手できていないため、似たような形のデカールを元に改造することとなる。部隊章は鹿の頭に十文 字の盾が書かれたものでLHAの部隊章を元に水性塗料を筆塗りして仕上げている。
また、国籍章は実車の写真に見られる位置、師団章は他の車両の資料から類推した位置に張ることとした。
単一塗装の装甲面にアクセントを付ける為、コピックマーカーで部分的に色調の変化を付けてみる。
過去のドゥルケングラウ単色迷彩の経験から、砂ぼこりによる汚しと輪郭を浮かせる効果を得る為、エナメルのフラットアースを薄く溶いて全体に被せる。
フラットアースが凹部に溜り、写真の様な状態となる。
凹部の拡大。
余分の残った部分はエナメル溶剤で洗い流し、汚れを残したい部分にのみ色が付くよう調整する。
フラットアースだけでは色調が明るいため、ぺトロールで薄く溶いた油彩のローアンバーを全体に塗布する。
履帯がやや蕩け気味になってしまいヒヤヒヤしたが、乾燥後は安定した為次の作業に進む。
泥汚れの表現は定番のパステルを使用する。
今回はSd.kfz.10 Demag 1t HalfTrack(50mmPaK38)を作成した際に残った複数色の混合パステル粉とMIG Productionsのピグメント(P028 Europe Dust)を使用した。
パステル粉はアクリル溶剤を塗布した上に乗せる形で撒き、生乾きの状態で毛先を短くした筆で払い落としながら調整する。
全体的に暗めな色調であることと、手で砕いた粉末では大き過ぎることから、全体的に大味な汚れ方となる。
仕上げはピグメントをパステルと同じ容量で散布する。
こちらは粒子が細かいことからより全体にぼかした様な雰囲気を作ることができ、全体的に埃を被った様な印象にするには最適である。
以上にて本作は完成とした。
足かけ3ヶ月半程であったが、本体はUS Cast製、足回りはフジミのインジェクションキット、砲身は1/48 IV号戦車と妙なハイブリッドキットと化してしまった。
勢いが切れる前に完成に漕ぎ着けたのでまずはよしとしたいが、戦闘室側面の溶接跡を始めとしていろいろと課題の残る制作であった。