本日の午前6時過ぎ、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を行いました。今回は日本列島を横断して太平洋に着弾するコースで発射されたことから、東日本の広い範囲でJアラートによる一斉通知が配信されました。

発射時間は午前5:58頃とされているため、携帯電話に通知が来たのは発射から4分後ということになります。

太平洋に着弾したのは午前6:12頃とされていますので、2分遅れでの配信となりました。

東北地方の上空を通過して襟裳岬東方約1,100kmに着弾したため、飛翔距離は2,700km、飛翔時間を逆算すると16分間ということになりますので、約秒速3km弱という速度であったことになります。北朝鮮から我が国の主要都市に発射された場合、飛翔距離1000kmとすると、約5分55秒で到達することになりますので、Jアラートが発射の4分後に発報というのは遅すぎると感じます。

 

また、今回の事案では一部自治体でJアラートが正常に動作しない事例が確認され、体制の不備が判明しました。

発射段階から列島を横断して太平洋へ着弾することが分かった様で迎撃は行いませんでした。これを批判する向きもあるようですが、人的物的被害が発生しないことが判明しているものをわざわざ迎撃する必要はないと思います。

今回は高度500kmを飛翔したとのことですので、仮に迎撃するとしたらSM-3(RIM-161 Standard Missile 3)を使うこととなります。現在、SM-3はイージス護衛艦でのみ運用されていることから、迎撃するには日本海に展開している艦艇からの対応が必要になり、SM-3の公称500km(裏話では1000~2000kmという話も・・・)とされていますので、限界高度ギリギリということになります。(ちなみに、地上発射型のPAC3は落下物を迎撃する用途から、15~20km程度の射程範囲しかありません)

つまり、今回のミサイルはミサイル防衛における上限ギリギリの距離感で発射されており、これを迎撃すると我が国のミサイル防衛能力を測ることができるということになります。いわばこれは威力偵察の様な振る舞いであり、過剰反応はむしろ手の内を見られる(=手の内を迂回する方法を考案される)ことになると考えます。

 

今回の事案では具体的な被害は発生しませんでしたが、Jアラートの問題点の洗い出しと国民に対する事態の深刻度を伝える意味では、我が国としては丁度良い演習になったと思います。