先日見つけたウォルターソンズジャパンの1/72スケール 10式戦車のキットが納品されました。

模型を購入する際には出来るだけ行きつけの模型店を使うようにしているのですが、最近は外出する機会が少ないということもありオンライン販売を使用しました。

パッケージの大きさはフジミ模型より一回り大きく、アオシマ文化教材よりは一回り小さいという感じです。

パッケージには成型色はOD色の近似色と書いてありますが、これは絶対に違うと思います。そもそも10式戦車 量産型ではOD色の単色迷彩はありませんし、成型色も色合い的には二色迷彩の緑色に近いものとなります。

パーツ構成は多すぎず少なすぎずの微妙な点数となりますが、切り出し時に破損するようなパーツは極力一体成型か省略されているため、模型初心者などにも適した設計であるように見受けられます。

車体は上面と側面が一体成形で抜かれており、車外装備品の類もほぼ造形済みとなっています。滑り止めパターンも造形されていることから、全体的にはややデフォルメされたデザインとなっていますが、軽く墨入れするだけで模型としての見栄え良く仕上がるあたりを狙った作りであると思います。

エンジンルームの給気口にはメッシュが造形されており、特にこだわらなければ実車に近い見た目を簡単に再現出来る様になっていました。

砲塔もほぼ一体成型で抜かれていますが、ハッチと照準器の一部が別パーツ化されています。環境センサーやアンテナのガードは成形すら省略されていますので、気になる人は自分で作ることができる仕様・・・という解釈で良いかと思います。

このキットの見どころは、間違いなくこの砲塔背面のバスケットであると思います。かなり複雑な形状をした部位なのですが一体成型で再現されており、形状的にも妥協が無いものとなっています。他社製品では組み立て式となっていたことを考えると、これを一体成型で打ち出す技術力は純粋に凄いと思います。

車体背面を形成するパーツも一体成型になっています。排気口の再現具合は良好ですが、テールランプなどは一工夫必要になりそうです。また、この部位に装備される牽引ワイヤーは完全に省略されており、こちらも気になる人は自作ということかと思います。

転輪関連はボルトまでしっかりと成形されていますので、サイドスカートに隠れやすい部位も妥協がありません。

履帯は軟質樹脂のベルト式となっています。他社製品がプラ履帯で再現していることを考えると、あえてベルト式にした理由は組み立て易さということなのかも知れません。ベルト式としては出来は悪くはありませんが、プラ履帯と比べてしまうとモールド・薄さともに少し残念な感じを受けます。

他社製品ではありそうで無かった戦車兵が付属します。こちらも履帯と同じ軟質樹脂製となっていますが、下地処理を行えば塗装にも耐える様です。造形自体は良好で、戦車兵独特のヘルメットも再現されていました。

デカールは点数は押さえられていますが2パータン付属しています。第1戦車大隊と第一機甲教育隊を再現できる様です。デカールの印刷品質は標準的な水準に見えますが、このあたりは実際に使ってみないと評価が難しいところです。

総論として、パーツ点数を押さえて作り易さに重点が置かれたキットではありますが、モールドの再現には意外にも妥協が少なく、かつ成形が難しい部位は再現具合を妥協せずに成形しないという選択をしている点が特徴かと思います。成形が難しい部位を無理に再現するよりは、作り手のこだわりに任せるという点でこの様な選択は望ましいと感じます。また、ミニスケールで有ることを考慮した独特のアレンジのやり方から、設計にはそのあたりの具合が分かっている人が関わっているのではないかと推察されます。

簡易キットということから普段模型を作らない人にも適していますし、現用車両を作ったことがない人の入門用にも適しています。更に、作り込みたい人にも配慮された内容となっていますので、全方位に対して適合できる作りのキットという印象を受けました。