御嶽山の噴火と自衛隊の災害派遣に関する記事を投稿しましたが、災害派遣と装甲車の関係についてネット上で興味深い議論がされていました。

話題の出元は以下となります。

 

御嶽山の噴火に関する被災者救助に自衛隊を投入したことについて

 

いろいろなコメントが付いていますが、災害時の装甲車の適正について JSF(obiekt_JP)さん が詳しく解説しています。

JSF(obiekt_JP)さんは軍事情報ブログ「週刊オブィエクト」の管理人で、様々な軍事情報について解説をされている方です。

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今回の災害では89式装甲戦闘車が投入されています。

JSF(obiekt_JP)さんの解説では、火山噴火に伴う災害に対する装甲車の適正は以下となります。

 

① 装甲による噴石への耐性

② NBC戦に対応した装備により、火山ガスの影響からの防護

③ 装軌式による不整地の走破性

④ 鋼鉄製車体による耐熱(だたし、アルミ装甲は耐熱性が低い)

⑤ 操縦者以外の人員が搭乗できる構造

 

これらの特性を備えた装甲車の用途としては、以下が上げられています。

 

・ 走破可能な位置までの救助隊員輸送

・ 中継ポイントとしての活用(光学観測装置・無線装置などを活用)

・ 要救助者の避難場所としての活用

・ 要救助者の搬送

 

また、鋼鉄製の車体は耐熱性も高く、埋没するような事態に至らなければ多少の火砕流には耐えられる様です。

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個人的に興味深い内容としては、鋼鉄製装甲とアルミ装甲の耐熱性に関する違いです。

アルミ装甲は100℃程度で強度が低下しはじめ、300℃で焼なまし状態となるそうです。このため、局所的に高温が発生する可能性がある火山災害地ではアルミ装甲では耐熱性に問題があるとのことでした。

昨日の投稿でAAVP7の活用について記載しましたが、AAV7シリーズはアルミ合金の全溶接構造であるため、火山災害地での運用には問題があるということになります。

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自衛隊が装備した装甲車両とスペックは以下となります。

60式装甲車 73式装甲車 89式装甲戦闘車 AAVP7
 採用年 1960 1973 1989 2015(予)
装甲  鋼鉄製 アルミ合金製  鋼鉄製 アルミ合金製
乗員 4名 4名 3名 3名
 兵員  6名  8名  7名 25名
重量  11.8t 13.3t 26.5t 25.6t
 行動距離  230km  300km  400km 483km
NBC防護 なし あり  あり あり
生産/調達数 428両 336両 68両 52両(予)
備考 退役済み 現役 現役 配備予定

 

並べてみると一長一短という感じも受けますが、最も適正が高いのは89式装甲戦闘車であることが分かります。