2月10日から12日にかけて、安倍総理大臣とトランプ大統領の首脳会談が行われました。
大統領就任後初めての首脳会談となりますが、当選した直後の11月17日にも渡米して直接対話を行っていますので、実質的には2度目の対話となります。
今回の渡米には、安倍総理大臣の他、麻生財務大臣、岸田外務大臣、世耕経産大臣も同行しており、対するアメリカ側はトランプ大統領の他にマイク・ペンス副大統領などが参加したと報道されています。
首脳会談後、共同記者会見と共同声明文が発表されました。
共同声明文(邦訳)
我が国の国防に関わる日米同盟の方向性については、以下の内容が明文化されました。
両首脳は、日米安全保障条約第5条が(沖縄県の)尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。日米両国は、東シナ海の平和と安定を確保するための協力を深める。両首脳は、航行及び上空飛行並びにその他の適法な海洋の利用の自由を含む国際法に基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調した。日米両国は、威嚇、強制または力によって海洋に関する権利を主張しようとするいかなる試みにも反対する。日米両国はまた、関係国に対し、拠点の軍事化を含め、南シナ海における緊張を高め得る行動を避け、国際法に従って行動することを求める。
日米両国は、北朝鮮に対し、核及び弾道ミサイル計画を放棄し、更なる挑発行動を行わないよう強く求める。日米同盟は日本の安全を確保する完全な能力を有している。米国は、あらゆる種類の米国の軍事力による自国の領土、軍及び同盟国の防衛に完全にコミットしている。両首脳は、拉致問題の早期解決の重要性を確認した。両首脳はまた、日米韓の3か国協力の重要性を確認した。さらに、日米両国は、北朝鮮に関する国連安保理決議の厳格な履行にコミットしている。
共同声明発表の後、両首脳は大統領専用機でフロリダ州パームビーチに移動。
首脳のみでゴルフ(という名前の密談)を行いました。
ここまで大っぴらな密談も珍しいと思いますが、日米の協調歩調を全世界にアピールするには絶好の機会となりました。
そして、釣れました
2月12日未明、北朝鮮が中距離弾道ミサイルを発射。500km程度飛翔した後、日本海の排他的水域外に着弾しました。
亀城から500kmの飛翔というのがどの位なのかを示した資料がなかったため、作ってみました。太いラインが500kmの距離、細いラインの赤が我が国の排他的経済水域(EEZ)、黄色が韓国との共同経済開発区域となっています。(かなり適当に線を引いています)
500kmの飛翔ではEEZまでは到達しませんが、今回発射した弾道ミサイルの射程は2,500~4,000kmとされていることから、余裕で我が国全域や東シナ海を射程に収める性能があります。
これに対して、日米首脳は即座に反応
両首脳が並んで会見を行い、
安倍総理 「日米同盟を緊密化、強化していくことで完全に一致した」
トランプ大統領 「同盟国である日本を100%支持する」
とのコメントを発表しました。
公海上への着弾であり実害も発生していないことから具体的な制裁まで言及するレベルの対応はできませんが、結果として日米首脳の連携を追加でアピールできたことになります。
今回のミサイル発射は共同声明文に対する示威行為となりますが、問題は誰の意思で行われたかという点にあります。
北朝鮮の事情を鑑みると、韓国の国情が荒れており親北の左派政権が誕生する目前というこの時期に、韓国との軍事的緊張関係を助長するような行為をすることは国益にかなうとは考えにくいと思われます。北朝鮮は頻繁に示威行為を繰り返していることから失念しがちですが、弾道ミサイルの発射は約1年前(2016年2月7日)以降行われていませんでした。日米の共同声明で言及されたとはいえ、今現在から劇的に情勢が悪化するような状況ではない中での今回の示威行為は合理性が低いと考えられます。
このことから、共同声明の内容が不都合な別の国、「尖閣諸島が日米同盟の防衛義務範囲内」「南シナ海における国際法の順守」と明文化されて狙い撃ちされたチャイナの意思が働いていると考えると大変分かりやすくなります。
流石にチャイナが直接示威行為(例えば、尖閣諸島周辺や南シナ海への軍艦・軍用機の派遣)を行うことは現場における事態のエスカレートにつながるため、北朝鮮に代理行為を行わせたとも考えられます。結果としては、示威行為に対して即座に両首脳が揃って対応されたため、更に意思を示されたということになりました。
今回の首脳会談はおまけ付き概ね成功であったと思います。
そして、両首脳の動きに目を奪われたためか、同行した財務大臣・外務大臣・経産大臣が誰と何をしていたのかが全く出てきません。そして、その事を言及するメディアが居ないというお粗末ぶりを発揮しています。第二次安倍政権以降、与野党とメディアは政権側の欺瞞戦術に負け続けていますが、未だに同じ手で攪乱されているわけです。