年末年始のタイミングで、今年は台湾に来ることができました。昨年は諸般の都合で国内で過ごしていましたので、二年ぶりの訪台となります。

台北に宿を取り、ここを起点に日帰り範囲で行けるところに足を伸ばしています。今年は年末年始と週末が被らなかったため「國軍歴史文物博物館」を見にゆくことができました。

今年(2019年/民国108年)は古寧頭の戦いから70年に当たるため、特別展示として取り上げられていました。我が国としては国民党と共産党の戦いである古寧頭の戦い(金門島の戦い)はメジャーではありませんが、この戦いには国民党を支援するために根本元陸軍中将が密航して参加していましたので無関係ではありません。

国共内戦に敗北した国民党の蒋介石が台湾に逃げ込むに至り、追撃する共産党軍を撃破した戦いが古寧頭戦役となります。伝えられているところによると、根本中将は大陸からの軍民引き上げ時に国民党から支援が得た報恩として密航して作戦指導に当たったと言われています。

厦門を放棄して金門島の撤退し、上陸してきた共産党軍を殲滅・揚陸戦を破壊することで共産党軍の前進を食い止めたそうです。古寧頭戦役後も大陸側からの砲撃が続き「金門砲戦」と呼ばれる状態が続きましたが、共産党軍の再上陸は行われず現在の中華民国と台湾の政治状態が確定する結果となりました。

残念ながら、展示物の中に根本中将に関する記述を見つけることはできませんでしたが、古寧頭戦役は国民党軍が日本人の作戦指揮の元でアメリカの兵器を使って戦うという米ソ冷戦の縮図のような戦いであると共に、この構図は今後の国際政治状況とも重なって見える思いがします。

他の展示は以前と変わることがなく、中華民国視点からの歴史が語られている展示となっています。現在の一般的な歴史観での展示となりますが、ヴェノナ文書の分析などが進めば従来の史観は共産主義対その他陣営(日本・中華民国・アメリカ)の構図で再定義されることになるかもしれません。

我が国では清朝崩壊後の軍閥は張作霖くらいしか名前が出てきませんが、当時の情勢を展示したパネルがありました。国内がここまで乱れてしまえば諸外国に付け入られるのはいわば当然で、歴史は繰り返すの言に従えば、これは未来の大陸の姿となるのかも知れません。

近現代の展示では見事な小火器類のコレクションを見ることができます。

訪台するまで知らなかったのですが、2018年にこの博物館の収蔵物であった日本刀を強奪した暴漢が総督府に侵入し、捕縛しようとした憲兵を負傷させる事件が発生したそうです。この関係で博物館自体は休館となり防犯体制の強化などを行ったそうです。(荷物は入館時にロッカーへ納める方式になりました)

この様な事件があったことから展示物が減ってしまうのではと懸念したのですが、以前とほとんど変わりのない展示となっていて安心しました。

この博物館の古今東西の小火器コレクションは素晴らしいため、これらに興味がある方には是非ともおすすめのスポットになります。

今年はラトビアでも飽きるほど見たマキシム重機関銃はここにもありました。この機関銃が世界中に渡ったことで戦争の様相が一変したと思うと、歴史を変えた火器と言って差し支えないかと思います。