武漢肺炎のウィルス禍が世界を覆いつつあり、様々なイベントや仕事の延期・中止が相次いでいます。公衆衛生の観点では必要な措置となりますが、今後の経済的影響を如何に低減するかも考えつつ状況に合わせた柔軟な判断が必要になると考えています。

週末から気温が下がり本日も冷たい風が吹いていましたが、皇居の大手町門付近では桜が咲き始めていました。寒い日があっても確実に春が近づいていると感じました。

武漢肺炎のウィルス禍は世界的に政治戦・情報戦の様相を呈していますが、ウィルス感染自体は純然たる科学の問題ですので、事実関係を把握することが情勢を判断する上で重要なポイントとなります。

私は全体傾向を把握する情報源としてWorldmetorの「COVID-19 Coronavirus Outbreak」を参考にしています。

情報を読む際には、個々の国の状況よりは検査母数の大きさ(全世界の合算値)と比率にあります。特に軽傷者・重症者の割合と死者の割合は傾向を把握するために注目すべき指標であると思います。

我が国は最初に被害を受けたグループに属しますが、増加の傾向と100万人当たりの感染者数を見ていると、他国と比較して抑え込みには成功しつつある様に見受けられます。

個人的に関係のある、台湾とラトヴィアの状況にも注目してみました。

ラトヴィアは地理的に遠いというアドバンテージがありますが、徐々に感染者が出ていることが分かります。東欧の田舎の様な地理条件でも感染者が出ているということは、全世界での感染は避けられないことを示していると思いました。

台湾の状況の優秀さについては注目すべきものがあります。地政学的条件が我が国よりも悪いにも関わらず、100万人当たりの感染者数は圧倒的に低く抑えることができています。仄聞するところによると、2004年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が広まった際に台湾は被害を受け、感染症対策については挙国体制で対応する政治的下地があったことが大きいそうです。

 

孫氏では「敵を知り・己を知れば・百戦危うからず」という格言がありますが、台湾政府は11月に武漢肺炎が発生した際に武漢在住の人を招集して情報収集を行ったそうです。また、同じく孫氏には「兵は拙速を尊ぶ」という格言もありますが、台湾政府は昨年のうちに対策に動き始めており、これはまさに格言を実践した行動であったと思います。

台湾政府の動きが速かったことは、文化圏的な適性からヒューミント(HUMINT、human intelligence、人間を媒介とした諜報)による情報収集が直接できた点は大きいと思われます。その点、我が国はオシント(OSINT、open-source intelligence、公開情報を媒介とした諜報)を軸としているため、判断が遅れる原因になったのではないかと考えられます。

この台湾の実績は注目すべきポイントを含んでおり、アメリカ・チャイナの冷戦が始まっている現状において、アメリカ勢としては情報戦の最前線として台湾の取り込みが益々重要になったのではないでしょうか。

武漢ウィルス禍は終息が見える情勢ではありませんので、実際の数値を根拠としたバイアスの少ない情報を元に各自の判断で決断をして対策を行う状況がしばらくは続くと思われます。