4月16日、霞ヶ浦駐屯地にてAAV7が公開されました。

いまさらですが、2月20日に横浜に陸揚げされ、4月より各種試験に供するとの報道があったようです。(忙しくて気が付きませんでした・・・)

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今回公開された車両は平成25年度予算にて調達された4両の内の1両で、人員輸送型として使用されるAAVP7A1 RAM/RSです。

昨年度の予算ではこの4両で打ち止めですが、平成26年度概算要求では指揮通信型 AAVC7、回収型 AAVR7が各1両ずつ追加調達される予定となっています。また、中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)では、計52両の調達する方針が明記されています。

価格は4両でおよそ5億円とのことですので、1両あたり1億円前半ということになります。73式装甲車や96式装輪装甲車も1両あたりの調達価格は1億円強とされていますので、中古でほぼ同じ価格帯ということになります。

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公開された写真をみたところでは、米国海兵隊向けの迷彩が施されており、輸入後に再塗装は行われなかったようです。

更に、通常は識別番号が記入される車体前面の前照灯の間の空間には塗りつぶしたような跡が見受けられることから、米国内で使用されていた車体を整備して送ってきた中古ということかと思われます。

まずは配備前の試験に用いられる車体ですので中古で十分かと思われますが、正式配備時には新造車体を調達できるのかは気になるところです。

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AAVP7A1には全周回砲塔が設けられており、米国では重機関銃と自動擲弾銃が同軸搭載されていますが、公開された車両では武装が取り外されていました。

武装については整備性と弾薬の互換性を鑑みると、ライセンス国産の12.7mm重機関銃M2、96式40mm自動擲弾銃あたりに換装されるのかもしれません。

また、公開された車両にはEAAK(強化型増着装甲キット)は装備されていませんでした。平成26年度防衛予算概算要求ではEAAKが装備されたイラストが出ていますので、本配備時には装備される可能性はあると思います。

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過去の事例から輸入兵器をそのまま使う事は少なく、何らかの形で日本仕様に変更する場合が多く見られます。

このため、今回輸入された4両を用いた試験を通して自衛隊仕様を確定し、本配備時には細部に変化が生まれるかもしれません。

 

以下、勝手な推測となります。

水陸両用の装甲車を調達するとした際、早急な戦力化が求められる昨今の事情から国産開発は選択肢になりえず、輸入とした場合に我国が現実的に調達できる車種はAAV7しかない状態でした。

1960年台に開発された車両である点を上げて否定的見解を述べる自称専門家がいましたが、現在主流となっている車体は1980年台に再設計されたAAVP7A1となっていおり、これを採用している周辺国は台湾、タイ、コリアとなります。

約70年ぶりに水陸両用車を装備する我国として迅速な戦力化を求めるのであれば、運用実績が十分にある枯れた車輌を導入する選択は妥当であったと思います。

 

中期防が公開された際に驚いたのは、制式採用前に52両の調達が明記された点でした。

水陸両用部隊が無い現時点でこの台数の調達、しかも運用に必要な海上輸送手段が限られていることを考えると、この台数を調達して一度にどこまで展開できるのか・・・という点については全く分かりませんでした。

しかし、陸上自衛隊で進められている普通科中心の再編成を考え合わせると、陸上での兵員輸送、特に市街戦時における兵員輸送にはそのまま転用できるのではないでしょうか。

 

兵員を輸送できる装甲車として期待されていた89式装甲戦闘車は、価格高騰と時代の変化に取り残されて、僅か60両余りで調達が中止されてしまいました。このため、現在の時点で人員の輸送は96式装輪装甲車か非装甲のトラックが主体となっており、装軌式の兵員輸送車73式装甲車のみとなっています。

73式装甲車は1973年採用の車体であり、ほぼ同時期に調達された74式戦車が耐用年数の限界に達していることを考えると、今後も長い期間に渡り使い続けることは困難であろうと思われます。

この様な状況を鑑みますと、AAV7を装軌式装甲兵員輸送車として使う素地は十分にあると思われます。