1月24日、オットー・カリウス氏の訃報が流れました。
オットー・カリウス氏は元ドイツ国防軍中尉で、先の大戦において戦車長として150両を超える戦車を撃破したエースの一人です。
独ソ戦の初戦となる「バルバロッサ作戦」に38t軽戦車の戦車兵として参戦、次いで第502重戦車大隊にてティーガーIの戦車長としてソ連軍を相手に転戦します。
大戦末期には第512重戦車駆逐大隊にてヤークトティーガーに搭乗して西部戦線で米英軍と戦いますが、終戦になりアメリカ軍に降伏しました。
この体験を綴った『Tiger in the Mad』(泥の中の虎)が有名で、邦訳(邦題:『ティーガー重戦車 第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録』)されています。
邦訳の回顧録は上下巻に分かれています。
上巻は訓練時代から始まり、38(t)戦車でのソ連戦への参加とT-34の脅威、ティーガー戦車で戦車長キューポラに直撃を受けるも難を逃れた逸話、そしてマリナーファにて第2中隊を率いて多数のソ連戦車を撃破する戦果を上げます。
下巻ではデューナブルグの防衛戦を経てベルリンで指導者層との邂逅、そして第512重戦車駆逐大隊への転属とヤークトティーガーを使った最後の戦いと終戦という流れになります。
本書を読んだのは数年前ですが、延々と続くかと思われた戦いの日々が突然来た終戦と同時にぱったりと途切れる瞬間が非常に印象深かったことを覚えています。
回顧録は終戦と同時に終わってしまいますが、戦後は故郷のラインラントに戻り、薬剤師として「Tiger-Apotheke(虎薬局)」を開業して、終生店頭に立ち続けたそうです。
こちらのサイトには訃報と同時に、晩年のオットー・カリウス氏の遺影が掲載されています。
先の大戦の終結から70年、当時第一線で戦った人の多くが既に鬼籍に入っていますが、オットー・カリウス氏が残した回顧録は当時の戦いの様子を今に伝える貴重な証言であると思います。
ご冥福をお祈り致します。