昨年、1月15日に瀬戸内海で発生した海上自衛隊のおおすみ型輸送艦1番艦「おおすみ」とプレジャーボートが衝突した事故に対し、運輸安全委員会の報告書が提出されました。

報告書では「プレジャーボートが、輸送艦の前を横切ろうとした際に衝突した可能性が高い」との見解が出されており、プレジャーボート側の過失であることを示しています。

 

この事故に注視していた人達の間では、事故当初より同じ見解が示されていました。

この見解の根拠としては、「おおすみ」の左舷後方に対してプレジャーボートの右舷がぶつかっており、衝突箇所と航路から考えるとプレジャーボート側がぶつかって行ったとしか解釈できない状況であったということがあります。

下の画像は事故前後の「おおすみ」の航路ですが、「おおすみ」は直進、ないし右に舵を切っており、この状態で「おおすみ」の左舷後方に衝突するにはプレジャーボート側から近づかないと事故には至りません。(この画像にはプレジャーボートの航路はプロットされていません)

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事故発生時の「おおすみ」の航路(プレジャーボートの航路はプロットされていません)

更に、「おおすみ」とプレジャーボートの航路情報を示す画像が事故当日より出回っており、これを見ると「おおすみ」の航路にプレジャーボートが絡むように航行していたことが読み取れます。

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「おおすみ」の様な珍しい大型船を見かけたら近づいてみたい気持ちになることは分からなくはありませんが、大型船の前をぎりぎりのところで横切るというのは無謀過ぎます。

当時の議論の内容などは以下のサイトを見ていただくと分かります。

 

2014-01-16 自衛艦が悪い?? マスゴミ@よもぎねこです♪
2014-01-22 前科船 海自艦釣り船衝突事件@よもぎねこです♪

 

1年余りの検証期間を経て、上記の議論が正鵠を射ていたことが証明されたと思います。

 

尚、船舶には「自動船舶識別装置」が搭載されており、この装置が有効化されている時には定期的に航跡としてGPS位置情報を送信する仕組みとなっています。

そして、この定点観測された航跡情報は以下のサイトで一般人も見ることができます。

 

MarinerTraffic

 

海上自衛隊の艦艇は秘匿性のある作戦行動中には「自動船舶識別装置」を無効にしているため航路が分かりませんが、国内での移動任務中などでは有効にしている場合が多いことから事故当時も一般人が航路を確認することができました。

昨年9月に投稿した、「佐多岬にて」では、伊方原子力発電所を海上で警備する海上保安庁の巡視船を取り上げていますが、こちらの船舶情報も上記のサイトより検索して参考にしています。

 

インターネットが一般に公開されて20年余り経ちますが、一般人(とは言っても、特定分野の専門家の集まりとも言えます)がマスコミに頼らずに公開情報を元に事故検証が行える所まで進歩したということを実感する事件でした。