邦画「シン・ゴジラ」のネタバレを含む感想です。鑑賞する予定がある方は読まないことをお勧めします。

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感想までの隙間に公開されているTV CMと予告を張っておきます。

 

感想はここから。

なかなか興味深いプロットも多かったため、印象に残ったシーンごとに区切って感想を書いて行きます。

 

◆第二形態

本作でゴジラは第一~第四形態まで個体進化を続けて行きます。地上に現れるのは第二形態からになりますが、この第二形態がウツボの様な顔をしていて、良い意味でも悪い意味でも酷いデザイン(笑) 。

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ウツボはこんな顔

こんな顔の生き物が川を遡上して蒲田に上陸したシーンでは思わず吹き出しました。パンフレットによると、第二形態は水から上がったばかりの両生類の様な位置づけ(第一形態は水生生物)とのことで、無表情の魚の目をつけたらこうなったそうです。

 

◆首相の発言

上陸後、政府は対策会議を継続しますが、首相から「現場に行ってみなければどうなっているかわからん!」という趣旨の発言があります。これはもちろん、東日本大震災の後の福島原子力災害で無謀にも現地入りして現場の時間と労力を浪費した某人物への当てつけ。決裁権が集中した立場にも拘わらず、このくらい危険で無謀なことをやったんだという比喩だと思います。(決裁権の集中具合は、前後のシーンで幾度も出てきます)

 

◆最初の上陸時の攻撃中止判断

蒲田に第二形態が上陸した後、政府は自衛隊の防衛出動を決定。木更津から対戦ヘリ AH-1S 4機が攻撃に向かいますが、発砲直前に逃げ遅れた民間人が発見されて攻撃が中止されます。

現在の価値観としては当然と思われるこのシーン、おそらく自衛隊が武力でゴジラを撃退できる最初で最後のチャンスであったと思います。ここで躊躇わずに攻撃を加えていれば、第四形態の上陸による大規模な被害と犠牲を防ぐことが出来たと仮定すると、大目標を忘れて人道主義を根拠に日寄った判断をすると取り返しのつかないことになるという比喩であると感じました。

 

◆首相官邸前のデモ

内閣官房副長官を中心に対策チームが首相官邸で対策の検討と準備を進めていますが、その周りには群衆が詰めかけて騒いでいるシーンがあります。

この群衆の主張が、「ゴジラを殺せ!」ドンドンドンドン(太鼓の音)「ゴジラを殺せ!」ドンドンドンドン(太鼓の音)という感じで、ここも吹き出しました。これは言わずもがな、特定機密保護法や安全保障法制の際に同じことをやった団体の比喩(しかも、殺すことを要求するところが秀逸!)でした。

 

◆多摩川河川敷の作戦

第四形態が鎌倉に上陸。首都圏への侵攻を防ぐために自衛隊は多摩川河川敷に防衛線を引きます。

ゴジラと戦って負けるのは自衛隊の伝統(?)な訳ですが、1発も的を外さない自衛隊の練度で現用兵器を運用した総攻撃も全く効果がありません。ここで興味深いのは、ゴジラは全く反撃をせずに淡々と前進を続けます。この作戦の失敗により、日本政府は武力での打倒を断念することになります。

 

◆米軍の爆撃と反作用

米軍のB-2爆撃機3機(4機?)がグアムより飛来、バンカーバスターを投下します。

これは効果がありゴジラの肉が裂けて体液が溢れたことで「これは行ける!」と観客が思った瞬間、ゴジラに異変が発生。吐瀉物を吐いたかと思うと、あっという間に火炎に変わり、そして熱線化して上空のB-2を一撃で撃墜します。そして、巻き添えで東京は火の海に・・・・

日本の首都で爆撃を敢行した米軍の爆撃機を撃墜するも、首都は火の海というプロットは東京大空襲を彷彿とさせます。初代ゴジラでも都市が炎上するシーンがありますが、これに匹敵する恐怖感を抱かせる映像だと思いました。

 

◆主力はコンクリートポンプ車

国連安保理が決議した核攻撃によるゴジラ殲滅のタイムリミットが迫る中、ゴジラの動力源たる生体原子炉を停止させるための作戦が決行されます。

この作戦の主役は戦車でも戦闘機でもなくコンクリートポンプ車。そして立ち向かうのは官軍民を合わせた混成部隊となります。作戦は無人電車爆弾による連続攻撃に始まり、米軍提供の無人機からの飽和攻撃でゴジラにエネルギーを消費させ、さらには巡航ミサイルの攻撃と爆破で高層ビルを倒壊させて押しつぶし、倒れたところにコンクリートポンプ車が血液凝固剤を流し込むという内容で、現代日本が持てる手段を全て投入した文字通りの総力戦でした。

本来はビル建設の際に使用される重機であるコンクリートポンプ車が決戦兵器になるという展開は、福島原子力災害で炉心冷却の決め手となったのがコンクリートポンプ車による注水であったという事実と重なります。このあたりも脚本家のこだわりを感じる所であると思いました。

 

◆造形と尻尾の先端

本作はゴジラの尻尾の先端のアップがラストシーンとなりますが、そこに映される内容が様々な憶測と議論を生んでいます。

所説乱れ飛んでいますが、答えはパンフレットに書いてありました。本作のゴジラは個体進化を続けており、劇中でも無性生殖で繁殖する可能性が指摘されていますが、尻尾の先端はまさにこれから生まれようとしてくるゴジラの分身であるそうです。ただ、形状が定まる前の状態であるため、様々な生物の特徴を持たせた造形にしたとのことでした。

尻尾の先端から熱線を放射する際に口が開くような動作がありましたので、進化を続けさせると尻尾の先から新たな個体が生まれて来るということになる可能性もあったわけです。次回作があるとすれば、このあたりからスタートするのかも知れません。

 

◆ゴジラがもたらす希望

ゴジラの体細胞から分子構造を変換する細胞膜が発見され、これによりゴジラは水と空気からエネルギーを無尽蔵に作り出すことができると説明されています。この分子構造を人類が扱えるようになれば、無尽蔵にエネルギーを得ることができるようになり、これはエネルギーを外国に依存する日本にとっては正に夢の物質・技術といえるものです。

核攻撃でゴジラを消滅させる選択を政府が受けいれた背景には、世界からの同情による復興資金の援助を期待してのことであるとの会話がなされますが、核攻撃を阻止してこの物質を扱えるようになれば十分に自力復活が可能であると思われます。

これは、他国の力に頼るのではなく自らの力と可能性で活路を開くことの大切さを示しているように感じました。

 

一回目の鑑賞で得た感想は以上となります。できれば再度見に行きたいと考えていますので、追加の感想があればこちらに追記します。