今年の夏は予想通りに多忙な状況となり、サイトの更新は元より模型関連はほぼ手つかずという状況に陥っています。

それでも物事は着実に動いており、まずは7月23日開幕した東京オリンピック2020は8月8日で無事に終了しました。 薄皮一枚程度ではありましたが本業の方でも関係があり、一年延期の上に開催も不透明という状況下において開催が可能な体制を維持し続けた現場の方々には敬意を評したいと思います。

そして、8月24日からはパラリンピックが開幕します。

開会に先だち、22日にはブルーインパルスによる展示飛行の予行演習が行われました。

幸いにして自宅のテラスが都心に向いた方向にあることから、今回も自宅で航空ショーを楽しめました。22日は生憎の曇り空でしたが、今回は飛行コースが自宅に近いことからスモークをはっきりと見ることができました。24日はリモートワークの勤務日ではありますが、飛行展示を見ることが出来るのではないかと期待しています。

 

◆コロナウィルス状況

国内の状況としては、7月半ばからデルタ株とされる変異株の感染が激増しており、またもや緊急事態宣言ということになってしまいました。

厚生省のサイトではオープンデータ化された感染者数など諸々の情報が提供されていますので、個人でも一次情報となる統計結果を参照することができます。

 

新型コロナウィルス感染症について

データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-

 

厚生省のサイトでは過去一年までした期間指定が出来ませんので、オープンデータのCSVをExcelに食わせて昨年の感染者確認から現在までのトータルのグラフを作ってみました。

波の具合を見ると、第5波と読める現在の状況は感染者数が激増していることが分かります。

ただし、今回の感染者の増加はこれまでとは傾向が異なることが累積死者数のグラフ(こちらは厚生省のサイトから拝借)と合わせて見ることで分かります。

今年の年初と5月頃は感染者数に合わせて累積死者数の比例関係が見えますが、7月半ば以降はこの比例関係が見られません。これはワクチン接種による効果なのか、それとも今回の変異株は毒性が弱いのかまでは読み解けませんが、明らかに傾向が異なることが見て取れます。

 

現在ばかりを見ていても仕方がないので、この感染症の傾向と今後の動きを予測してみます。今年は感染発生から二年目になり昨年分のデータがありますので、ここから傾向を見てみます。

まずは昨年(2020年)のグラフ。初の感染者が確認されたのが1/26ですが、縮尺を合わせるため1/1からデータでグラフをプロットしてみました。昨年は4~5月、7~9月、11~12月の3回、感染者が増加した波がありました。この時点で、夏にも冬にも流行る厄介なウィルスであることが分かると思います。

次に今年(2021年)のグラフとなります。まだ8月半ばですので、グラフの縮尺を合わせるために残り年末まではデータなしでプロットしています。

今年は昨年末から引き継いだ1月から感染者が居ますので、1~2月、4月~5月、7月半ば~現在の3回の波があることが分かります。興味深いことはこの発生タイミングは昨年と全く同じ時期を示していることから、感染者数の増加は季節的な要因により引き起こされている可能性を見ることができます。

このまま推移した場合、昨年と同じ傾向を示すのであればあと一ヶ月程度で感染者数が落ち着き、次は11月頃に波が来る可能性が予想されます。感染者の増加タイミングについては昨年と比べると半月くらいの揺らぎがあるようにも見えますが、これは昨年に比べると母数が多い事による錯誤であるかもしれません。

 

◆身近な状況

あまり身バレする情報を載せたくはないのですが、住居がある杉並区のワクチン接種体制はなかなか残念な事になっています。接種券自体は6月中に届いていたのですが、年齢別に接種予約開始が別れており私の世代は7月27日から予約開始となっていました。しかし、全く予約が取れない上にワクチンの数が足りないということで8月前半は予約自体が止まってしまい、8月16日から再開、接種できるのは9月との回答が来てしまいました。

明らかに他の区(除く:世田谷)よりも接種できる状況が遅く、妙だと思っていたら区議会議員が内情を暴露してくれました。

https://twitter.com/fujimoto708/status/1414500848520945668?s=20

 

 

ワクチンの供給を管理するため、政府は「ワクチン接種記録システム (VRS: Vaccination Record System)」を提供しており、各地方自治体の在庫管理を行っています。上記の情報は7月前半時点での話となりますが、実際の接種数の4割程度しか入力できていないことが暴露されており、自治体としての区の管理体制がお粗末であることが遅れの原因となっていた様です。

 

その様な状況でしたが本業の職域接種が再開され、9月10日に1回目の接種の予約を取ることができました。残念ながら家人は職域接種の対象とならないため、自治体か自衛隊の大規模接種会場で予約が取れるまで待つ必要があります。副反応が出ると2日ほど寝込むという話を多く聞きますので、接種タイミングがずれること自体は危機管理の観点では問題はないと思いますが、いかんせん接種が遅れているという点は残念の一言に尽きると思います。

その様な昨今ですが、ついに直接の知人で感染者が出てしまいました。母数が多いことを考えればやむなしという状況ではありますが、いよいよ持って身近に迫ってきたなという気持ちになります。感染した当人は3週間ほど休んで回復したそうですので、大事には至らず良かったと思います。

 

◆再び身近な話

7月頃からリモートワーク環境の改善を目的とした自室のレイアウト変更と掃除を続けています。今月に入り模型作成の作業場も手入れを始め、2周間ほどかけて片付きました。

机自体は以前から使用していたものですが、作業場としては奥行きが足りておらず板を乗せて面積を稼いでいたました。今回は机と壁の間に30cm程度の奥行きの背が低い本棚を入れて道具類の置き場を確保し、机上は作業スペースのみという構造に変更してみました。

こちらが片付いたことで、ようやく模型を再開できる環境が整いました。

 

◆読書

先月刊行された「ラストエンペラー習近平」(エドワード・ルトワック / 奥山真司[訳])を読みました。

発売前に予約した関係から、今回は紙媒体で購入しましたが、現在はKindle版も出ているようです。

エドワード・ルトワック氏はアメリカのシンクタンク「米戦略国際問題研究所(CSIC)」の上級顧問を務めるフリーランスの戦略家で、訳者の奥山真司氏はカナダ・イギリスで戦略学を学んだ戦略学博士となります。本書はこの二人が組んで刊行した新書の4冊目にあたります。タイトルからチャイナ問題を取り扱うことは見て取れますが、実際には全体の1/3が「チャイナ問題」、次の1/3は「軍事における技術発展」、最後の1/3は「戦略におけるパラドキシカル・ロジック」となっています。

「チャイナ問題」は現時点(2021年7月)における状況分析と今後の予測と日本への戦略的な提言が含まれており、メディアでは取り上げられない側面からの解説となっています。

「軍事における技術発展」では、過去の歴史においてミリタリーバランスを一変させた技術というものは、実は軍の本流ではなく傍流で採用されたものから発生するという解説を行っています。第一次世界大戦の機関銃、第二次世界大戦の戦車は共に本来装備すべき軍(陸軍)では採用がなされず、海軍から採用が始まったという話は大変興味深く、技術を採用するたの障壁は実は技術そのものではなく組織に起因することを示しています。

また、現在進められている軍によるドローンの採用は、人命よりも安価に使い捨てることができる点(逆に言えば、高価なドローンは無用の長物)が評価されているとの言及がなされます。そして、我が国の生命線とも言える台湾海峡で対峙するチャイナ海軍の増強に対しても新しい視点が示されています。ルトワック氏いわく、海軍における艦艇とは「潜水艦」か「潜水艦の標的」のどちらかに整理されると述べています。それ程までに潜水艦の威力は強力であり、見かけ上の艦艇数などは議論にもならないということです。

しかし、注意すべき点は海警局が強化を進めている自称「巡視船」で、これは体当たりを前提とした構造となっていることから、発砲せずに暴力を行使できるという点が国際法上の盲点を突いています。これにドローン制御の様な技術が組み合わさると、無人の体当たり船舶(おそらく、自称「探査船」とかになるのでは?)という新しい分野の兵器が出てくる可能性が示唆されています。

この様な方向性については既視感があり、2019年に幕張メッセで開催されたDSEIにて無人哨戒艇と無人探査艇のカタログが出ていたことを思い出しました。

 

技術論としても興味深い内容の後、本書の注目すべき箇所と感じた「戦略におけるパラドキシカル・ロジック」が述べられます。

パラドキシカル・ロジック(逆説的論理)はルトワック氏が提唱した戦略の考え方で、自身の「作用」に対する相手の「反作用」により、戦略は思い描いた通りには進まないことを示す論理となります。この論理のロジックをわずか1ページ(P171)で解説し、更に理解を深めるために「木の枝と蛇の寓話」が述べられています。戦略における先読みの難しさは、クラウゼヴィッツが述べた「戦場の霧」などが有名ですが、パラドキシカル・ロジックを考慮すると戦場の霧は必然として理解することができます。

戦略を意図通りに進めるには、パラドキシカル・ロジックの発動を如何に抑え込むかにかかっており、本書では方法論の一つとして「奇襲」の有効性を述べています。これは、「奇襲」により相手の意表を突くことにより、相手の思考に空白期間を設け、反作用の発動を遅らせるというものです。第二次大戦のフランス戦における電撃戦などはこの最たる事例かもしれませんが、逆に独ソ戦のスターリングラードの様にガッチリと組み合ってしまうとパラドキシカル・ロジックの発動により先読み不可能な泥沼に嵌ることが理解できます。

本書は、あくまでも軍略としてこれらを述べていますが、実のところビジネスの世界においても同じロジックで説明できる事象が多々あり、ビジネスにおいて何かを成したいと考えた際の戦い方の指針としても参考になる内容です。